(岩手日報 9月9日)
明治外交史研究家平野恵一さん(71)は、
外務省外交史料館の資料から、一関市出身の外交官高平小五郎が、
セオドア・ルーズベルト元米国大統領に、
新渡戸稲造の著書「武士道」を贈呈したことを示す報告文を発見。
これまで武士道は、明治の官僚で政治家の金子堅太郎が
大統領に贈ったとの説が広まっていた。
平野さんは、「大統領の日本理解に、同郷の2人が深くかかわっていた」と
新たな史実発見を喜んでいる。
文書は、「機密第二九号大統領近況一般報告の件」。
1904(明治37)年6月11日付で、在米全権公使だった高平が
小村寿太郎外務大臣にあてた。
同年2月、日露戦争が始まり、翌年9月、ル大統領の仲介により日露講和、
ポーツマス条約が締結。
報告書には、「源氏物語、新渡戸博士の武士道をはじめ、
本邦に関し英文にて記されたる著作中、可能なものを数部選び、
その(大統領の)閲覧に供したるに」と、
高平本人が日本関係の書物数冊を贈った事実を記している。
これまで武士道は、大統領が「何か日本人の精神性を知るための書籍はないか」
と金子に依頼。金子が推薦した本の一つだったと言われてきた。
金子は自著「日米外交秘録」で、「大統領に送った」と記載。
大統領と同じハーバード大に留学し、2人は「学友」だったこと。
大統領の支援を得て、日露講和の実現に奔走したことなどが金子説を補強。
しかし、金子は外務大臣にあてた報告書「日露戦役米国滞留記」で、
「大統領から高平と共に内輪の昼食会に招かれたおり、『武士道』の話となり、
高平公使が都合よく1冊所持しているので、それを進呈したい旨申し出た」。
平野さんは、「金子が大統領に武士道を贈ったという話が流布されているが、
高平が同郷で親交のあった新渡戸の著書を大統領に贈呈したというのが
事実だと思う」。
上智大外国語学部の高橋久志教授は、
「日露講和では、さまざまの日本人が対米外交で活躍した。
高平は、大統領に大きな影響を与えた一人であることは
最近研究者の間で知られてきている。
報告文は、高平が日本理解に尽力したことを示す新たな発見で
大変興味深い」と評価。
◆高平小五郎(たかひら・こごろう、1854-1926年)
一関市出身の外交官。76(明治9)年外務省入り。
79(同12)年在米公使館勤務。オランダ、イタリアなど欧州の公使を歴任。
99(同32)年外務次官。日露戦争当時、特命全権公使として米国に駐在し、
首席全権小村寿太郎を助けてポーツマス条約の早期締結を図った。
◆金子堅太郎(かねこ・けんたろう、1853-1942年)。
福岡市生まれ、明治期の官僚・政治家。司法大臣、農商務大臣、
枢密顧問官などを歴任。伊藤博文を助け大日本帝国憲法制定などにかかわった。
米国留学の経験を生かし、日露講和でも活躍。
日本法律学校(現日本大)初代校長。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080909_15
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