2008年9月29日月曜日

森を減らさない(下)緑守る仕組み 利害の壁

(読売 9月11日)

アクラ会議の期間中、環境NGO・WWFインターナショナル
報道陣向けに主催したツアーに加わり、
カクム国立公園の隣のアフィアソ村を訪れた。

歓迎式の後、長老たちに「質問をどうぞ」と促され、
「国立公園の隣に暮らすことで、恩恵はありますか」と聞いたとたん、騒ぎに。

長老たちが次々に発言し、これを受けて記者席の後ろにいた
国立公園事務所長が立ち上がって猛然と演説し、
それが火に油の勢いで反論を招き……という状態。

ようやく通訳が入って、「便益や恩恵はいっさいない」が、村の見解。
若者も立ち上がり、「昔は森で(食用ネズミなど)生活の糧を
とることができたのに、国立公園になって禁止された」と抗議。

村を訪れる前、記者たちに「2年前に地元と便益を共有する政策ができた」と
胸を張った公園事務所長は、
「利害関係者が多く、配分調整に手間取っている」と、ばつが悪そう。

アクラ会議では、「REDD(途上国における森林減少に由来する排出の削減)」
のための国際的な仕組み作りをめぐり、議論が行われた。

REDDは、3年前、カナダ・モントリオールで開かれた
国連気候変動枠組み条約第11回締約国会議で、
コスタリカとパプアニューギニアが共同提案。
森林減少・劣化を食い止めた途上国の地元になんらかの利益が
もたらされる仕組みを作ろう、と呼びかけた。

例えば、ある国が森林を保護区にしたり伐採を禁止したりした場合、
何もしなかった場合に比べ、保全された森林の二酸化炭素吸収量を計算。
排出量取引で売買されるクレジット(排出削減分)が得られたり、
基金から一定の資金提供を受けたりできる、という具合。

しかし、アクラ会議ではワークショップで意見が交わされたにすぎず、
具体的な仕組みや方法をめぐる議論には至っていない。

サイドイベントでは、「森林減少を抑える方法ではなく、
森林保全をすれば入ってくる金のことにばかり注目が集まっている」
(コンゴ民主共和国のNGO)など、仕組み作りへの疑念も噴きだした。

一方、環境NGOのなかには、
「先住民を含む地元住民に便益をもたらすのが、
最も効果的に森林を守る方法という認識は広まりつつある」
(グリーンピース・インターナショナル)と楽観論もにじむ。

住民参加型森林経営や周辺地域での農法の改善――
開発援助やNGO活動により、森を減らさない工夫はすでに始まっている。
その基本は住民の生計向上であり、金も知恵も必要。

ふとアフィアソ村での激論を思いだした。
便益をどうもたらし、共有するのか。
難題のハードルはいくつもある。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20080911-OYT8T00398.htm

0 件のコメント: