(読売 9月19日)
学校の情報化を進めるには、校長のリーダーシップが必要。
机の上には、高々と積まれた書類の山。
他人の視線を遮るかのように“壁”を築きながら、
教員たちは自分の仕事に没頭。
岐阜市立本荘小学校の井上志朗校長(59)が今年4月、
赴任初日に目にした職員室の光景。
「あなたは、前の席の先生が嫌いなんですか」。
そう聞きながら、「教育の基本は相手の顔を見ること」と説いた。
県教育委員会で、情報教育担当指導主事を務めた後、
小中学校の校長、副校長として11年間、
学校のICT(情報通信技術)化に取りくんできた。
情報化の中心的役割を担う学校CIOという言葉が認知される前から、
ICT活用の成否は校長のリーダーシップがカギだと確信。
「トップが頭ごなしに指示するピラミッド型組織では、うまくいかない。
校長が教員と同じ高さに下り、それぞれの役割を担うネットワーク型の組織に
ならなければならない」と井上校長は強調。
「年配の教員はパソコンに向かえ、若い教員は子供に向かえ」
を合言葉に、情報化の改革に乗り出した。
「年配の先生は、長い教員生活で引き出しがたくさんでき過ぎているから、
ICTで整理するのが効果的。
一方、若い先生はパソコンを操作できても、引き出しが少ない」
校務分掌を見直し、担任は学級経営と教科指導以外は、
なるべく学校全体の校務にかかわらないようにした。
職員会議の資料もなくし、ペーパーレス化を進めた。
「与えられるまで待つのではなく、自分から主体的に情報を取りに行くように、
教員の意識が変わった」
ホームセンターでプラスチックダンボールを買い、
表面にビニールシートを張ってスクリーンを自作。
1枚約600円の予算で、資料や児童のノートを投影する授業が
全クラスで可能になった。
「予算がなければ知恵を出せ」が持論。
「これまでは、拡大したカラーコピーを張り合わせて資料を作っていたが、
そうした労力が減った。その分、教科指導に時間を割けるようになった」
と春日井恵子教諭(40)。
授業中の児童の顔つきも変わった。
象徴的なのが、算数の終わり10~15分間に取り入れた
市販の学習ソフト「iプリント」による個別学習。
テキストの設問ごとに、定着・標準・発展問題と書かれたバーコードが
記されており、図書室にあるパソコンのリーダーで読み込むと、
自分の名前が記されたプリントが出力。
休み時間にも列が途切れず、みな黙々と問題に取り組んでいる。
「ドリルはすぐ飽きるけれど、難しい問題や、やさしい問題を
自分で選べるのは新鮮な感じがする」と6年の男児。
個々の学力に合わせた細やかな繰り返し学習が、手軽にできるようになった。
学校の情報化が進めば、子供の学びも、教師の姿勢も主体的になる。
井上校長はそのことを実感。
◆学校CIO
学校の情報化を進める際の統括責任者(チーフ・インフォメーション・オフィサー)。
文部科学省が設置した「学校のICT化のサポート体制の在り方に関する検討会」
が7月にまとめた報告書で、校長、副校長・教頭が任に当たるよう提言。
教育委員会に置く教育CIOと連携し、ICT化の確実な実行を目指す。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080919-OYT8T00223.htm
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