(読売 8月14日)
国立の単科大学が、全国から集まる志望者に畜産学の現実を見せる。
約47万頭の乳牛や肉牛が飼育される北海道の十勝平野。
帯広市に、全国唯一の畜産学部を持つ帯広畜産大学がある。
広大なキャンパスには、牧草地や農地が広がり、
牛や馬などの飼育動物のほか、モモンガやエゾリスも顔を出す。
オープンキャンパスで、人気が高いのが、獣医学課程の志望者が
同大家畜病院の診療の一端を見る「産業動物見学コース」。
同院には、道内の畜産農家から、病気になった牛や馬などの大型動物が
毎日のように送られ、診療を受けている。
「馬も、ストレスや食べ物で胃かいようになります」。
佐々木直樹准教授(41)は馬を使い、胃かいようを診断する内視鏡検査を実演。
鼻から直径8ミリ、長さ3メートルの内視鏡を入れ、モニターで胃の映像を映す。
「この馬の胃は健康ですね。
大学の5、6年生になると、内視鏡が使えるようになります」と説明すると、
約20人の参加者は感心したようにうなずいた。
佐々木教授は、「大学の獣医学教室は、ペットなど小動物向けが人気になり、
牛や馬を診療できる大学は少なくなった。
ここでは産業動物で、豊富な実践を通じた勉強ができる」
同大では、昨年度の入学者252人の約7割が、北海道以外の高校出身。
今年のオープンキャンパスも、受験予定者190人と家族ら160人が参加、
受験予定者のうち約100人が道外。
長沢秀行学長(53)は、「大学の環境や研究内容、北海道の生活などを、
家族を含めて知ってもらう絶好の機会」
講義棟では、獣医学や生命科学といった研究科目ごとに、
パネルや標本、実験器具などが展示。
食品科学のブースでは、学内の加工工場で作った
豚の腸詰めソーセージが振る舞われた。
島田謙一郎准教授(40)が、「1年生で必修の農畜産実習では、
豚の世話を1~2か月した後で解体し、ソーセージを作ります」、
舌鼓を打っていた女子高校生は、少し驚いた表情。
「畜産大で学ぶ学生は、動物の貴重な生命から食品ができることを
実感してほしい」と島田准教授が強調。
親元を離れる新入生の多くは、獣医学や畜産、
食品や環境の研究への意欲が高い。
広大な自然を持つ北海道での生活や獣医、農業への漠然としたあこがれで
大学を選んでしまい、畜産業や獣医学の現場を見て、興味を失う入学者も。
「学力だけで選ぶのではなく、帯広畜産大で何をやりたいかの目的意識を、
できるだけ明確に持って入学してほしい。
情報提供の努力は惜しまない」
遠方からの参加者も多いオープンキャンパスは、
学生の抱く理想と現実のミスマッチを防ぐ貴重な機会に。
◆大学の畜産研究
牛や馬など産業動物を扱う研究は、飼育や繁殖、治療など
動物に直接かかわるものだけでなく、飼料作物の栽培、
食品の加工や製造、流通、農業経営、環境など多岐に。
帯広畜産大は、獣医学(6年制)と畜産科学(4年制)の2課程。
他大学では、農学部や獣医学部が多いが、
酪農学園大学(北海道江別市)は、全国唯一の酪農学部を置く。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080814-OYT8T00198.htm
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