(読売 9月25日)
すべての市立小中学校に、電子黒板を導入した自治体がある。
黒板の真ん中にはり付けられた電子黒板に、竹取物語の冒頭が表示。
茨城県つくば市立吾妻中学校1年生の国語。
9月11日は、初めて古典に触れる授業だった。
電子黒板は、パソコンやプロジェクターとつながっており、
パソコン画面がプロジェクターを通して電子黒板上に投影。
電子黒板には、電子ペンで書き込みも可能。
「じゃあ、画面を見ながら読んでみて」と、教務主任の綿引良文教諭(47)が
暗唱を指示する。
最初は全文が表示されていたが、綿引教諭が電子黒板の画面を
電子ペンでぽんと押すと、一部が空白になる。
生徒たちはそれでも一斉に、「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり……」
と読み進める。
綿引教諭が、空白部分がさらに増えた画面を見せると、つかえてしまう。
「じゃあ、もう一度前に戻ろうか」
こんな繰り返しの中で、生徒たちは、授業の終わりには冒頭をそらんじていた。
電子黒板の導入前、綿引教諭は竹取物語を板書したうえで、
黒板消しで一部を消しながら暗唱させていた。
「つかえても、板書だと後戻りができない。
黒板に向かっている時間は、生徒に背中を向けてしまう」。
模造紙に、冒頭部分を書いて準備していた時もあったが、
1年生の国語は4クラス持っていたので、準備が大変だ。
「今は、生徒に向かう時間が増え、その間に誰がどのくらい覚えたか、
子供の様子が把握できる」
同市が、電子黒板を試験的に導入したのは2004年度。
使ってみた教師からは、「これはいい」と評判に。
ただ、1台約30万~150万円する高価な備品。
市長や教育長、調達を担当する市教委職員にも研究授業を見せ、
必要性を理解してもらった。
順次、導入が進み、現在は小学校37校と中学校14校の全校で、
少なくとも1校あたり1台が配備。
全市で電子黒板が導入されることで、教材やノウハウの共有も進んでいる。
同市では、ロケットの打ち上げ場面や、キリスト教伝来を伝えるビデオ映像、
世界各国の穀物輸入量を示すグラフなど、
理科と社会のデジタル資料を一括購入。
各学校のサーバーに置いてあり、各教師は電子黒板での教材づくりに
自由に利用することができる。
電子黒板も含めたICT(情報通信技術)機器の使い方についての研修や、
情報教育担当の指導主事の学校訪問、
「市ICT教育活用実践事例集」を作成することによって、
市全体で効果的な使い方を学びあっている。
杉田慶也指導主事は、「全市で整備することによって、
使い方についても全市的に話ができ、授業の質の向上につながる。
電子黒板は、すべての先生に共通して、
授業改善に役立てることができる道具」と位置づけ。
ただの電脳紙芝居に終わらせないためには、
使う側の努力が必要なことは言うまでもない。
◆電子黒板
電子情報ボードとも呼ばれる。
壁にはり付ける「ユニット型」、センサーを内蔵したホワイトボードに
プロジェクターで投影する「ボード型」、
ディスプレーを直接操作する「一体型」がある。
公立学校での導入台数は、2005年度末で7832台。
現在集計中の昨年度の台数は1万台は超える見込みで、年々増加。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080925-OYT8T00250.htm
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