(日経 8月24日)
生駒俊明・JST研究開発戦略センター長
―科学技術の開発で、これから重視すべきテーマは。
物質を対象とした科学は、20世紀に基盤研究がほとんど終わった。
これからは新しい発見を求めるより、社会のための科学技術として
社会のニーズが強い分野が伸びる。
環境やエネルギーが重要な切り口となるだろう。
その際、全体を見渡した「構想設計」が大切になる。
例えば、街づくりで考えれば、個別の交通機関のエネルギー効率を
改善するだけでなく、都市交通システムをどう描くかという
全体を包含したデザインが重要。
技術は従属的になり、既存技術を使って全く新しいものを作る。
これが構想設計だ。
米アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」がよい例。
一般的に、日本企業はこうした考え方が得意ではない。
日本では例外的に、任天堂が技術至上主義に陥らずうまい。
―構想設計が弱い日本企業が生き残るには、どんな方法があるか?
逆説的だが、多くの日本企業は構想設計に依存しない、
目の前の需要に向かって改良を重ねる分野が強い。
その点で、素材や部品は手堅い。
高効率が求められる電源も、素材が絡みチャンスが大きい。
工作機械も産業としてしっかりしている。
希少金属を使わなかったり、環境を考慮したりといった制約を
どううまく生かすかが重要。
―どんな分野なら新発見が期待できるか?
ライフサイエンスは、研究が始まったばかり。
何が起きるか分からない。
医療や食料の効率生産など、実現までは時間がかかるが
大きな分野が控えている。
例えば農業では、求められる味に応じて製品を作り、
土壌や味をセンサーで管理する手法が広がる。
新薬開発は、日本では難しい。
国の仕組みで治験に時間がかかりすぎ、望みが薄い。
全地球測位システム(GPS)やPOS(販売時点情報管理)といった
IT(情報技術)により、サービス業の生産性向上も進む。
技術を裏付けにしたアイデアにより、サービス業では
新規市場が生まれる機会が多い。
<生駒俊明氏 略歴>
1941年生まれ。東京大学教授として半導体を研究。
産学連携の実践として、94年に日本テキサス・インスツルメンツに移り、
97年に社長。
退任後、現在は日立金属の社外取締役やキヤノンの顧問を務める。
企業経営や技術革新についての発言も多い。
http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MS3Z2100W%2022082008
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