(読売 8月30日)
全員参加の数学授業をめざして腕を磨く教師がいる。
宮崎県立都城泉ヶ丘高校で、一番大きな総合教室は、
同高を含む市内の県立高校3校の3年生72人でいっぱい。
宮崎県教委の「宮崎授業力リーダー養成塾・高校数学」で学ぶ
1期生の教師5人が、腕前を披露する学習会。
県内各地から集まった数学教師が廊下まであふれた。
学習会は、塾長を務める県立宮崎工業高校の内田信昭教諭(48)
の提案で、県教委が企画。
初対面の生徒の心をどれだけつかめるか、
習熟度がバラバラの生徒にどれだけ柔軟に対応できるかなど、
高度な力が必要。
生徒にとっても、指導力が高いとされる若手教員の授業は刺激となるはず。
学習会のチラシには、「生徒が満足できる内容です」。
県教委の自信のほどがうかがえる。
2日間にわたる学習会のトリを務めたのが、
県立延岡星雲高校の那須俊哉教諭(32)。
「僕の授業では、声を出してもらいますからね」。
那須教諭は、眠たげな生徒に「せーの」とかけ声をかけ、
まず公式を唱えさせた。
問題解説の途中には、「なんで、こうなるのかな。隣の人とじゃんけんして、
負けた方が勝った方に説明しよう」と指示を出す。
めざすのは、「全員参加で、国語や英語のように生徒が発言する授業」。
生徒の話す内容に耳を傾けて理解度を探り、
この日は演習よりも説明に重点をおいた。
参加者の1人、県立都城西高校の冨森慧子さん(18)は
「経験したことのない授業。あっという間だった」と感心。
広島大学理学部数学科で学んでいた那須教諭が、教員を目指したのは
「地元、宮崎に帰りたい」という気持ち。
当初は、「公務員だし、あくせく働かなくても、勤め上げられるのではないか」
という甘い気持ちも。
だが、教育実習で教壇に立った瞬間、考えが180度変わった。
「生徒は、一生に一度しかない貴重な時間を割いて、目の前に座っている。
毎年、生徒の思い出に残るような授業をしたい」
初任地は、生徒のほとんどが就職する工業高校。
生徒が何を求めているかを考え抜いた末、教科書通りの授業だけでなく、
授業前には危険物取扱者の資格取得の勉強もさせた。
普通高校に移ってからは、受験数学をモノにするため、
高校生向けの通信添削に取り組み、
夏は浪人生に交じって予備校の講習をうけた。
予備校の講義は、ほとんどが、講師1人で問題を解説し、話し続ける。
そんな予備校の講義を、手本とする教員も多い。
だが、それでは聞く気のある生徒にしか届かないと気づいた。
「教室の生徒と全員が、考えなければならないような、
対話のある授業を心がけよう」と決めた。
「分からない」。そう決めつけて、授業を聞かない生徒が出やすい数学。
そのイメージを打破するために研さんを重ねる。
◆宮崎授業力リーダー養成塾
小学校の国語と算数、中学校の数学と理科、高校の数学の5教科で
宮崎県教委が昨秋開設。
対象は、5~10年目の教員で各5人ずつ選抜し、期間は2年。
ベテラン教員が塾長としてノウハウを伝授する。
お互いの授業を見学して討論を繰り返し、東京都内の進学校の授業や
大手予備校の講義も視察。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080830-OYT8T00212.htm
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