(共同通信社 2008年6月25日)
東京都内のマンション。
諏訪裕美子さん(45)が事務所に使う部屋には、
9年前に過労自殺した弟、達徳さん=当時(34)=の
洋服や本などの遺品が並ぶ。
裕美子さんは今年2月、「過労死の労災申請」(自由国民社刊)を出版。
「孤立しがちな遺族を励まし、救済の手助けになれば」との願い。
機械メーカー勤務の達徳さんは1999年、自宅マンションから飛び降り自殺。
納期に追われ顧客対応にも苦労、1日11~18時間の長時間労働が続く。
「僕は自転車をこいでいるようだ。疲れていても、こぎ続けなければならない。
もう疲れた」と同僚に漏らしていた。
裕美子さんは2000年、自殺は「仕事が原因」と労災申請。
仕事の実態を明らかにするため、同僚や友人から証言を集めた。
「会社の帰りや休日に会ったり、電話で話を聞いたが、1人では大変だった」。
時間が足りず、会社を辞めて奔走したが、
情報は少なく思うようにいかなかった。
証言や資料は労働基準監督署に出したが、
「労災認定には、どんなものが必要なのか分からずに悩んだ」。
孤独な活動が2年過ぎたころ、「過労死を考える家族の会」などの存在を知った。
「体験から得た情報集めのこつや、提出書類作成の仕方など
実際に役立つ助言をもらえて救われた」。
申請から2年8カ月後、達徳さんの労災は認定。
その後起こした民事裁判は06年、会社側と和解。
間もなくして、知人から過労自殺の労災申請の相談を受けた。
「こんな身近に同じ遺族が、と驚いた。
教えてほしいことのリストを見た途端、何も知識がなく
困っていたかつての自分が重なって」
裕美子さんは、それまで心に温めていた遺族の労災申請の手助けとなる
実用的な本の出版を決意、同じ思いを持つ共著者で
社会保険労務士の色部祐さんと動き始めた。
「知りたいことを分かりやすく」と心掛け、自身の体験だけでなく、
ほかの遺族がどんな要望を持っているのか聞き取り、本に反映。
過労死、過労自殺の予防策も加え、遺族の教訓を生かした
「危険信号」の見つけ方などを入れた。
「周囲の偏見や会社の協力がなく、労災申請をあきらめる遺族は少なくない。
申請件数が増え、社会の認識が高まれば、認定もされやすくなり、
過労死、過労自殺のない社会実現にも役立つ。その一助になれば」。
本に込めたもう一つの願い。
※ 過労自殺の認定
2007年度の過労自殺(未遂を含む)の労災申請件数は164件、
03年度の122件に比べ34%増。
認定件数は、07年度が81件と、03年度の40件から倍増。
世代別認定件数では、07年度は20-30代が44%。
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=76282
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