(読売 8月27日)
群馬・草津町の草津温泉で、スローガン入りのうちわが翻った。
「地熱発電で草津温泉は枯れる」、「守ろう日本の温泉文化」。
町民約1100人が、湯が自然湧出する町のシンボル「湯畑」で、
地熱発電への反対集会を繰り広げた。
問題の発端は、全国一のキャベツ生産地として知られる
隣の嬬恋村が公表した調査報告書。
地熱発電を活用した「エコ村」構想を抱く熊川栄村長(61)の肝いりで、
草津温泉の主要源泉から約3・5キロ・メートルの場所を含む
村内の2地点を候補地とし、開発を目指す内容。
草津は、町民の9割以上が温泉観光で生きる町。
昔に比べ、湯量が減少傾向にある不安感もあって、
町民にとって地熱発電は「資源を奪う脅威」に映る。
町議会も計画を知るやいなや、東北や九州の地熱発電所を視察。
黒岩信忠議長(61)は、「温泉枯渇や地滑りなど、地熱発電の影響と思われる
事例が各地にあった。調査だけでもと認めてしまえば、取り返しがつかない」。
嬬恋村の計画策定にかかわった芦田譲・京大名誉教授(64)は、
「日本では、発電に使った蒸気も水に戻し、地下に還元している。
地熱発電の温泉への影響が、科学的に裏づけられた例はない」として、
冷静な対話を訴えたが、草津町の不信感は根強く、
両者は同じ場で一度も話し合うことはなかった。
調査計画も、国の補助金枠に漏れ、事実上凍結。
「なんとか温泉と地熱の対立構造を崩す突破口にしたい」。
産業技術総合研究所の村岡洋文・地熱資源研究グループ長(56)と
「地熱技術開発」は、既存の温泉に影響を与えず設置できる小型の
「温泉発電」システムを開発。実用化に向けた準備を進めている。
浴用より高温の温泉が出る場合、草津温泉のように成分を薄めずに
「いい湯加減」にする〈湯もみ〉が欠かせない。
温泉発電は、本来は捨てているこの熱を発電に利用。
沸点が低いアンモニアを入れた管を熱水の中に通し、
沸騰させてタービンを回す仕組み。
第1号機の設置候補地は、長野県小谷村。
静岡県や北海道など、複数の温泉地も導入に向け検討を始めた。
村岡さんの推定では、温泉発電が可能な温泉は全国に1591か所。
未利用の熱だけで、現在の地熱発電の発電量(約55万キロ・ワット)を
上回る72・3万キロ・ワットの発電ができる計算。
http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20080827-OYT8T00362.htm
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