(読売 9月11日)
小中連携の教育を進めるために、大学院に進んだ教師がいる。
鳥取県日南町立日南中学校の国語教師、黒見隆久教諭(45)が、
大学院進学を勧められたのは、昨年度の3学期。
出願締め切りまで半月もなかった。
島根大学の教育学研究科に、今年度から出来た
「現職教員1年短期履修コース」。
教師個人のニーズに合わせ、オーダーメードの教育プログラムを
提供するのが売り物。
黒見教諭は、このコースの1期生5人のうちの1人として、
4月から車で片道1時間20分ほどかけて通学。
大学から派遣の打診を受けた山本静夫教育長は、
「出すなら黒見さん」と決めていた。
小学校との交流活動に熱心で、町役場の目の前に自宅を構え、
当時、日南中勤務8年目。町の事情を熟知していたから。
日南町は島根、岡山、広島県に接する鳥取県西部の山間地。
町内で、100キロマラソンが開けるほどの広さがある。
人口約6000人で、ピーク時の4割まで減った。
中学校はすでに1校だが、小学校は6校が集落ごとに点在。
児童数は、合計しても210人ほど。
来春から、この6校を統合した新設校が、中学校の隣に出来る。
今年度から、県から指導主事の派遣も受けた。
黒見教諭は、小中連携教育を町おこしの起爆剤にしたいという
矢田治美町長の意向も受け、町の将来を託された存在。
指導教授とは、マンツーマンの授業がある。
何をやっていいか悩んだ。
最初は、町の小中学生の学力テストの分析を試みた。
塾もほとんどない山村だけに、決してテストの成績は高いとは言えない。
夏からは、島根、鳥取両県で、小中学校の連携・一貫教育を
進めている自治体や学校の視察も始めた。
9月初旬の教室で、朝から夕方まで行われた高岡信也・教育学部長による
集中講義「学校・学級マネジメント特論」。
現職教員4人を含む大学院生7人だけの授業で、
黒見教諭は町の事情を力強く語っていた。
「統合された中学校では、それぞれの地域とのつながりが
必ずしも強いとは言えない。家庭学習も明らかに少ない」と黒見教諭。
中学校の教師として最も気がかりなのは、
9年間の義務教育を終えてからの進路だ。
産業は限られているものの、若手で新しく事業を興そうとしている人たちと、
キャリア教育を進められないか、といったプランも持っている。
集落ごとに言葉のなまりも違う土地柄だけに、
たたら製鉄について学んだり、伝統の太鼓を学んだり、
小学校の特色も様々。
統合で、そうした学校の伝統をどう引き継いでいくのか?
自然を生かした学習を、町全体でどう進めていくのかという課題も。
「少しでも、町の良さを理解して巣立ってほしい。
それが将来の町おこしにつながる」
黒見教諭の願いは、過疎の町の多くの住民の願いでもある。
◆小中連携・一貫教育
昨年度までに、構造改革特区制度を使って、
小中連携・一貫教育で指定を受けたのは全国で70地域。
教育課程上の特例を受ける文部科学省の研究開発学校が、24地域。
過疎地での統廃合に絡んで、連携・一貫教育を模索する事例が目立つが、
東京都三鷹市のように、統廃合をしないまま、
全市的に小中連携を進める自治体もある。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080911-OYT8T00280.htm
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