(読売 7月1日)
二つの大学を、一度に卒業できる制度を導入する大学が増えてきた。
「制度がなかったら、日本留学はできなかった」
信濃川を見下ろす丘の中腹にある長岡技術科学大学の、
大きなモーター音が響く実験室で、
留学生のレー・チュン・ズンさん(22)が振り返った。
実験を手伝うトラン・バン・ガンさん(23)、普段は隣の実験室で、
セラミックスの研究をしているチュン・トゥ・アインさん(24)もうなずいた。
3人は、同大とベトナム・ハノイ工科大の国立大同士で行っている
共同学位制度「ツイニングプログラム」を利用して来日した1期生と2期生。
すでに3人とも大学院生に。
このプログラムなら、4年半で両方の大学の学位が得られる。
学生は、9月にベトナムでハノイ工科大に入学。
2年半、基礎科目の講義を受けながら、留学に必要な日本語を習得。
十分な日本語能力と日本で専門教育を受けるだけの知識を備えた学生だけが、
長岡技術科学大3年次に編入。
3人は、辞書に載っていない日本語の表現や専門用語は、
自分で日本語から英語に、英語からベトナム語に訳して学んできた。
アインさんが作ったオリジナルノートは、五十音順に付せんがはられ、
まるで辞書のよう。
技術立国・日本で学ぼうとするアジアからの留学生を多く受け入れていた。
現在は、大学院生を含む学生2328人の9%が留学生。
学生の7割が、3年次に高等専門学校から編入する大学だという点も、
制度導入の味方をした。
ハノイ工科大も、日系企業の進出を受け、日本語や日本文化に精通した
技術者の育成方法を模索。
学長同士の会談で導入が決まり、2003年に1期生がハノイで勉強を始めた。
編入学試験に合格したのは3人。
その後も、年ごとの試験の合格者は10人に達したことはない狭き門。
長岡技術科学大の国際センター長、伊藤義郎教授(56)は、
「意欲と能力の高い学生を発掘でき、国際貢献にもなる。
学生にとってもいい刺激になるはず」。
両方の学位があれば、日越双方で進路が開ける。
これまでに卒業した1、2期生の多くが、ベトナムに進出している
日本企業やベトナムの日系企業に就職。
ズンさんたち3人のように、節約できた費用や時間を充て、
そのまま大学院に進む人もいる。
幼いころ、父親がホンダのカブを大事そうに手入れしていたことが
心に残っているというズンさん。
「日本の製品は最高だとずっと信じてきた。その日本で学べるのが幸せです」。
日本企業に就職して企業風土を学んでから、ベトナムに帰り、
日系企業で指導者になりたいという夢。
共同学位制度でスポットライトを浴びた卒業生たちの、今後の活躍に期待。
◆共同学位(ダブル・ディグリー)制度
二つの大学に在籍し、短期間で両大学を卒業する制度。
留学先で取得した単位を、籍のある大学で卒業単位に算入する
単位互換制度とは異なり、取得した単位を、両方の大学で卒業単位として数える。
2006年現在、国内の国立8校、私立29校が導入。
海外大学との単位互換制度は、国公私立160校が持っている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080701-OYT8T00226.htm
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