(朝日 2008年01月17日)
深刻な水不足に悩む長崎県佐世保市から依頼を受けた九州大が、
人工降雨に挑み、同市を含む県北部で小雨が降った。
気象庁も、四国で大がかりな実験に乗りだす予定。
これまでも各地の自治体などが試みてきたが、
データ検証の積み重ねがされておらず、効果のほどもはっきりしていない。
九州大や気象庁は、思い通りの場所に十分な雨を降らせることが
できる技術の確立を目指している。
九州大の西山浩司・助教(気象工学)らを乗せた軽飛行機が
佐賀市の佐賀空港を離陸。
長崎県北部の壱岐島方面に向かい、11時40分ごろから約1時間、
積雲の下で液体の二酸化炭素(液体炭酸)を散布。
液体炭酸が蒸発して空気を冷やし、雲の中に氷の結晶ができる。
それに水蒸気が付着して成長し、重みで落下すれば雨になる仕組み。
液体炭酸をまいて、1時間以内に県北部で雨が降れば成功との想定。
正午すぎに平戸市や松浦市、午後0時半ごろに
佐世保市でぽつりぽつりと雨粒が落ち始めた。
佐世保市に水を供給する県内の主要6ダムの貯水率は61.6%で、
安定供給に必要とされる80%を大きく下回っている。
市は、人工降雨の実験を続けてきた九州大に
「雨を降らせてほしい」と頼み、2回分の経費として200万円の補正予算。
気象庁は、5月から高知県の早明浦ダム周辺で人工降雨の実験を開始。
年間予算は2億円で、3年間続ける計画。
国内の年間降水量は、この100年間で5.6%減少。
一方で豪雨や少雨が繰り返し起こり、両極端な降り方が目立つ。
人工降雨には、異常気象を沈静化させる狙いも。
国内では50年ごろから、人工降雨の実験が重ねられてきた。
福岡県や九州大の研究会は、94~01年に2種類の方法で実験。
液体炭酸を使った4回はいずれも雨や雪が降ったが、
海上だったため降水量は測定できなかった。
写真の感光剤などに利用されるヨウ化銀の粒子をまく方法では、
15回のうち12回で5.5~0.5ミリの雨が降ったが、
狙った場所に降ったのは6回だけ。
西山助教は、「人工降雨に適した積雲が発生するかどうかや、
風向き、風速などの気象条件を読むのが難しい。
データを積み重ね、実用化への手がかりを得たい」。
http://www.asahi.com/science/update/0117/SEB200801170008.html
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