(毎日 8月9日)
1964年東京、88年ソウルに続く、アジアで3度目の夏季五輪、
北京大会が8日夜に開幕。
メーンスタジアムの国家体育場(愛称・鳥の巣)で、華やかな式典。
1896年にギリシャで開催された第1回大会から、
29回目(戦争で中止の大会を含む)の今回は、
過去最多の204カ国・地域から選手1万1193人が参加。
イラクの参加が直前に決まったが、
ブルネイが選手団を派遣しないことで、
国際オリンピック委員会(IOC)の加盟国・地域すべてがそろうことはなかった。
28競技302の実施種目数も過去最多、
開催国・中国の国家を挙げた巨大なスポーツの祭典に。
日本も、過去最多となる576人の選手・役員を派遣。
◇北京五輪組織委員会・劉淇会長
五輪を支持してくれた人々に感謝したい。
五輪は中国の100年の夢。
7年前に約束したことを、私たちの努力で誠実に守ってきた。
中国が良い印象を残すことを期待。
◇国際オリンピック委員会・ロゲ会長
中国が、五輪への扉を開けるという長い間の夢が実現。
「一つの世界、一つの夢」が実現した。
ドーピングや不正を拒絶して、友情と尊敬という五輪精神を大切に戦ってほしい。
◆実るか、日本の強化策
中国流に漢字の画数にしたがって決められた日本選手団は、
23番目で入場行進。
先頭には、旗手を務めた卓球女子の福原愛(ANA)。
観客を見ながらにこやかに歩いていると、
プラカードを持った女性との距離が開き、慌てて小走りで追いかける場面も。
日本選手団主将で柔道男子の鈴木桂治(平成管財)もリラックス。
4年に1度の祭典が幕開けすれば、主役は選手たち。
その表情は、みな生き生きとしていた。
日本選手団の役員を除いた参加選手数339人(男170人、女169人)は、
1964年東京五輪の355人(男294人、女61人)に次いで2番目。
前回のアテネ五輪では64年東京五輪と並び、16個の金メダルを獲得。
銀9個、銅12個を含めたメダル数37個は、過去最多。
今回、金メダル数は「2ケタが目標」(福田富昭選手団長)と
厳しい戦いを予想するが、総メダル数では「アテネ超え」を目指す。
今回は、国営の強化拠点となる「ナショナルトレーニングセンター」(NTC)が
オープンして初めての大会。
日本オリンピック委員会(JOC)選手強化本部は「チームジャパン」を掲げ、
NTCでの強化合宿を通じて横の連携を図ってきた。
けん引役として期待されるのが、柔道、レスリング、陸上、水泳、体操。
本格的に競技が開始する9日からは早速、柔道女子48キロ級で
谷が3連覇の偉業に挑む。
メダルラッシュにわいたアテネ大会と同様、序盤戦から勢いをつけたい。
JOCはアテネ五輪後に、長期的な目標として
「2020年五輪までに、メダル争いで世界のベスト3」を掲げた。
それに呼応するように、政界の議論も本格化。
国際競技力の向上を掲げて昨年、自民党にスポーツ立国調査会が発足。
欧米のスポーツ大国並みに、国を挙げて振興に取り組むため、
スポーツ基本法(仮称)の制定、スポーツ省・庁の創設など中間報告。
国を挙げて取り組むことは、今後の競技環境の向上につながることが
期待される一方、選手や競技団体にかかる責任が大きくなる。
北京五輪は、21世紀の日本のスポーツのあり方を議論する第一歩に。
◆繰り返される膨張とひずみ 解決の道、考えながら
「スポーツの祭典」はどこに行くのだろうか?
北京五輪は、そう問いかけている。
アスリートたちの躍動への期待は高まるが、どこか晴れない気持ちも。
その理由を、中国だけに求めるのはたやすい。
しかし、ここはスポーツ界が自ら決めた開催地である。
北京五輪は、01年に国際オリンピック委員会(IOC)総会で開催が決まった。
モスクワ五輪が行われた80年から21年間IOC会長を務め、
五輪の商業主義化を積極的に推進したサマランチ氏(現IOC名誉会長)が
勇退する歴史的な節目。
モスクワ大会と、4年後のロサンゼルス大会は、
旧ソ連軍のアフガニスタン侵攻に端を発した東西両陣営の政治対立の影響で、
両陣営がボイコット合戦を繰り返した。
IOCは、政治に翻弄された「負の歴史」が、
社会主義国家での大会の成功で払拭されることを期待。
人口13億という中国は、現代の五輪運動を支えるスポンサー企業に
とっても大きな魅力。
サマランチ氏は、一貫して北京を支持、
その思いをそんたくしたIOC委員の投票結果が「北京」開催に。
それから7年。
中国は、IOCの基準に応じ、大会運営、会場建設費、インフラ整備に、
約4兆8500億円の巨費を投じた。
国家の強い意思がなければ、実現できるはずもない。
運営や会場群は、過去の五輪と何らそん色はなく、
「過去最大の大会」を前面に、自信に満ちあふれている。
それを見て思うのは、五輪がカネに任せた国威発揚の機会に
戻ったことへの危機感。
そうした考え方のひずみが、地方での暴動やテロなどを引き起こす
原因をつくって死傷者が出たのなら、
「この五輪が本当に、中国国民のためになったのか」。
サマランチ氏の後継者、ロゲ会長のIOCは、
中国の準備を称賛することはあっても、聖火リレーでの混乱から始まり、
食の安全性、大気汚染、ネット規制と懸案が山積するにもかかわらず、
明確な意思表示はしなかった。
その姿は、膨張した五輪を制御できずに手をこまねいているよう。
五輪は、多くの危機を乗り越えた歴史の繰り返し。
新たに問題点が出たのならば、スポーツを愛する者が自らの意思で
解決に向けて考えていくほかはない。
我々には、16年夏季五輪招致という格好の素材がある。
http://mainichi.jp/enta/sports/08olympic/archive/news/2008/08/20080809ddm035050027000c.html
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