2008年8月26日火曜日

キャンパス探訪(3)獣医・畜産の現場公開

(読売 8月14日)

国立の単科大学が、全国から集まる志望者に畜産学の現実を見せる。

約47万頭の乳牛や肉牛が飼育される北海道の十勝平野。
帯広市に、全国唯一の畜産学部を持つ帯広畜産大学がある。
広大なキャンパスには、牧草地や農地が広がり、
牛や馬などの飼育動物のほか、モモンガやエゾリスも顔を出す。

オープンキャンパスで、人気が高いのが、獣医学課程の志望者が
同大家畜病院の診療の一端を見る「産業動物見学コース」。
同院には、道内の畜産農家から、病気になった牛や馬などの大型動物が
毎日のように送られ、診療を受けている。

「馬も、ストレスや食べ物で胃かいようになります」。
佐々木直樹准教授(41)は馬を使い、胃かいようを診断する内視鏡検査を実演。
鼻から直径8ミリ、長さ3メートルの内視鏡を入れ、モニターで胃の映像を映す。
「この馬の胃は健康ですね。
大学の5、6年生になると、内視鏡が使えるようになります」と説明すると、
約20人の参加者は感心したようにうなずいた。

佐々木教授は、「大学の獣医学教室は、ペットなど小動物向けが人気になり、
牛や馬を診療できる大学は少なくなった。
ここでは産業動物で、豊富な実践を通じた勉強ができる」

同大では、昨年度の入学者252人の約7割が、北海道以外の高校出身。
今年のオープンキャンパスも、受験予定者190人と家族ら160人が参加、
受験予定者のうち約100人が道外。
長沢秀行学長(53)は、「大学の環境や研究内容、北海道の生活などを、
家族を含めて知ってもらう絶好の機会」

講義棟では、獣医学や生命科学といった研究科目ごとに、
パネルや標本、実験器具などが展示。
食品科学のブースでは、学内の加工工場で作った
豚の腸詰めソーセージが振る舞われた。

島田謙一郎准教授(40)が、「1年生で必修の農畜産実習では、
豚の世話を1~2か月した後で解体し、ソーセージを作ります」、
舌鼓を打っていた女子高校生は、少し驚いた表情。
畜産大で学ぶ学生は、動物の貴重な生命から食品ができることを
実感してほしい」と島田准教授が強調。

親元を離れる新入生の多くは、獣医学や畜産、
食品や環境の研究への意欲が高い。
広大な自然を持つ北海道での生活や獣医、農業への漠然としたあこがれで
大学を選んでしまい、畜産業や獣医学の現場を見て、興味を失う入学者も。

学力だけで選ぶのではなく、帯広畜産大で何をやりたいかの目的意識を、
できるだけ明確に持って入学してほしい。
情報提供の努力は惜しまない」

遠方からの参加者も多いオープンキャンパスは、
学生の抱く理想と現実のミスマッチを防ぐ貴重な機会に。

◆大学の畜産研究

牛や馬など産業動物を扱う研究は、飼育や繁殖、治療など
動物に直接かかわるものだけでなく、飼料作物の栽培、
食品の加工や製造、流通、農業経営、環境など多岐に。
帯広畜産大は、獣医学(6年制)と畜産科学(4年制)の2課程。
他大学では、農学部や獣医学部が多いが、
酪農学園大学(北海道江別市)は、全国唯一の酪農学部を置く。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080814-OYT8T00198.htm

0 件のコメント: