(読売 6月25日)
留学生を引き付けることに成功しているビジネススクールがある。
東京都千代田区にある一橋大の大学院「国際企業戦略研究科」。
6月第1週は、自分の使命(ミッション)や将来の展望(ビジョン)など、
学生が自分の思いを英語で語り、議論。
名付けて、「ナレッジ(知識)ウイーク」。
学生は、年齢も肌の色も様々。
スーツ姿もTシャツだけの学生も。
インド人学生が、「若いころから、金銭面だけの展望を掲げていいのか」と
投げかけると、次々と手が挙がった。
「じゃあ、何でビジネススクールで勉強しているの?」
「大金持ちになった後どうするかが一番問われる」。
研究科長の竹内弘高教授(61)は、教室の中心で議論に聞き入った。
MBAを取るなら欧米、という流れを覆すビジネススクールを目指し、
研究科が出来たのは8年前。現在の学生106人中80人が留学生。
東アジアだけでなく、米英仏、中東など学生の出身国・地域は28。
今秋の新入生も、留学生が約8割。
米ハーバード大のビジネススクールで教べんを取った経験のある
竹内教授は、「MBAを持って、実務経験があり、英語堪能。
この3条件を満たす教授陣を集めるのは至難の業」。
若い教授たちをベテラン教授の授業に参加させたり、
ベテラン教授が若い教授の授業を指導したりして、教育力をアップ。
教授陣に実務経験があるからこそ、企業とのつながりも強く、
留学生の日本での就職率は9割超。
日本に呼び込むためには、日本で学ぶ付加価値を持たせることも重要。
米国のビジネススクールと差別化を図るため、
社員が持つ経験や知識を全社で共有し、
商品開発や新規分野の開拓などに生かす「ナレッジマネジメント」を必修。
株主一辺倒でなく、人間中心で、社会貢献や従業員、顧客などを重んじる
日本企業の経営を教えることが特徴。
「日本は、物事の進め方がとても不思議な国。
トヨタに代表されるように、ビジネスのやり方も独特なものがある」
台湾出身で、大学を含め10年間米国で過ごした黄子軒さん(29)。
3、4人の学生に教員1人という割合で、ゼミ形式の授業が多いのも
留学生から好評。
ウズベキスタン出身のアンナ・レメシキナさん(24)は、
「学生と教授たちの間のきずながとても強い」。
教授と一緒に旅行をしたり、居酒屋で過ごしたりといった、
プライベートな交流も、留学生は好意的に受け止める。
「温かく迎えられているという心の部分の魅力も大きいようだ」。
こうした利点がネットを通じた口コミで広がる。
今秋入学予定のフランス人は、在学中のフランス人学生のチャット
(ネット上のおしゃべりの場)を見て興味を抱いた。
同科の取り組みは、魅力あるプログラムがそろえば、
海外からも学生を呼び込めることを示している。
◆MBA(Master of Business Administration)
ビジネス・スクール(経営学大学院)の修士課程修了者に与えられる学位。
実務家養成が目的で、会計、法務などのカリキュラムを実践的に学ぶ。
日本では定義が明確ではないが、ビジネス系の専門職大学院は30校。
MBA取得を掲げるのは、約20校。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080625-OYT8T00201.htm
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