(読売 9月24日)
論理的思考を養うため、電子掲示板を活用する教師がいる。
キーボードをたたく軽快な音が響き、生徒がパソコンの掲示板に書き込んだ
意見が、電子黒板に映し出されていく。
「奈良時代のごはん、貴族12品、庶民4品、品の数3倍」、
「疑問、なぜ、そこまで貴族と庶民の暮らしに差が出るのか??」、
「貴族は農民が、がんばって作ったものをもらって生きている(怒)」……。
新潟県長岡市立青葉台中学校のコンピューター室で行われた
1年生社会科の授業。
「必ず名前を書くように」との末武久人教諭(49)の注意にうなずきながら、
生徒たちは、「奈良時代の人々の暮らし」について調べたことを書き込んだ。
「挙手で発表すると、いつも決まった3人くらいの意見しか聞けない。
掲示板は、瞬時にみんなの意見が分かり、
こういう考え方もあるのかと勉強になる」と中村泉穂さん(12)。
末武教諭が授業に電子掲示板を導入したのは、5年前。
なかなか手を挙げて発言しない子の考えが分かるようになった。
様々な意見にふれながら、友人とだぶらない自分だけの
個性的な主張をまとめ上げる作業が、物事を論理的に考える力を
つけるのにうってつけだと考えた。
「授業後にじっくりとログ(記録)を分析すると、生徒の思考過程が
手に取るように分かる。課題の提示の仕方に問題がなかったかなど、
自分の授業の課題も見えてくるようになった」
当初は、活発な議論を期待して自由に書き込ませた結果、
友人の名を勝手に使う子や、他人の発言をストレートに
攻撃する意見などが相次いだ。
そんな体験をふまえ、必ず名前を記して書き込むルールを設けた。
ネット社会で発言する意味を考えさせる狙いも、もちろんある。
2003年には、教師海外研修で2週間、アフリカのガーナで
研さんを積んだ経験を持つ。
教師として、先進国と途上国の経済格差を考える開発教育に力を入れ、
タイやエルサルバドルの子供とビデオ会議で意見を交換するなど、
ICT(情報通信技術)を積極的に活用。
「ビデオ会議は、相手の表情が見えるため、生徒の意欲がかき立てられる。
アフガニスタンに毛布を送ったり、タイの学校に鉛筆を送ったりするなど、
子供たちが主体的に活動するようになった」と末武教諭。
ICTを使うと、教師が子供と共に学び合う双方向の授業になると実感。
途上国の現状をより身近に感じてもらうため、自分が海外に行き、
現地をビデオカメラで中継しながらビデオ会議で授業をするという夢も描く。
ICTの活用で、以前は考えられなかった授業の実現に、
手が届こうとしている。
◆教師海外研修
独立行政法人国際協力機構(JICA)が行っているプログラム。
国際理解や開発教育に興味を持つ小中高の教員が、
開発途上国の教育現場を見学しながら約10日間の研修を受ける。
帰国後、研修を生かした授業を行い、実践報告書をまとめる。
今年度は153人が、アジア・オセアニア、アフリカ・中東、
中南米の計16か国に派遣。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080924-OYT8T00219.htm
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