2008年9月24日水曜日

学校の情報化(2)手書き入力 「発言」次々

(読売 9月18日)

ICT(情報通信技術)導入が学力向上につながるか、研究が進む。

円卓を囲む児童の前には、ノートパソコンが1台ずつ。
画面が倒れ、その横には入力用のペンが置かれている。

「10月に見学に行く『花王』で質問したいこと、調べたいことを
3人1組でまとめよう」。
岡本友尊教諭(45)の呼びかけで、和歌山市立雑賀小学校5年生の
社会科の授業は始まった。

3人は、それぞれ異なる文字の色を選ぶ。
自分の端末画面に文字を書き込むと、ほかの子の画面にも
その文が映し出され、3人で画面を共有する形。
ある子が、「働いている人数・時間」と書くと、別の子が矢印を書いて
「休憩している時間」と付け加える。
「機械の種類はいくつ」との問いに、「予想100種類」と別の子が書き殴る。

1枚の模造紙に、みんなで意見を書き込むように、
画面をスクロールさせながらどんどん広がっていく意見の輪。
保存すれば、持ち運びにも便利な“1冊の”電子ノートが、
あっという間にできあがった。

自分の考えを瞬時にまとめて手書き入力する「ライブ共有セッション」
と呼ばれる授業。思考力・判断力・表現力を育てるのに有効。

「みんなの前で発表するのは苦手だけど、文字ならどんどん書き込める」と男児(11)。
別の男児(11)は、「自分の意見に、ほかの子がアンダーラインを引いてくれると、
うれしくて自信につながる」。

「恥ずかしがって発言しない子の中にも、いい意見を持っている子はいる。
そうした子が自信をつけ、意欲的に発表できるようになれば」と岡本教諭。

和歌山市がマイクロソフトと協力し、同社が進めるNEXTプロジェクトの一環で、
「ICTを活用した学力向上のための研究プロジェクト(Wプロジェクト)」
に取り組み始めたのは昨年10月。
市内52の全小学校に、手書き入力が可能なタブレット型パソコンを1300台導入、
研究実践協力校4校を中心に、ICTを活用した学習の効果のデータを集めている。

「未来を担う子供たちにとって、ICTは不可欠。
苦手という理由だけで活用しないのは、教師側の勝手な都合に過ぎない」
市立教育研究所の竹内弘純所長。
岡本教諭ら小中5人の教員を研究所員に指定し、ICT推進のリーダーとして
ほかの先生に技術を伝える存在になるよう、研修を重ねている。

タブレット型パソコンには、漢字の筆順の正しさや、はね・とめの有無などの
チェック、計算の仕方を順を追って教えてくれるシステムも備わる。
「漢字テストの結果を比較すると、中・下位の成績の子供の点が底上げされた」

一方で、「ICTを組み入れようと悩みながら授業を見直すことが、
結局スキルアップにつながる」。
機器に使われることなく、あくまでも使いこなすことで、
初めてその効果は発揮されるようだ。

◆NEXTプロジェクト

最先端のICTが未来の学校教育をどう変えるかを探るため、
独立行政法人メディア教育開発センターとマイクロソフトが共同で進めている。
海陽中等教育学校(愛知)、立命館小学校(京都)、
神戸学院大付属高校(兵庫)、東京都港区立青山小学校もモデル校で、
学力の向上、校務の効率化などを研究。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080918-OYT8T00245.htm

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