2008年1月13日日曜日

学校教育における『環境』と『地学』の位置は?

(サイエンスポータル 2007年12月19日)

環境問題に関心の深い研究者、教育関係者などが参加する
公開シンポジウム「環境教育 明日への提言」が開催。
日本学術会議の環境学委員会環境思想・環境教育分科会が主催。

「学校教育に教科として『環境』を位置付け、専門教員を養成」を柱とし、
「幼児、小、中学生に自然体験を徹底させるべきである」という提言案が
合意を得るまでには至らなかったが、現状認識については多くが同意。

大人(先生)も子ども(生徒)も、自然体験が恐ろしく希薄、
という事実に対してである。

環境という科目をつくるべきか否か、という議論が交わされている一方、
既存の科目が存亡を問われかねない状況にあることが、
「地質ニュース」(産業技術総合研究所・地質調査総合センター編)。

開発などによって、「危機にある地形」や「保存すべき地形」をまとめた
「日本の地形レッドデータブック」(古今書院)の編者でもある
小泉武栄・東京学芸大学教授によると、地球環境問題に加え、
地震をはじめとする大規模自然災害への対策を考えても、
政治や経済に加え、地学や自然地理学の研究の進展が大きな役割。

にもかかわらず、地学研究者の層はますます薄く、
野外で調査にあたる地質学者や地形学者は、
後継者を育てることすら難しい、と警鐘。

研究者の不足以上に、大きな問題として小泉氏が挙げているのが
学校教育における地学関連の教育の不振」。

経済の高度成長は、安価な原料を海外から大量に輸入する傾向を強め、
国内での鉱産物生産の必要性は小さく、学校教育における地学の軽視、
小中学校の教科書における地学、自然地理関係の内容の著しい減少に。

地学教育の地盤沈下に比べ、環境教育の方がよほど重視されている。
「環境教育は、学校教育におけるすべての教科で、
機会をとらえて実施することになっている」。

しかし環境教育の結果、「子供たちは 地球環境の問題点ばかりを、
繰り返し学習することになってしまった」。
小泉氏は、「小学校や中学では、地球環境問題の学習より先に、
地球や自然のすばらしさを学習すべきである」と主張。

地球環境問題についての勉強は、
「地球のすばらしさを発見させ、子供たちは地球に生まれてきたことの
幸せを感じることができ」た後に行った方がよい。
地学を教えられる機会が激減していることの影響、対応策を考える場合、
「環境」を独立の科目にすべきという議論とのすりあわせ、
協働といったものは考えられないものだろうか?

「大人(先生)も子ども(生徒)も、自然体験が恐ろしく希薄になっている」
という危機意識は、両者に共通すると思われる。

http://scienceportal.jp/news/review/0712/0712191.html

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