(日経 8月24日)
石黒浩・大阪大教授
―人間そっくりのアンドロイドロボットを研究。その狙いは?
人間の脳みそは、人間に反応しやすくできている。
例えば、ライターには話しかけにくいでしょう。
人間型ロボットを作るなら、用途はコミュニケーションしかない。
どのようなインターフェースが必要なのか、
どこまで人間の形からそぎ落としてもいいのか。
姿形は機能のはずなのに、デザインの理屈がないのはおかしい。
これまで脳がロボットをどう認識するかといった研究が全くなされず、
製作者のポリシーでデザインが決まっていた。
状況を限定すれば、既に(施設の)案内などに
アンドロイドが使えるようになっている。
人間と接するうえで、外観が重要となり、
研究の基盤としてアンドロイドを開発。
―技術面での課題は?
開発途上の要素技術は数多くある。
人間の皮膚に近づけるため、伸び縮みする皮膚センサーを作っている。
有機ELは、薄く曲がるが、伸びたりねじれたりはしない。
シリコンゴムに、伸縮する配線を組み合わせる。
ゴムも特殊な素材を用いるので、大手メーカーではなく、
多品種少量生産ができる地元企業と組んでいる。
人間に近い滑らかな腕関節をつくるため、ギアやモーターではなく、
ピストン運動をするアクチュエーターを開発。
三菱重工業と取り組んでいるが、まだ価格が非常に高い。
人間らしいゆらぎを生物から学んだり、細かな動きを制御できる
コンピューターを小さくしたり。
今のロボットの多くは、工場にあるロボットの延長にとどまっており、
人間型ロボットを動かすには極めて多くの技術が必要。
―人間型ロボットは社会にどう導入されるか?
アニメなどの影響から、日本ではロボットは人間の形として実現する
イメージが生まれている。
その印象が強すぎで実感しにくいが、「話す」カーナビや自動販売機など
我々が使っているものも一種のロボットで、日々進化。
人間に似たロボットが、身の回りにあってもおかしくはない。
新しい技術が生まれれば、社会も変わる。
携帯電話もそうだった。
いまの社会からだけでは、ロボットがどのように普及するかは考えられない。
ロボットが生活に浸透する際の危険性を懸念する人もいるが、
普及は、利便性とのトレードオフだろう。
自動車も、事故を起こす危険は高いが、利便性の方が大きいから広がった。
そのときには、社会も変化しているだろう。
<石黒浩氏 略歴>
1963年生まれ。山梨大工卒、大阪大で博士号を取得。
京都大助教授などを経て2003年より現職。
視覚認識の研究を皮切りに、外見が人間にそっくりなアンドロイドロボット研究の
第一人者に。産学協同のロボットベンチャー「ヴイストン」の技術顧問も務める。
http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2004022082008
0 件のコメント:
コメントを投稿