(日経ヘルス 2008/08/18)
脳の認知機能の改善やメタボリックシンドロームに対する効果で、
最近注目されている「アスタキサンチン」。
アスタキサンチンを、工業的に安全かつ安定的に製造するヤマハ発動機は、
世界でもっとも高齢化社会が進行する日本の現状および将来を見据え、
ライフサイエンス事業を展開。
キーワードは,“アンチエイジング”。
ライフサイエンス事業推進部研究開発グループの
石倉正治グループリーダーに、研究の経緯や今後の開発の展望を聞いた。
◆はじまりは、地球環境問題への取り組みから
アスタキサンチンは、サケやイクラ、エビ、オキアミに多く含まれる
天然の色素成分で、海洋性のカロテノイドの一種。
強力な抗酸化作用を持つ。
自然界では、サケなどのエサとなる藻類に多く含まれている。
バイクやボートなどの製造を行うメーカーであるヤマハ発動機が、
畑違いの健康食品素材「アスタキサンチン」の製造を始めたのは、
地球環境問題への取り組みの一環。
「バイクやボートを動かすと、二酸化炭素(CO2)を排出。
企業は、地球温暖化対策としてのCO2削減が求められる。
排出するCO2を固定する方法として、植樹などがあるが、
ヤマハ発動機が持っている技術を生かしながら、
植物の光合成を活用する方法がないかと模索したのが、
培養した微細藻類の光合成によるCO2の固定。
微細藻類を使えば、植樹の十数倍のCO2を固定できると試算」
研究の結果、藻類を大量培養することに成功。
エビやカニの幼生時のエサとなる微細藻類「キートセラス藻」を供給。
その後、藻類が持つ機能性成分の活用に研究のテーマを拡大。
最初の素材が、アスタキサンチン。
◆“植物”を使って工業的に生産純度高く、安定供給
「アスタキサンチンを作り出すのは、“ヘマトコッカス藻”という藻。
通常は緑色だが、生息の条件によってアスタキサンチンを生成して赤くなる。
ヘマトコッカス藻が、より多くのアスタキサンチンを
作り出す環境条件を研究。
藻の培養装置の中のCO2濃度や光の照射量、
培養液中のミネラル量やpHなどをコントロールすることで、
アスタキサンチンをより多く含むヘマトコッカス藻の大量培養に成功」
その結果、生産量が天候に左右されがちだった“植物”を、
工業的に安定生産することができる。
同社で生成されたアスタキサンチンは、純度を高くすることができる。
純度は、97%以上。
屋内のクリーンルームに設置された培養装置で作り出され、
カビやバクテリアなどの混入による汚染(コンタミネーション)を防げる。
◆アンチエイジング素材として機能性を追究
「研究は、大量生産技術から素材の健康に対する研究開発へ」。
アスタキサンチンは、強力な抗酸化物質。
目や肌、生活習慣病への効果が研究されていた。
同社では、「脳への作用」と「メタボリックシンドロームへの作用」に
関する研究に力を入れた。
「アスタキサンチンは、炎症や酸化を抑える成分として、
老化や疾患の発生プロセスの上流で働く。
その特性を生かせば、エイジングによる症状や不調を改善する素材として
機能すると考え、アンチエイジング分野での機能性研究に力を入れている。
高齢化社会の進展に伴い、生活習慣病の予防や脳機能の維持・改善に
対するニーズは、急速に高まることが予測。
特に、脳の認知機能に関する研究は、バイクなどの製造メーカーとして、
安全な運転をしてもらうかという観点からも社会的意義が大きい。
最新の研究では、アスタキサンチンがパーキンソン病の改善効果を
期待できるというデータも。
“脳のアンチエイジング”と呼べる分野において研究を進め、
アスタキサンチンのアンチエイジングパワーをさらに追究していきたい」
逼迫する医療保険財政、現実に起こりつつある労働力不足、
いつまでも健康で美しくありたいという
人間本来が持つ高いQOLや若さへの憧憬。
これら社会環境および消費者のニーズに応えるテーマとして、
アンチエイジングは最重要テーマ。
本格的に立ち上がることが予想されるアンチエイジング市場。
その最右翼の健康成分として、アスタキサンチンに期待。
http://sangyo.jp/foodhealth/article/20080818.html
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