2008年1月15日火曜日

ミカンを救うのはあなた次第

(毎日 12月21日)

冬になるとおいしいミカン。あたたかい部屋で食べるミカンは格別な味。
しかしこのミカン、実は栽培が低迷している果物のひとつ。

神奈川県小田原市は、日本でも有数のミカン産地であった。
現在、耕作を放棄された農地が約234ヘクタール、その大半がミカン畑

原因は、他の農業でも同じ後継者不足と、農産物の貿易自由化。
ジュースや缶詰製品の輸入が増え、生果としてのミカン消費量が減少。
市場に出るものは、見た目のきれいな、糖度の高いミカンを要求。
ミカン農家の廃業はあとを絶たず、放置されたミカンの木があちこち。
放っておけば、つる草がからみつき、木はだんだん弱り、
5年もすれば死んでしまう。せっかくつけた実も落ちて腐っていく。

このミカンをなんとか甦らせることはできないかと、
2005年から"持続可能な社会"をテーマとして掲げる
NPO法人・ビーグッドカフェが、
オレンジ・プロジェクト」と称し、ミカン農園の再生活動。

小田原市では、「都市農業成長特区」が認められ、
市内の農地を企業やNPO法人に貸し出すことができる。

ビーグッドカフェでは、「アグロフォレストリーコミュニティーガーデンづくり
として、このミカン農園復活を考えている。
アグロフォレストリーとは、畑で作物を育てつつ樹木を植え森にしていくこと。

ここでは、作業を通して土に親しみ、同時に緑も増やしていく。
ミカン畑を、コミュニケーションや憩いの場として活用、
参加する人が気持ちよく作業できるようにとの意図も。

月に一度集まっては雑草やつる草を取り除き、ハーブの種まき、
ミカン摘み、作業場や雨水ダンクをつくるなどやることはいっぱい。
畑作業のあと、オーガニックランチをみんなで食べてくつろぐ、というお楽しみも。

個人向けに活動を呼びかけてきたが、今年から法人向けのプロジェクトも。
日本経済新聞社と(株)都市デザインシステムと合同で、
これからの環境・CSR活動のあり方を考える研究会」発足。
放置農園の支援を企業に呼びかけ、CSR活動として考えてもらうとの趣旨。
毎回、多分野の講師をゲストに話を聞き、その後は畑仕事を行う。

オレンジ・プロジェクトでは、二つの農園を借りている。
その一つを一般向けに、一つを法人向けに、と分けて作業を進めている。
ゆくゆくはいろいろな人や企業に参加してほしい、
救えるミカン畑が増えることを目指すが、
まずはこの二つの農園を生き返らせようと奮闘中。

ミカンの木の再生と一口にいっても、そう簡単なことではない。
放って置かれた木は、長年の肥料のやりすぎや農薬による影響で弱っている。
今年は、実を全部とって木を休ませるようにした。
農薬をやめ、肥料も抑える。
まずは、一度薬漬けになった体をリニューアルさせる。

こうして出来たミカンは、ほんのり甘酸っぱい味がする。
ミカン栽培の低迷は、消費者の好みにより甘酸っぱいミカンが
売れなくなったことも要因のひとつ。
これまでのミカンは甘さを追求し、
ホルモン剤や肥料をたくさん与える農法が主流。
薬をたくさん使っても甘い味がいいのか?
それとも健康に自然のまま育ったミカンの味がいいのか?

これは私たちに問われている宿題でもある。
小田原のミカンの木は、山の斜面に立っていることも多い。
木が弱れば、それだけ地場も弱くなり、
土砂崩れなどの災害を引き起こす危険も。

地元の農家の人たちからも、こうしたプロジェクトに期待。
小田原で有機農業を25年間手がけてきた石綿畝久さんは、
「ミカン畑が全滅するかどうか、いま瀬戸際の状態。
ミカンの木が生き残るかどうかは、関わってくださるみなさん次第です」。

始まったばかりだが、いろいろな人、企業の人に関わってもらいたい。
実際にミカンの木にふれてみることで、土地の大切さや、
口に入る食べ物のことを知るようになる。
まずは、"きっかけ"なのである。

http://mainichi.jp/life/ecology/mottshiritai/news/20071221org00m040003000c.html

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