2008年7月2日水曜日

当世留学生事情(3)海外展開 見据えて採用

(読売 6月19日)

ベンチャー企業と留学生をつなぐ取り組みがある。
慶応大学大学院に留学中の中国の陳実さん(24)は、
価格比較サイト運営会社「ECナビ」(従業員180人)
インターンシップ(就学体験)生として働く。

チームで競合他社の動向を分析するのが仕事。
9月から正社員になることが決まった。
「留学生仲間で、日本のベンチャー企業の話題はほとんどなかった」。

仲を取り持ったのは、経済産業省関東経済産業局が
関東地域のベンチャー企業に参加を呼びかけた
「Career Gateway to Asia」。
留学生フェアや経営者の講演を開き、留学生のインターンシップを進める。

ECナビも、この事業で2人の留学生をインターンシップで受け入れた。
昨年度、同社の採用試験を受けた約2000人のうち留学生はわずか数人。
これまで留学生の採用はゼロ。
昨年、海外に留学している日本人学生を採用しようと
米サンフランシスコの留学フェアに出展したが、
海外からの留学生には目がいっていなかった。

しかし、中国への本格進出を考えているだけに、
宇佐美進典社長(35)は、「試験を受けに来た人から選んで採るという
受け身の採用から、中国でどうビジネスを展開するかに合う人を選ぶ
攻めの採用をするいいきっかけになった」。

陳さんの採用をきっかけに、留学生を積極的に採用。
「これまで積み上げてきた目に見えないノウハウを、
海外で軌道に乗せるには、両方の文化を分かっている人を
教育した方が成功の確率も上がる。
留学生は、待遇に不満があればすぐ辞めるとも言われるが、
我々は仕事のやり方を1、2年で教え、すぐ発揮できる場を提供する。
留学生からも、選ばれる会社になればいい

大々的に留学生を募集するインターネット商社「イー・クラシス」では、
今年度の新卒採用者60人のうち留学生が35人。
留学生だけの会社説明会も実施、100人規模で学生が集まった。
宮下崇俊社長(34)自身が約130人の留学生を面接、
負けん気が強く向上心の強い、社風に合う留学生を採用。

新入社員は、研修で2週間合宿し、早朝マラソンから穴掘りまで
体力の限界に挑む。
「社会とはいかに理不尽なことが多いか実感してもらうため」と、
合宿によって「留学生も日本人も関係なく、うちの社員として一体感が出た」。

留学生の採用増は、やはり事業の海外展開を予定。
3年前から支店を出す上海では、現地採用スタッフを使ってきたが、
「本社の社風を身につけた上で送り込んでほしい」という声を受けて、
日本で留学生を採用して育成する方法に。

「2年ほどで、海外支店のそれなりの立場になってもらう。
立場が人を育てることもある」と宮下社長。
来年度は50人程度採用する方針。
海外進出を目指すベンチャー企業の留学生争奪戦が始まっている。

◆日本企業の海外進出

製造業の海外現地法人数をアジア全体で見ると、
1995年の4543社が2005年には8319社と急増。
特に、中国には3585社で10年前の3倍増。
海外展開する中小企業は、過去10年で4割近く増え、06年に7551社。
情報通信やサービス業などの非製造業が54%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080619-OYT8T00260.htm

0 件のコメント: