2008年8月10日日曜日

心臓に良い日本の食事は魚が重要

(WebMD 7月28日)

日本人のパラドックスと言えるかもしれない。
日本の男性は、生涯を通じたコレステロール値、血圧、2型糖尿病発生率が
米国の男性と同程度であり、喫煙率が(米国の男性より)はるかに高い。

日本在住の男性における心疾患が、米国在住の男性の1/2以下、
日本人男性ではアテローム性動脈硬化
(動脈を詰まらせるプラークで、心臓発作や脳卒中につながる)が
少ない傾向があるのはなぜか?
その答えは、海に見つかる可能性が新規研究から示唆。

この研究では、日本在住の男性の方が魚を多く食べるため、
血中ω-3脂肪酸濃度は米国在住の白人男性、日本人男性の2倍。
日本在住の男性は、アテローム性動脈硬化の重症度も低い。

マグロ、サバ、サケなど脂肪が多い魚に主に見られるω-3脂肪酸は、
動脈におけるプラーク形成を予防するという仮説の裏付け。

ω-3脂肪酸の摂取源には、魚油(ドコサヘキサエン酸(DHA)、
エイコサペンタエン酸(EPA)が含まれる)のほか、植物起源のものも。
体内でω-3脂肪酸に変換されるα-リノレン酸(ALA)は、
植物起源のω-3脂肪酸。

これまでの研究では、一般に魚油が使用。
ALAを含む植物起源のものにも同じ有効性があると思われるものの、
これについてはあまり知られていない。
研究者のAkira Sekikawaは、「日本では、魚の摂取量が非常に多いことは、
アテローム性動脈硬化、冠動脈性心疾患の発生率が大幅に低い。
この研究では、ω-3脂肪酸が日本の男性を保護していることを
証明していないが、ω-3脂肪酸濃度が上昇するとともに動脈厚が減少する

日本人の食事は第二次大戦の終戦以降、ますます西欧化されてきたが、
日本の魚消費量取は依然として世界最高の水準。
ω-3脂肪酸研究者のWilliam Harrisは、
日本人は毎日、魚を平均3オンス(約85g)食べるが、
米国人は米国心臓協会(American Heart Association)が薦める
週2皿を、何とか食べることも難しい。

日本における1g/日という平均ω-3脂肪酸摂取量は、
米国人が摂取する量の約8倍。
「ω-3脂肪酸を、もっと食事に取り入れる必要があることは明らか」

魚油サプリメントは、ω-3脂肪酸を摂取するひとつの方法。
心疾患のある人を対象とした研究では、ω-3脂肪酸補給の有効性が示される。
米国心臓協会では、心疾患のある人は毎日、EPAとDHAを合わせて
1g摂取するように推奨。
ω-3脂肪酸の良い摂取源には、アマニ油・菜種油、大豆、豆腐、クルミなど。
ω-3脂肪酸は、カプセルとして市販されることも多いが、
胃の調子を悪くする可能性があるので、食物と一緒に摂取すべき。

Harris博士は、食品の多くが、葉酸などのビタミンで強化されているのと同様、
ω-3脂肪酸で強化されるだろう。
「米国人に油の多い魚を好きにならせるか、米国の食品にω-3脂肪酸を入れる
別の方法を見つけるか、そのどちらか」

Sekikawa博士らによる研究では、日本在住の日本人男性281名、
米国在住の日本人男性281名、米国在住の白人男性306名を対象。
全員40代で、ω-3脂肪酸などの脂肪酸の血清中濃度を測定。
アテローム性動脈硬化について、2つの検査を実施。
1つは、脳に血液を送る大頸動脈(major neck artery)の動脈壁厚の測定、
もう1つは心臓につながる動脈におけるプラークの測定。

総脂肪酸濃度は3群とも同程度、
日本在住の日本人男性の血中ω-3脂肪酸濃度は、米国在住の日本人男性、
白人男性よりそれぞれ45%および80%高かった。
アテローム性動脈硬化に関する2検査から、
日本在住の日本人男性の方が動脈におけるプラーク形成が少ない。

アテローム性動脈硬化のレベルは、
日系米国人および白人米国人の両者とも同程度。
『Journal of the American College of Cardiology』8月5日号に掲載。

Sekikawa博士は、「日本在住の日本人における冠動脈性心疾患による
死亡率が大幅に低いことは、遺伝的因子による可能性が非常に低い

Harris博士は、40年ほど前に実施されたグリーンランドの
イヌイットエスキモーに関する研究から、「ω-3仮説」が生まれた。
果物、野菜、複合糖質が少なく、脂肪やコレステロールの多い食事を
摂取していても、エスキモーは心疾患の発生率が非常に低い。

その理由は大量の魚、クジラ、アザラシの摂取により、
食事中のω-3脂肪酸が非常に高濃度であるため。

しかし、最近の諸研究によれば、アラスカエスキモーでは、
魚の消費量が多いにもかかわらず、心疾患発生率が米国の白人より高い。
「アラスカにおける問題の一因は、ω-3脂肪酸の不足ではなく、
彼らの食事が西欧化され、ショートニングなどの飽和脂肪を大量に摂取したこと」

長鎖ω-3脂肪酸の心保護効果(cardioprotective punch)は、
脂肪、特に飽和脂肪の多い食事にはかなわない可能性」が示唆。
米国心臓協会(American Heart Association)の元会長である
心臓専門医Robert Eckelは、非常に高用量のω-3脂肪酸を投与した
心臓発作患者の研究は総じて期待外れ。

「以前より、魚を多く食べる人たちは心疾患になりにくい。
この研究はそのことを裏付けているものの、さらに研究が必要」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=77973

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