(毎日 1月11日)
阪神大震災、ライフラインは止まり、人々は寒さに震えていた。
灯油缶に廃材がくべられ、皆なんとなく集まり暖をとった。
そのたき火の、なんと有り難かったことか。
火は時に脅威ともなるが、同時に人の心を慰める生きもののような存在。
昭和30年代頃までは、日本でも薪や炭が利用。
家庭には七輪があり、お風呂や炊事にも木から火がつくられた。
木や火は、日常の一部分として存在していた。
現在、この薪や炭は木質バイオマスなどと呼ばれ、木材燃料資源の総称。
この冬、ガソリンや灯油の値段があがり庶民の生活を直撃。
現代の暮らしは、化石燃料に頼り切っている。
石油がなくなれば、暖房や電気、ガス、水道すべてに支障を来す。
化石燃料にだけに依存するのではなく、木質バイオマスを見直したい。
木材素のままの薪、間伐材や木材加工時に出る端材を破砕したチップ、
おがくずや端材を粉砕して圧縮成型した固形燃料のペレット、
おがくずを棒状に圧縮成型したオガライト、
木材を炭窯の中で蒸し焼きにした木炭など。
特に、昔から現代に至るまで活躍しているのが木炭。
木炭は、炭化した際にたくさんの孔という穴があく。
その孔に湿気や汚れ、悪臭成分などを吸着する働きがある。
最近では、農業用土壌改良材や化学物質を吸着する建築資材としても注目。
また、焼き鳥などの焼き物を炭火で焼くとおいしい。
炭火は、ガスと違い燃焼しても水分が出ない。
赤外線による遠火の強火が食材に行き渡り、
表面はからりと、中までじっくりと焼くことができる。
もうひとつ、炭を必要としている日本の文化が、茶道である。
現代の茶の湯でも、湯を沸かす燃料として炭は欠かせない。
茶道の普及により、炭の消費量が増え、
より優れた炭をつくるための研究と技術がのびていった。
しかし、これら一部の高級品以外は、林業、炭産業の衰退後、
そのほとんどを中国からの輸入に。
2004年、中国政府は森林保護政策として中国産の木炭を全面輸出禁止。
関係者は慌てたが、これは国産の薪炭に目を向けるきっかけに。
国内の薪炭を取り戻すことで、森林を育てるきっかけを作る活動
「日本の森林を育てる薪炭利用キャンペーン」事務局団体の一つ、
(株)森のエネルギー研究所スタッフの大野さんは、
「今の時代、化石燃料なしでは人々の生活は成り立ちません。
でも、これらはいつかなくなってしまう。
代わりになる資源を準備しておかねばならない。
木質バイオマスはその一つです。
炭焼きは、ほとんど担い手もいないし衰退してますが、
中国の輸出規制により国内で生産していこうという動き。
森林に人の手が入るようになれば、
ペレットや他の木質バイオマス生産にもつながり、
木を燃料としたストーブなどが今よりも手軽に使える」
資源としての木質バイオマスもさることながら、
その木から生まれる火はなんとも魅力的。
おいしい料理や団らんを作り、さらに森林とのつながりも。
火のある暮らしを忘れて久しい現代人に、懐かしい温かさを思い出させる、
そんな木質バイオマスの普及を願っている。
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080111org00m040017000c.html
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