(サイエンスポータル 8月1日)
星出 彰彦 氏(宇宙航空研究開発機構・宇宙飛行士)
STS-124ミッションは、すべてが予想以上に順調に進んだので、
楽をさせてもらったという気持ち。
無重力になって、最初はなかなか姿勢のコントロールが
利かないということがあった。
国際宇宙ステーションとドッキングするまではまだよかったのだが、
ハッチが開いてステーションに乗り移ると、シャトルに比べかなり広い。
シャトル内では、壁がすぐ近くにあるので間違った場所に
飛んでいっても、すぐ姿勢を直すことができたのだが、
広くなったことで苦労した。
さらに、日本実験棟「きぼう」の船室に入るとさらに広い。
壁を蹴って、あるところに行きたいと思っても、
ちょっと角度が違うとずれてしまう。
目的のところに到達するのに、姿勢の変更が簡単にできなくて苦労した。
宇宙を経験して初めて感じた印象というと、
まず宇宙ステーションにドッキングするとき。
徐々に近づくステーションが本当に美しかった。
銀色に輝くあれだけ大きなものが、漆黒の宇宙に浮かんでいる。
ものすごく美しく、人類として誇りに思えた。
これは、地上の訓練の中ではなかなか味合えないインパクトだった。
もちろん地球も美しかったし、無重力の楽しさも体験しないと
分からないもので、地上で映像を見たり、先輩宇宙飛行士の話を聞いたり
したことによる想像をはるかに超えるものだった。
地上での訓練は、いろいろな設備を使うが、
主にコンピュータグラフィックスを使ったシミュレータによる。
何回も何回も訓練を繰り返すことで、身につくようになっている
よくできた訓練システム。
失敗は何度もあり、一度はシャトルとステーションとのやりとりで失敗したことも。
マーク・ケリー船長から、「これで、このタスクに関して、
お前は軌道上で絶対に失敗しないことを確信した」。
失敗は当たり前。
地上で失敗してそこで学ぶことが大事で、
それを踏まえて軌道上で成功すればよい。
軌道上でミスがゼロ、ということはありえない。
一番大事なのは、大きなミスをしないこと。
小さいミスはいくらでもリカバリーできるので、
大きな失敗をしないように、という訓練システムになっている。
それが十分効果を発揮したミッションだった。
宇宙から大気の層が薄い地球を見て、守らなければいけない星だ、
ということはいろいろな宇宙飛行士が言っているが、その通りだと感じた。
一方、太陽の光が反射して非常にまぶしい海や、大きな大地を見て、
非常に大きなエネルギーというか力強さを感じた。
ああ、この星はすばらしい大きなエネルギーを持った星なんだ、と強く感じた。
世界は国と国との争い、環境問題などをいろいろあるが、
環境問題についてのインパクトは強烈だった。
自分たちの目で見ることが大事だと感じた。
多くの人たちに、宇宙から地球を見てほしいと思う。
国際宇宙ステーションは、5つの国と機関が協力してやってきた。
設計段階とか、いろいろなところで考え方の違いなどもあった。
しかし、それを乗り越えてここまで来ることができたということは、
国際協力ができるのだ、人類は、ということを示せた大きな例になる。
◆星出 彰彦 氏のプロフィール:
1968年東京都生まれ、92年慶應義塾大学理工学部機械工学科卒、
97年ヒューストン大学CULLEN COLLEGE OF ENGINEERING
航空宇宙工学修士課程修了、2001年宇宙航空研究開発機構宇宙飛行士、
06年米航空宇宙局ミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者)に認定。
08年日本時間6月1-15日まで日本実験棟「きぼう」船内実験室打ち上げを
主任務とするSTS-124ミッションの乗員として、
「きぼうの」の国際宇宙ステーションへの取り付け作業などを行った。
http://www.scienceportal.jp/highlight/0808.html
0 件のコメント:
コメントを投稿