2008年9月6日土曜日

教師力08(4)部活動で感動体験を

(読売 8月29日)

部活動の活性化について、研究を始めた教師がいる。

宮城県栗原市立栗駒中学校の武道館相撲場。
まわしを締めた10人の部員が、総監督の伊藤和裕教諭(39)相手に
ぶつかり稽古を始めた。「よし、こいっ」。
自らもまわしを締め、生徒を受け止める。
ぐいぐい頭を押しつける生徒のパワーに、思わず歯を食いしばった。

6月の宮城内陸地震で、十分な練習ができないまま臨んだ県大会でさえ、
3年生4人が上位を独占した強豪校。
伊藤教諭の指示を待たずに、黙々と練習メニューをこなしていく部員を眺め、
伊藤教諭は、「苦しくても逃げ出さない。本当に偉いと思います」

県教委からの派遣命令を受け、宮城教育大教職大学院に進学。
現在は週に1度、車で片道1時間半かけて
同中相撲部を訪れ、部員と汗を流す。

教員になって18年、合宿や大会などで、週末にゆっくり休んだ記憶がない。
担当の社会科でも、「教えたいことが次から次へと出てくる。
とにかくいつも、時間が足りなかった」。
部員の千葉大介君(15)は、「自分にも僕らにも厳しい先生。
大学院に行くと聞いた時は、本当に寂しかった」

同中が母校で、中学、高校と相撲部だった。
選手として大きな結果を残した訳ではないが、
「部活でしか得られないうれしさや悔しさを体験できた」。
教え子にも感動を味わわせたいと願ってきた。

5年前、県中学校体育連盟相撲専門部の委員長に就任。
保護者や知人から、「通っている中学校に相撲部はないが、
相撲大会に出場したいという生徒がいる」と聞けば、
出場できるよう便宜を図ってほしいと学校側に頼んで回った。

だが、反応は冷たかった。
「出せない」、「出してやりたいが、引率する教師がいない」。
後ろ向きな教員の言葉に、「なんで生徒の気持ちに応えてくれないんだ」

大勢の部員が必要なサッカー部や野球部が、部員不足で次々と廃部に。
バレーボール部、バスケットボール部など、比較的人数が少なくても
成り立つ競技でさえ、「指導が大変」、「将来部員が増える見込みがない」
などの理由で休部する。
自分の専門外の部の顧問になった教員が、
部活にほとんど出てこないケースも。
「もっと意欲を持って、部活に臨まなければならないのは教員だ」。
部活の意義をしっかり説明できない自分自身にも、悔しさが募った。

大学院での研究には、「部活の活性化」を選んだ。
部活に関する研究は乏しく、大学院の指導教授とともに探したが、
過去の研究文献は数冊しかない。
それでも、「部活をもっと多くの生徒に経験してほしい」との信念で、
新たな研究に挑む。
「顧問に、専門的な技術は必要ない。
子供たちをどうまとめ、どうやって一つの目標に向かわせるかの指導が重要
という主張を柱に、指導プログラムを作るのが夢だ。

◆部活動の位置づけ

これまでの中学校の学習指導要領では、教育課程外とされてきたが、
文部科学省が2008年3月に告示した新指導要領では、
初めて「学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、
学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるように留意すること」と明記。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080829-OYT8T00232.htm

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