(読売 7月4日)
留学生のホームステイ拡大は、団塊の世代が鍵を握る。
東京都荒川区のマンションの台所で、主婦長橋シズエさん(58)が、
米国から上智大学に留学中のケイティーさん(20)に、
「もうちょっと細かくね」と優しく声をかける。
ケイティーさんは、うなずきながら包丁で細かく刻んだ大葉を
マグロの刺し身にかけた。長橋さんの家で、しばしば見られる光景。
ケイティーさんは3月から、長橋さん方にホームステイ。
長橋家は、シズエさんと夫の会社員康幸さん(57)、長女裕子さん(30)の
3人家族。
長男が結婚して家を出て余った部屋を、ケイティーさんに提供。
シズエさんが趣味で通っていた英会話学校の教師に勧められ、
「家の中で英語の勉強が出来ればいい」と軽い気持ちで始めた。
入居直後、ケイティーさんは夜遅く帰ることもしばしば。
「預かった以上、自分の娘と同じ。心配で胃が痛くなって病院に行くほど」
今は、遅くなる時には連絡することに。
ケイティーさんを受け入れてから、食事の時間の家族の会話が増えた。
週末には、鎌倉や浅草へ一緒に出かけることも。
「今は私1人で何でもやるので大変だが、楽しい。
夫が定年退職すれば、助けてもらえるのでもっと楽に」。
一家とケイティーさんを結びつけたのは、
留学支援会社「サクシーオ」(東京都港区)。
日本人留学生の海外での支援が事業の中心だったが、
2年前から国内事業を始めた。
狙いは、大量退職が始まった団塊の世代。
時間があり、子供が独立して余った部屋も利用できる。
英語も学べるし、老後の収入にもつながる。
同社では受け入れ家庭に、1日2食付きで1日2000円の謝礼を用意。
日本語、習字、生け花などの日本文化を教えた場合には、
1時間に1000~3000円を支払う。
同時通訳者の鳥飼玖美子さん(立教大教授)は、
「ホームステイは日本の生活を知り、日本を本当に理解する
外国人を増やす上で最も重要」
「海外では、有償のホームステイも広がっており、
老夫婦が定期的に受け入れる例も多い。
日本の団塊の世代は、受け皿となりうる。
米国でも、受け入れ家庭への減税措置があり、
日本でも費用を必要経費として認めるようにすれば、
受け入れ家庭は増えるのでは」。
大学を通じて、約130人をホームステイさせている関西外国語大学では、
自身や子供がホームステイを経験した家庭の受け入れが多い。
それ以外の家庭に拡大することが課題。
国際交流部の橋本美佐子課長補佐は、
「日本では、客はきちんともてなさねばという考えの人が多く、
留学生の受け入れをためらう一因になる。
家族の一員として、ありのままを出してもらえればいい」
ホームステイを増やすために、行政の取り組みとともに、意識改革も必要。
◆ホームステイは1000人前後
日本学生支援機構によると、2007年5月1日現在、
留学生の宿舎は民間宿舎・アパートが77.1%。
大学が設置する宿舎13.1%、大学の寮4.4%が入居。
3か月以上ホームステイする留学生は818人(0.7%)。
ここ数年1000人前後で、1%に満たない状態。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080704-OYT8T00179.htm
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