2008年8月5日火曜日

特集:洞爺湖サミットと今後の国際交渉(その2止) 温暖化防止、新たな枠組みへ

(毎日 7月30日)

京都議定書に定めのない13年以降の温室効果ガス削減の
新しい枠組みづくりは、来年12月にコペンハーゲンのCOP15で合意
今年12月にポーランドでのCOP14で、
中長期の「ビジョンの共有」という重要テーマの協議に入る。
先進国と新興国の溝が埋まらない中、厳しい交渉が予想される一方、
米国の地球温暖化政策が政権交代後に大きく変わることが確実視、
その影響がどのように表れるかが注目。

09年1月に始まる次期政権の座を争う共和党マケイン氏、
民主党オバマ氏の両候補は、いずれも中長期の具体的な数値目標を示す
温暖化対策の法案を議会に提出、
産業界が嫌う排出量取引などの削減策にも熱心。

来夏に伊マッダレーナ島で開かれるサミットは、COP15を控え、
欧米が削減目標や対策メニューを競い、排出量の極めて少ない将来の
「低炭素社会」実現に向けて、主導権争いを強める可能性が高い。
新興国を交えたMEMの第2回首脳会合も、併せて開催。

ある環境省幹部は、「このままでは、日本は温暖化対策の抵抗勢力と
みなされるか、合意形成に必要不可欠な国ではないと無視される恐れも」

日本は、今回のサミットでの「調整役」のような立場にとどまらず、
現状を打開する対策を唱え、独自の存在感を示せなければ、苦しい立場に。
「温暖化対策に不熱心な米国」の陰に隠れて、
批判の矢面から逃れることはもはやできなくなる。

昨年、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示した警告を、
政治がどう受け止め、温暖化を防止するのか?
COP15に向け、日本に強い指導力と決断が求められている。

◇中期目標、今すぐ議論を--環境エネルギー政策研究所副所長・大林ミカさん

--サミットの評価は。

新聞の論調がおおむね好評だったことが、NGOにとっては意外。
京都議定書に参加している国々は、IPCCが気温上昇を2度以内に
抑えるために必要な「20年までに25~40%削減」というシナリオを
織り込んだ合意文書をまとめている。
今回のサミットで議長国日本は、率先して中期目標を発表することにより
サミットを前向きにする義務があった。

気候変動枠組み条約事務局や国連機関の方々は、
「日本は中期目標を出すべきだ」と。
日本がそれをしなかったことは、世界のNGOにとって失望。
日本が中期目標を出さず、宣言文でもなかったことは、後退に近い。

米国も含めて長期目標に賛成したとしたら、小さいけれども前進。
国連の交渉プロセスを重視し、温暖化の影響を強く受ける最貧国や
島しょ国が参加していないMEMは、補完的なものだと確認したことも評価。

--成果と不十分な点があったということですか。

全体的な評価は否定的ですね。
世界の注目を集め、国民的な関心も高まっていたのに、
サミットが近づくにつれて期待値が下がり、その程度の結果しか出なかった。
日本は、リーダーシップを発揮できなかった。

福田首相が、気候変動を政策の中心課題に据えて考え始めたことは良いが、
福田ビジョンは経済産業省がつくったシナリオ通りの数値が入っている、
といった問題がある。
私たちNGOも含めて、環境に取り組む勢力の力不足を感じる。

--今後の課題は。

COP15までの1年半の間に、国際的に通用する高い目標を
どのように出すのかが重要課題。
政府は、来年のしかるべき時期に中期目標を決めると言っていますが、
来年では遅い。
国内で議論しているところがない。
中央環境審議会でさえ、議論していない。
すぐに議論を始めなければなりません。

日本の不幸は、温暖化対策とエネルギー対策を切り離していること。
両者は表裏一体。
エネルギーには手をつけず、小手先の排出部分の対策だけやろうとした結果、
対策は破綻して排出量が増えている。
排出量取引や環境税の議論は重要ですが、
まずエネルギー政策を根本的に変えるべき。
自然エネルギーの開発・普及を強力に進めなければなりません。
ドイツ型の自然エネルギーの固定価格買い取り制度などの政策により、
市場を形成することが必要。
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◇福田ビジョン

サミット前の6月に、福田首相が明らかにした温暖化防止の方針で、
正式名称は「『低炭素社会・日本』をめざして」。
日本の二酸化炭素(CO2)排出削減の長期目標は、
「50年までに現状から60~80%削減」、
中期目標は、「来年のしかるべき時期に総量目標を発表する」。
具体的政策では、排出量取引の「国内統合市場」を今秋に設ける方針。
再生可能エネルギー、特に太陽光発電の導入に、前向きな姿勢。

◇気候変動枠組み条約

地球温暖化防止を目指す国際的な枠組みを設定した条約。
92年に採択、90年代末までに温室効果ガスの排出量を
90年の水準に戻すことを目標。
しかし、削減に強制力がなく、97年に京都で開かれた
第3回締約国会議(COP3)で、先進国に排出削減を義務付ける
京都議定書が採択。
09年12月にコペンハーゲンで開かれるCOP15で、
議定書に定めのない13年以降の枠組みづくりを決める。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/07/30/20080730ddm010010135000c.html

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