(読売 9月4日)
長期の教員研修で鍛えた理科の授業の力を、若い教師に伝える。
千葉県東金市の県立東金高校で、県の小学校教員初任者研修
「理科観察・実験実習講座」が開かれた。
最初に壇上に上がったのは、茂原市立茂原中学校の保川浩基教諭(46)。
保川教諭のテーマは、「顕微鏡の使用法」。
しかし、最初は手近なものを50~100倍に拡大して画面に映し出す
「マイクロスコープ」を使い、雑誌の表紙や皮膚、チョウの羽、
セミのぬけがらなどを次々と見せる。
チョウの羽の細かい模様などに、若い教師から「おーっ」と声が上がる。
「ミクロの世界で見ると、見慣れたものに、まったく違う世界が広がる。
子供が『なぜだろう』、と考えるきっかけになります」
続いて顕微鏡を使い、植物などを観察する。
最初はレンズの扱いに慣れずに戸惑っていた教師も、
ピントが合うと「きれいだ」、「すごい」と子供のように感動する。
大学は、教師には数少ない工学部出身。
機械相手の勉強で、技術者をめざしたが、教育実習に参加して
「人間形成にかかわるのも面白い」と感じ、中学教師になった。
理科の教員研修には進んで参加し、2~3年で講座を受け尽くした。
生徒と接する時間が多くなるよう、部活動や生徒会活動の指導にも
積極的にかかわった。
生徒との触れあいは楽しかったが、自信や余裕があったわけではない。
「工学部は、専門領域を深く狭く追求する勉強が主で、
人間関係を作る勉強が遅れているという意識があった。
教育学部などで専門に学んだ教師に比べ、劣等感があった」。
授業を良くするために、実験や観察を大切にしてきた。
「理科好きになって欲しい。生徒の関心をどう引くか」と考え、工夫してきた。
10年ほど前、学校に理科教員の後輩が入り、初めて、
自分の培った授業技術を、若い教員に伝えることを意識した。
茂原市立南中に勤めていた2004年、地域の教師のリーダーとなる
人材を育成する中堅教師向けの長期研修に参加。
県総合教育センターで指導主事らの指導を受けながら、
年間約100人が1年かけて教科研究などに取り組む。
この研修で、生徒に科学的な考え方を培う授業を強く意識するように。
「教師は知識量が広いほど、生徒の様々な期待に応えられる。
自分の知識の少なさや、授業方法が今のままで良いのかを、
見つめ直す機会になった」
昨年からは、理科の授業力を買われ、
県教委のサテライト研究員の1人に選ばれた。
若手教師の研修は、大事な活動の一つ。
「若い教師自身が理科に感動し、好きになることが、
よい理科授業を作る出発点。
次に教員自身が努力して、自分の力を上げること。
生徒は先生を見て、努力して向上することを学びます」
指導する立場になっても、授業力を上げるための意欲は衰えない。
その姿が、生徒と若い教員の模範となる。
◆サテライト研究員
子供の理科離れを食い止める狙いで、千葉県が昨年から
小中高校のリーダー的な教師に委嘱。
小学校の初任教員に必修とした「理科観察・実験実習講座」の講師のほか、
学校の枠を超えて地域で理科授業の活性化策を検討し、
実践事例集をまとめる役割もある。
今年度は43人が研究員に選ばれている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080904-OYT8T00209.htm
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