(JISS in Action 2007年12月19日) 和久貴洋(スポーツ情報研究部)
平成19年11月、仙台大学スポーツ情報マスメディア研究所設立の
準備会議が、仙台大(学長;向井正剛)にて開催、
研究所構想のフレームワーク(目標とミッション、事業、運営など)が話し合われた。
国立スポーツ科学センターが設置されて以降、
我が国そして世界のスポーツは大きく変化。
平成18年、遠藤前文部科学副大臣は「スポーツ振興に関する懇談会」を設置、
翌年「『スポーツ立国』ニッポン~国家戦略としてのトップスポーツ~」と題した、
我が国のトップスポーツの育成・強化を国策とする価値があるとの報告書を発表。
自民党内に「スポーツ立国調査会」が設置され、スポーツ立国に向けて、
「通常国会におけるスポーツ立国宣言」、「新スポーツ振興法の制定」、
「スポーツ省(庁)の設置」、「スポーツ担当大臣の配置」について検討。
この動きが、2016年オリンピック招致にも深く関連。
一方で、世界のスポーツも進展。
IOCは、グアテマラで開催された第119回IOC総会において、
14~18歳を対象としたユースオリンピックの2010年創設を決定
(冬季ユースオリンピックは2012年)。
IOCジャック・ロゲ会長は、「次世代、次々世代の若者のスポーツ離れ、
体力問題、スクリーン病などの課題解決、スポーツやオリンピックの価値を
深めるための若者への投資」。
さらに、スポーツ界に蔓延するドーピング問題に関しても、
その取締りと防止強化は世界の政府レベルで進められている。
ドーピング防止対策は、オリンピックや世界選手権大会等の
国際大会の招致においても、その位置付けが高い。
体育系大学は、これまで体育学の発展と、体育・スポーツに関わる
人材育成に重要な役割を担ってきた。
スポーツ振興基本計画においても、JISS運営体制の充実の面で
体育系大学との連携が重要。
近年の大学改革等の社会情勢の変化の中で、
体育系大学にも新たな役割が求められている。
研究拠点化(COE)をはじめ、研究機能の向上やFD制度の導入に見られる
教育機能の充実、地域・社会貢献など。
JISSは、我が国の国際競技力向上を、スポーツ医・科学・情報の側面から
支援することを目的として、2001年に設置。
(1)トップアスリートへの情報・医・科学支援、
(2)国際競技力向上のための実践的研究の推進体制の構築、
(3)国際競技力向上のスポーツ情報戦略機能の構築
が、主な役割(スポーツ振興基本計画)。
しかし、行政改革等の社会情勢の変化、またNTC設置、
2016年オリンピック招致、国策化、といった国内スポーツ界の動きの中、
JISSに新たな役割も求められてくる。
時代の流れや動きの中で、自己のポジションや立ち位置を見定め、
それに応じた価値観や存在意義、役割を見出していくことが重要。
平成19年10月、JISSはスポーツ情報戦略研究の推進において、
スポーツ情報マスメディア学科を新設した仙台大学と相互協力協定を締結し、
仙台大学スポーツ情報マスメディア研究所設立に向けた検討がスタート。
仙台大学とJISSの内部環境の分析結果に基づけば、
スポーツ情報戦略に携わる人材育成と研究・教育充実の場の創出が、
我が国のスポーツ情報戦略分野の研究の発展のカギ。
仙台大
(強み)
・スポーツ情報マスメディア学科
・次世代、次々世代の人材
・教員
・教育プログラム
・研究活動
・組織の柔軟性
(弱み)
・国際スポーツ社会との関係
・国際的視点からの戦略
・ビジネス機会の範囲と頻度
・実践教育の場と機会
JISS
(強み)
・国立の機関としての位置付け
・情報戦略事業(ビジネス)
・国内外の情報コンテンツ
・地域、体育系大学、JOC、競技団体、学会、世界等とのネットワーク
・研究活動
・行政的裏付け(プロフェッショナル/職業)
(弱み)
・タイトなマンパワー
・キャリアパスの保障
・スタッフの時限性
・人材育成の機会
人材交流による研究・教育の充実、研究・教育協力、
業務分担による効率的ビジネス展開、実践教育の機会創出等が戦略に。
しかし、人事体制や業務体制の整備、研究課題の価値、
地域貢献・社会貢献の面では課題が。
課題解決の方策として、教育研究機関としての仙台大学と
政策執行機関としてのJISSの間のハブ拠点としての研究所設立。
仙台大学スポーツ情報マスメディア研究所のねらいと戦略。
1 学内センターをハブとした人材の還流・育成=研究・教育充実の
刺激研究所という柔軟な人事体制が可能なハブを設立、
仙台大-JISS間の人材の還流・育成が活性化し、
研究・教育・ビジネスを充実させる刺激を生む。
2 学内センターでのビジネス展開による実践教育の場と機会の創出、
教育機会の充実、
人材育成研究所は、JISSや地域などの外部機関との窓口となり、
大学の教育の枠組みの中で対応しにくいビジネスを展開、
実践教育の場や機会を創出し、教育機会の充実と人材育成を図る。
このことはビジネスの効率的展開を生む。
3 人材の還流による研究発想力の強化・拡大
社会のニーズに即した実践研究研究所を通した人材還流の活性化と、
研究所ビジネスを通した地域やスポーツ界のニーズの把握は、
社会のニーズに即した実践研究を促進し、研究発想力の強化や拡大を促す。
4 社会からの情報・人材のエントランス
開かれた大学、地域貢献、社会貢献研究所が社会からの情報や
人材のエントランスとして機能することは、開かれた大学、地域貢献、
社会貢献という体育系大学に求められる役割を果たす。
第1回設立準備会議を実施したことで、
JISS-仙台大連携による研究所構想の実現の第1歩を踏み出した。
今後も、設立準備会議を継続し、研究所の目的、ミッション、事業内容、
運営体制、リソースなどのビジネスフレームについての検討が
具体的に進められていく。
研究所設立が、JISSと大学が効果的に連携する象徴の一つとなってほしい。
研究所構想の実現に向けて、両者が有する資源を出し合う仕組みと過程が、
異組織間連携のキーファクター。
互いの資源を活用し合う過程に連携が生まれる。
Partnership is not a posture, but a process. John F. Kennedy
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