2008年7月11日金曜日

当世留学生事情(8)アニメを核に海外提携

(読売 6月26日)

アニメなど、日本の強みを留学生獲得の呼び水にする大学がある。
中国、韓国、米国出身の5人の留学生が見入るテレビ画面の中の
大柄な米国人が、みるみるうちにアニメの妖怪に変化。
東京工科大学の研究室。
同大と米国の南カリフォルニア大学(USC)の学生が、
初めて共同制作した「YOKAI」。

約5分のDVDは、米国から東京に引っ越してきた妖怪一家と
隣人の日本人のやりとりをコミカルに描いている。

USC出身で、人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」が好きだという
米国人ウメナチ・メリチさん(25)は、「映像が素晴らしい」と、
後輩の作品に驚きの表情を浮かべた。

1999年に開設された東京工科大メディア学部は、
CG合成やデジタル録音編集などの最新設備のスタジオを持つ。
アニメーション制作技術を核に、東京西部地区をアニメ産業の
一大拠点にしようという「アニメバレー構想」を提唱。

USCは、映画監督のジョージ・ルーカス氏、ロバート・ゼメキス氏らを
輩出したことで知られ、映画制作技術で米国有数の大学。

同学部の金子満教授がUSC出身、2001年に両大学の提携が決まった。
これまで短期の交換留学なども行ってきた。

東京工科大が、アジアで本格的に留学生の獲得に乗り出す。
今年、マレーシアの経営科学大学(MSU)とゲームやアニメ分野で提携。
3年後に3年次に編入させる計画。
政府の補助金を得て、マレーシア以外からも留学生を受け入れる。
制作技術のほかに、ビジネスのやり方なども教える。

USCとの共同制作の担当者でもある同大メディア学部の三上浩司講師は
「アジアの国々を、ビジネスパートナーにしていき、
アジア全体でハリウッドに対抗していかないと、
ハリウッドに総取りされてしまう」と危機感。

経済産業省のコンテンツグローバル戦略研究会の委員を務めた
アニメ制作会社「シンク」の森祐治社長も、
「日本のアニメ業界の今後の成長のためには、
アジアとの連携は欠かせない」。

「日本のアニメは、動画や彩色などをアジアの国々に
発注しているのがほとんど。
日本のやり方を理解した人材がアジア圏で育つことは、
業界全体としても歓迎すべき」

日本のアニメやゲーム、映画などコンテンツ(情報内容)産業の
国内市場規模は、米国に次いで世界2位。
輸出額を国内市場で割った海外展開比率(2005年)は、
日本はわずか1・9%、米国の17・8%と雲泥の差。

世界に冠たるアニメ大国の飛躍のためにも、
アジアからの留学生は欠かせない。

◆日本のコンテンツ産業

世界のコンテンツ産業の市場規模(2005年)は、146兆円。
米国が60兆円で41.7%、日本は13.7兆円(9.4%)で世界第2位。
01~05年の国内市場の成長率は、0.7%にとどまっている。
米国は5.6%、世界全体の成長率も5.8%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080626-OYT8T00303.htm

0 件のコメント: