(読売 9月26日)
インターネットで、地域の魅力を発信する授業がある。
「店の奥行きまで撮れていて、雰囲気が良く出ている」、
「素材が自慢の定食屋なら、どんな素材を使っているのか具体的に書かないと」
岡山県立津山商業高校で、パソコンの画面に向き合う生徒たちに、
岡本誠講師(26)がこんな言葉をかける。
高校生が、地元商店街をネットで紹介する仮想商店街
「しあわせ発見つやまネット」の制作が、
和気あいあいとした雰囲気の中で行われていた。
3年生の選択科目「ネットワーク概論」。
履修した生徒19人は、サイトのレイアウトなど技術的な面を担当するスキル班と、
実際に商店街を歩き回って「ネタ」を持ち帰る取材班に分かれている。
取材班は、商店主らに「店の売りもの」を取材し、
デジタルカメラで店や商品の写真を撮る。
スキル班は、ウェブ上のページを作って情報発信するまでが仕事。
今年が5年目の取り組みで、すでに先輩たちが作った仮想商店街がある。
ただ、ここ数年で閉店した店などもあり、今年は情報を一新することに。
同校は、全教室にパソコンを配備、「ネットビジネス」も授業に取り入れるなど、
情報教育に力を入れている。
この授業で学んでほしいのが、「コミュニケーション力」と「情報を活用する力」。
岡本講師は、「どちらも社会に出て行く生徒には欠かせない」
取材に向かう前、緊張で表情が暗い生徒が多いが、戻ってくると、
「2時間も話し込んじゃった」、「お菓子をもらった」などと、パッと明るくなる。
「社会で働く人たちと話が出来て、自信につながっている」と岡本さん。
たくさんの情報を持ち帰っても、
ネット上で分かりやすく公開するのは簡単ではない。
営業時間や連絡先など、間違えれば店に迷惑をかける情報もある上、
多くの情報を詰め込み過ぎても、見づらくなる。
3年生の長石遼太さん(18)は、
「情報を分かりやすく、見やすく提供することに悪戦苦闘しています」
1990年代に入って大型の郊外店の出現とともに、
市内の商店街も徐々に活気を失った。
シャッターがおりたままの店も多い。
でも、生徒たちは足を運んだからこそ得られる「生の声」を聞き、
新しい商店街の魅力に触れている。
3年生の山本倫也さん(17)は、婦人服店を訪れた時、
男性店員からこう言われた。
「百貨店のような大きな店では、高齢者はどこに目当ての商品があるのか
すぐに分からない。うちのような小さな店も必要なんですよ」。
山本さんの商店街への見方が変わった。
高校生の活動は、地元の人たちの活力になっているようだ。
喫茶店を経営する金田勧さん(50)は、
「店を宣伝してくれるのはありがたいが、
高校生が来てくれるだけで街に活気が出る」と笑う。
ネットを通じて、生徒と商店街の人たちのきずなは深まっている。
◆高校の情報教育
2003年から学習指導要領に基づいて、「情報」が必修教科に。
「情報A」、「情報B」、「情報C」に分かれ、
コンピューターや情報通信ネットワークなどを活用した実習を
積極的に取り入れている。
商業科などの専門教育では、ソフトウエアの開発やプログラミングなど、
より高度な技術の習得を図ることに。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080926-OYT8T00216.htm
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