(読売 8月26日)
地球内部の熱水を蒸気に変えてタービンを回す「地熱発電」。
火山国でありながら、国内での開発はここ10年、停滞気味だったが、
最近は風向きが変わってきた。
海外では、地球温暖化防止策としても熱い視線を浴びる。
貴重な純国産エネルギーの現状を追った。
桜島を望む鹿児島県指宿市の高台に立つ「メディポリス指宿」。
この地にかつてあったのは、旧年金福祉事業団が約200億円を投じた
保養施設「グリーンピア指宿」。
赤字経営で2002年に閉鎖後、鹿児島から成長した医薬品開発企業
「新日本科学」が約6億円で購入、06年に滞在型の健康医療施設として再生。
施設の目玉は、特殊な放射線をがん組織に集中させ、
高い治療効果を発揮している「粒子線治療センター」。
各自治体が誘致合戦を繰り広げる期待の新治療施設だが、
保険適用外のため、治療費が1人約300万円かかる。
「粒子線には、大量の電力が必要。
電気代を下げて、治療費を安くできないか?」。
永田良一・同社社長(50)の命を受けた田中清仁・施設企画室長(46)は、
「風力なども検討したが、台風が多く適地はない。
宿泊施設では、掘り当てた温泉水を床暖房や岩盤浴にも使い始め、
燃料代が年間4、5千万円も節約。
これを社長に報告すると、『地熱発電はいけるじゃないか』とGOサイン」
敷地の一角には今、地熱発電用の井戸を掘るやぐらが立つ。
「粒子線施設の全電力をまかなえそうだ」。
田中さんは、調査結果に確かな手応えを感じている。
「日本は、世界有数の地熱資源大国。
全電力をまかなえるのに、なぜ活用しないのか」。
環境問題で発言が注目される米アースポリシー研究所の
レスター・ブラウン氏は、日本での講演でこんな疑問を投げかけた。
国内での地熱発電の新設は、00年以降ゼロ。
全国に18か所ある地熱発電所が発電できる総量は、電力全体の0・2%。
新設には様々な規制をクリアしなくてはならず、
完成まで通常15~25年かかって、開発コストに跳ね返るため。
中国やインドなどの旺盛な消費で、石油や天然ガスなどの需給構造は
不透明感を増すばかり。
経済産業省は、低温の熱水(100度程度)を利用する新型の
地熱発電導入を促進する支援策を打ち出した。
少しずつだが、潮目は変わりつつある。
http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20080826-OYT8T00359.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿