(読売 7月5日)
銀1個。
2004年アテネ五輪で、人口11億人のインドが得たメダルの数。
世界に優秀なIT(情報技術)技術者を送り出し、米経済誌フォーブスの
2008年版世界長者番付で、4人がトップ10に名を連ね、
すさまじい経済発展を遂げる大国。
五輪の不振ぶりは、余りにも不可思議。
過去にさかのぼっても、お家芸の男子ホッケーが金8(銀1、銅2)という
成績を残すほか、金メダルはゼロ。
独立以前の1900年から、個人種目で3個ずつの銀と銅があるのみ。
週刊誌インディア・トゥデーのシャルダー・ウグラ副編集長は、
「最大の原因は、インドの家庭では都市、地方、貧富を問わず、
スポーツより教育が大切という考えが一般的」
数の「0」を発見したのはインド人で、2けたのかけ算は暗算が常識という
この国の教育熱は高い。
過去の実績もなく、国としての取り組みも薄かった五輪スポーツへ、
子供を向かわせる親は少ない。
インド国内で最も人気のあるスポーツが、
五輪にはないクリケットだったことの影響も大きい。
今春始まったプロリーグのIPLは、英国のプレミアリーグのような
組織化を狙い、8チームの所有権を民間に売却。
富豪や人気俳優が入札した売却額の総計は、7億2400万ドル(約781億円)。
インド陸連の幹部は、「企業は、クリケットだけに投資して、
その“被害”で我々に資金が集まらず、強化も進まず、注目もされない」と、
半ば八つ当たり気味にクリケットを敵視する。
しかし、中国に匹敵する11億の人口がある。強化に問題はなかったのか?
ウグラ副編集長はうなずいた。
「インドの競技団体は、官僚の天下り先。
スポーツでは、どう練習させるかが最も重要だけど、
金がないと言うだけで心がない。
改革も、30年前から必要と言われて、さっぱり進まない」
インドの経済成長は、社会主義的な計画経済が崩壊寸前となった91年、
国営企業の民営化を進めるなどの改革開放政策の断行で始まった。
しかし、スポーツ界には、いまだ旧態依然とした官僚主義がはびこっている。
今年3月、伝統の男子ホッケーが84年ぶりに五輪の出場権を失った。
「国辱」、「恥」、「グッバイ、ホッケー!」
翌朝の現地紙は、一斉に一面で書き立て、協会の責任を追及。
インドスポーツ界は、かつての経済界のような存亡の危機にある。
http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080705.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿