2008年1月14日月曜日

対談:IPCCパチャウリ議長×小宮山宏・東大学長 温暖化防止には分野超えた連携を

(毎日 12月24日)

国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)
ラジェンドラ・パチャウリ議長=インド・エネルギー資源研究所長=と
小宮山宏・東京大学長が、東京大で対談。

パチャウリ議長は、「日本は世界の温暖化防止の重要な役割を果たしている」
と、学界や経済界などと議論するために来日。
両氏は、地球温暖化防止や持続可能な社会の実現には、
学問や文化など既存の枠を超えた取り組みが重要。
その実現に向けて、人材育成と交流を活発化させていくことなどを語り合った。

小宮山 IPCCは、温暖化問題の重要性と重大さを、説得力をもって伝えた。
20世紀後半の気温上昇について、90~95%の確率で
人間活動だと結論づけた意味は大きい。

パチャウリ 100年間に地球の平均気温は0・74度上昇
原因は、人間が排出した温室効果ガスの効果と自然変動の両方。
観測網が充実し、気候変動を再現するコンピューターシミュレーションの
進歩で両者を区別でき、専門家が議論して90%以上と判断。
地球温暖化防止バリ会議でも、IPCC報告書を尊重した議論を展開。

小宮山 大気中の温室効果ガス濃度の上昇を止めることができても、
海面上昇などの温暖化影響はその後も続く。

パチャウリ 海面の上昇は、モルディブなどの島国だけの問題ではない。
東京やニューヨークなど大都市の活動にも大きな支障をもたらす。
バングラデシュは、洪水や暴風雨に見舞われる一方、干ばつも深刻化。
水は、生命活動を支えるのに必須。
安全な水を確保できないことは、貧困や健康、紛争の火種に。

小宮山 地球規模の問題解決には、各地の文化の多様性を考慮。
東大は、持続可能な社会へのビジョンを示すため、国内11大学でつくる
サステイナビリティ学連携研究機構という研究教育ネットワークを発足。
国や地域の枠を超えて、個々の学問のネットワークを構築。
科学的知識を再構築する「知の構造化」が必要

パチャウリ ノーベル賞受賞で、IPCCには約90万ドルが贈られた。
アフリカなど温暖化に対する知識が普及していない地域で、
大学などに財政支援し、研究活動とともに人材育成を図りたい。
温暖化研究や対策で、日本はアジアの代表。
東大などと連携を強化していきたい。

小宮山 来年、北海道洞爺湖サミットが開催。
G8各国に、中国やインド、ブラジルと大学サミットの開催準備を進めている。
大学間ネットワークをさらに進めたい。

パチャウリ 温暖化問題の解決には、自然科学、社会科学、人文科学と
分野を超えた連携が重要。G8から、重要な知見が出されるのを期待。

小宮山 私の自宅では、太陽光発電を利用。
できることから率先して取り組みたい。

パチャウリ 国際会議参加のため、頻繁に航空機を利用することが私の課題。
たくさん植樹して、排出した二酸化炭素を吸収させたい。
必要な物しか買わない質素な生活を心がけている。

http://mainichi.jp/life/ecology/news/20071224ddm016040006000c.html

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