(nature 2008年8月21日号Vol.454 No7207 / P.1000-1004)
褐色脂肪細胞形成とエネルギー消費における骨形成タンパク質7の新しい役割
脂肪組織は、エネルギー収支の調節に中心的役割を果たしている。
哺乳類では、機能の異なる2種類の脂肪が存在。
1つは、トリグリセリドの主要な貯蔵場所である白色脂肪組織、
もう1つは、エネルギー消費を専門とする褐色脂肪組織で、
肥満を抑える働きがある。
白色脂肪組織、褐色脂肪組織の発生運命や機能を指定する
因子類については、ほとんど解明されていない。
今回我々は、骨形成タンパク質(BMP)ファミリーに属する一部のBMPは
白色脂肪細胞の分化を助けるが、
BMP7は単独で褐色脂肪細胞前駆体の分化を促進することを明らかにする。
この分化促進は、通常必要な誘導ホルモン混合物がなくても起こる。
BMP7は、褐色脂肪細胞形成の全過程を活性化する。
褐色脂肪への運命を決める初期調節因子
PRDM16(PR-domain-containing 16)やPGC-1α
(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-γ(PPARγ)コアクチベーター-1α)
の誘導、褐色脂肪識別マーカーである脱共役タンパク質1(UCP1)、
脂肪形成転写因子PPARγ、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)
の発現増加、p38マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ
(Mapk14)とPGC-1に依存した経路を介したミトコンドリア生合成誘導
などが含まれる。
BMP7は、間葉系前駆細胞の褐色脂肪細胞系列への拘束の引き金となり、
これらの細胞をヌードマウスに移植すると、褐色脂肪細胞を主に含む
脂肪組織が発生する。
Bmp7ノックアウト胚は、褐色脂肪が著しく少なくなり、UCP1はほぼ完全に欠失。
アデノウイルスの媒介によってマウスでBMP7を発現させると、
白色脂肪の量は増えないが、褐色脂肪の量が大幅に増加し、
エネルギー消費が増えて、体重増加が抑えられる。
これらのデータから、BMP7が褐色脂肪細胞の分化と熱産生の促進に
重要な役割を担っていることが、in vivo、in vitroで明らかに。
これは、肥満の新しい治療方法につながる可能性がある。
[原文]New role of bone morphogenetic protein 7 in brown adipogenesis and energy expenditure
http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200808/nature/7207/02.html
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