2008年7月3日木曜日

当世留学生事情(4)社員寮に入り 企業知る

(読売 6月20日)

企業の社員寮を、留学生に提供する取り組みがある。
東京都練馬区の東京メトロ平和台駅から、徒歩約10分。
三井物産平和台寮は閑静な住宅街にある。
立教大学大学院で学ぶ中国人留学生、謝善鵬さん(27)は、
この寮で社員に交じって生活。

会社から帰った社員3人と食堂で夕飯を食べながら、
「今就職活動中なんですよ」、「へえ、どんな状況?」、
「なかなか難しいですよ」。
そんなやりとりが気軽にできる。
寮費は、社員と同じで1万円足らず。朝夕付く食事も割安。

謝さんがこの寮に入ったのは2006年。
それまでは大学近くで一人暮らしをしていたが、家、大学、バイト先の
居酒屋を行き来するだけで、日本人との交流は少なかった。
「単に『おはよう』と、毎朝あいさつするだけでほっとする」と謝さん。
寮対抗のスポーツ大会にも参加し、「家族のような感じになれた」。

日本で就職を目指す留学生にとって、
社員寮は日本の文化を知る上でも重要。
謝さんは、「この寮の人は、平日朝早くから夜遅くまで働いているのに、
休日はしっかり遊びを満喫している。
大学やバイト先で見た日本人とは全く違い、
日本の会社で働くイメージが膨らんだ」

留学生への社員寮の提供は、経済同友会が参加企業を募る形で
1987年から始まっている。
当初は、参加企業も提供部屋数も増えたが、バブル経済の崩壊後、
社員寮を売却、提供部屋数は98年の838室をピークに減少、
07年には592室。

ただ、好転の兆しもある。
社員寮の賃貸業務を全国規模で展開する「共立メンテナンス」によると、
ここ2年で社員寮の契約部屋数は6~7%伸。
「社員研修の場として考えているところや、身近に相談出来る相手を置いて
離職を防ぐ狙いもあるようだ」。

1棟丸ごとの賃貸契約も増えている。
03年に若手の寮制度を廃止した三井物産も、3年後には復活。
部署間のコミュニケーション不足を補い、会社としての一体感を
醸成するには必要不可欠だという声。

特に、共同の風呂やトイレがある施設を優先的に探し、
より寮内での連帯感を強めるよう工夫。

現在は、8棟で18人の留学生を受け入れている。
古東誠・給与企画室長は、「社員と学生の生活パターンが違うこともあり、
そんなに接点が作れているわけではないが、
海外赴任が前提の社員にもよい刺激になるはず」。

「グローバル展開が当たり前となってきている日本企業にとって、
留学生を受け入れる意義は大きい」と、
社員寮の活用を進める財団法人「留学生支援企業協力推進協会」の
太田篤事務局長。
社員寮の活用に、もっと知恵を絞りたい。

◆日本での就職率は上昇傾向

2006年度の留学生3万2099人のうち、9411人(29.3%)が日本で就職。
04年度は、2万4961人中5705人(22.9%)で増加傾向。
政府の教育再生懇談会は、「留学生30万人計画」実現のため、
国内就職率の目標を5割にすることを提案。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080620-OYT8T00216.htm

0 件のコメント: