(読売 6月20日)
企業の社員寮を、留学生に提供する取り組みがある。
東京都練馬区の東京メトロ平和台駅から、徒歩約10分。
三井物産平和台寮は閑静な住宅街にある。
立教大学大学院で学ぶ中国人留学生、謝善鵬さん(27)は、
この寮で社員に交じって生活。
会社から帰った社員3人と食堂で夕飯を食べながら、
「今就職活動中なんですよ」、「へえ、どんな状況?」、
「なかなか難しいですよ」。
そんなやりとりが気軽にできる。
寮費は、社員と同じで1万円足らず。朝夕付く食事も割安。
謝さんがこの寮に入ったのは2006年。
それまでは大学近くで一人暮らしをしていたが、家、大学、バイト先の
居酒屋を行き来するだけで、日本人との交流は少なかった。
「単に『おはよう』と、毎朝あいさつするだけでほっとする」と謝さん。
寮対抗のスポーツ大会にも参加し、「家族のような感じになれた」。
日本で就職を目指す留学生にとって、
社員寮は日本の文化を知る上でも重要。
謝さんは、「この寮の人は、平日朝早くから夜遅くまで働いているのに、
休日はしっかり遊びを満喫している。
大学やバイト先で見た日本人とは全く違い、
日本の会社で働くイメージが膨らんだ」
留学生への社員寮の提供は、経済同友会が参加企業を募る形で
1987年から始まっている。
当初は、参加企業も提供部屋数も増えたが、バブル経済の崩壊後、
社員寮を売却、提供部屋数は98年の838室をピークに減少、
07年には592室。
ただ、好転の兆しもある。
社員寮の賃貸業務を全国規模で展開する「共立メンテナンス」によると、
ここ2年で社員寮の契約部屋数は6~7%伸。
「社員研修の場として考えているところや、身近に相談出来る相手を置いて
離職を防ぐ狙いもあるようだ」。
1棟丸ごとの賃貸契約も増えている。
03年に若手の寮制度を廃止した三井物産も、3年後には復活。
部署間のコミュニケーション不足を補い、会社としての一体感を
醸成するには必要不可欠だという声。
特に、共同の風呂やトイレがある施設を優先的に探し、
より寮内での連帯感を強めるよう工夫。
現在は、8棟で18人の留学生を受け入れている。
古東誠・給与企画室長は、「社員と学生の生活パターンが違うこともあり、
そんなに接点が作れているわけではないが、
海外赴任が前提の社員にもよい刺激になるはず」。
「グローバル展開が当たり前となってきている日本企業にとって、
留学生を受け入れる意義は大きい」と、
社員寮の活用を進める財団法人「留学生支援企業協力推進協会」の
太田篤事務局長。
社員寮の活用に、もっと知恵を絞りたい。
◆日本での就職率は上昇傾向
2006年度の留学生3万2099人のうち、9411人(29.3%)が日本で就職。
04年度は、2万4961人中5705人(22.9%)で増加傾向。
政府の教育再生懇談会は、「留学生30万人計画」実現のため、
国内就職率の目標を5割にすることを提案。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080620-OYT8T00216.htm
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