(日経 8月24日)
江崎浩・東京大学教授
―どんな技術が有望か?
インターネットのIPv6(インターネットプロトコルバージョン6)の技術。
現在はIPv4で、ネットの住所にあたるアドレスは
全体の15%程度しか残っておらず、2011年にも枯渇。
証券会社や銀行は、ネットサービスのユーザーの認証の際にIPアドレスを使い、
グローバルなアドレスが取れなくなれば大きな支障が出る。
インターネットは、いろいろな情報を低コストで流通する基盤を提供。
グーグルなどネット関連企業ばかりでなく、
銀行や証券など古くからある産業もコスト削減や効率化の点で恩恵を受けた。
情報ネットワークが整備されていなかった分野では、
8割のサービスはコストに合わず、2割で収益を上げていた。
情報網が整備されると、採算がとれなかった8割に商機が生まれる。
インターネットが起こした現象。
―これからどんなネットワークができるのか?
どこでもコンピューターの情報処理能力が使えるユビキタスネットワーク。
ロボットとか微小な装置がネットワークにつながることでも、
世の中は変わるだろう。
自動車はガソリンから電気になり、
10年後にはエンジンがなくなってもおかしくない。
輸送システムのパラダイムシフトが起これば、車椅子や義手、義足を
作る会社が化けるかもしれない。
義足にタイヤをつければ、車になる。
移動しなくても、電子メールでコミュニケーションがとれるようになったように、
人々の動線も変わる。
―世の中が変わるのですね。
車同士がコミュニケーションを始めると、人は運転しなくて済む。
機械が運転すれば、ものすごく速くなる。
面白いアイデアを、トヨタ自動車が持っている。
1人乗りの車ができ、椅子に座っているとスーっとやってきて、
窓から外に飛んでいって、目的地で下ろすということが可能になるかも。
移動時間が減り、車の中で仕事をしたりワインを飲んだりできる。
脳の動きも、かなり把握され始めた。
手を動かすとき、どの神経が動いているということがわかれば、
脳の動きから手の動きを遠隔で再現できる。
最終的には、脳の動きをすべてコピーし、脳自体をネットワークに
つないでしまうことが目標になるが、
まずは周辺のデバイス、手足や目や耳が外部に出て行くだろう。
究極的には、人が動かなくていい仕組みになるかもしれない。
人やモノの移動に伴う二酸化炭素(CO2)排出量が莫大だけに、
環境問題の解決にも合致する。
―柔軟な発想はどこで生まれるのか?
かつては企業の中央研究所で、活発に自由な発想や研究がなされていた。
企業も国際競争の中で、研究者を自由に遊ばせておく余裕が
乏しくなっており、その役割は大学が担うようになっている。
<江崎浩氏 略歴>
1963年生まれ。85年九州大工卒、東芝などを経て、
現在は東大大学院情報理工学系研究科教授。
10年前からネット上のアドレスの枯渇問題を指摘、
IPv6の普及に向け活動。
http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2005022082008
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