(読売 9月2日)
“道場”で授業力を磨いた1期生は、誰からも積極的に技を学ぶ。
「さん、に、いち、9分経過」。
ストップウオッチを見ながら、吉田清史教諭(38)が読み上げる。
東京都小金井市立小金井第一中学校の2年生20人が、
手にした線香を方眼紙の目盛りに合わせてそっと置く。
方眼紙には、線香の先の丸い焦げ跡がつく。
夏休み直前の一次関数の授業。
作業を1分ごとに繰り返すと、線香が短くなっていく様子を表す
グラフができあがった。
線香の長さと経過時間の関係に、気づき始める生徒が出てくる。
「きれいな直線になってる」。
満面の笑みを浮かべる生徒に、
「何分後に線香が燃え尽きるか、予想できそうかな?」。
まだまだグラフ作りに夢中の生徒には、
「次はどれぐらい短くなると思う?」。
時間を計りながら、それぞれに助言する。
授業終了時には、全員が一次関数の意味を理解した様子。
数学が得意な生徒も、苦手な生徒もみんなが楽しめ、
個別指導の時間も確保できる。
新しい単元に入る時には、できる限りそんな教材を用意する。
仕入れ先は、本やインターネット、先輩や他校の知り合い。
自分のクラスに合うようアレンジを加える。
「線香」は、同中の先輩教師に教えてもらった。
「どんどん聞いて試してみる。それが大切だと思います」
吉田教諭は、東京都教委の東京教師道場の1期生。
月1回開かれる学習会に2年間通い、情報交換できる仲間もたくさんできた。
同中の山本修司校長(58)は、「以前は、一生懸命さが空回りして、
生徒がついていけなかった。見違えるほどの成長です」
東大大学院で生物環境工学を学んだ。
大手食品会社の技術職を経て、中学校の教壇に立ったのは31歳。
幼いころから、数学は大好き。
高校生の時には、「カリスマ」と言われる予備校講師の参考書を見て、
「もっと、美しく、エレガントな解法はないかなあ」と思いを巡らせた。
最初の年、意気揚々と授業に臨んだ。
自己流で文字を多用し、数学の魅力を思い切り語った。
だが、反応は今ひとつ。
教室を出た瞬間、「わかんね~」とぼやく生徒の言葉が耳に届いた。
簡単なことを聞いたつもりなのに、生徒が泣き出してしまったことも。
教えたいことがあれもこれも出てきて、つい、しゃべりすぎてしまう。
自分の授業をそう分析し、反省した。
それからは、以前にもまして、校内の教員に教えを請うようになった。
一生懸命な姿を見て、応援してくれる保護者も現れた。
“道場”が開設されると聞いて、手をあげたのは、
支えてくれた人たちのためにも少しでも早く、多くのことを勉強したい。
“道場”は今春で修了したが、「もっともっと学びたい」と、
上級の東京教師道場錬成講座に通っている。
自己流はしばらくお預けだ。
◆東京教師道場
東京都教委が2006年度から、経験5~10年目の教員を対象に、
授業力向上を目指して始めた。
定員は毎年400人。
教科ごとに4人一組で、ベテラン教員らの助言を受けながら学習会に参加、
互いの授業も見学し合う。
今年3月に、1期生375人が修了。
うち125人が、さらに上級編の東京教師道場錬成講座(3年間)に参加。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080902-OYT8T00285.htm
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