(読売 8月23日)
地方の小規模私大は、きめ細かい教育の成果を示す。
約200人の高校生や保護者が並ぶ説明会会場に突然、
トランペットの音色が響き渡った。
共愛学園前橋国際大学のオープンキャンパス。
楽器はどこにも見えない。
司会役の同大4年、手塚達哉さん(21)の口まね。
曲は、自分の道を示してくれた神への感謝を歌う黒人霊歌
「アメージンググレース」。
説明会では、国際社会学部の英語、国際、情報・経営、心理・人間文化、
児童教育の5コースの学生たちが授業や教員、学生生活の魅力を発表。
そろって口にするのは、「大変だけど、力がついた」。
手塚さん自身も、自らの学生生活を振り返った。
何となく入った英語コースで、教員に励まされ、多くの課題と向き合ううち、
英語が面白くなっていった。
「素晴らしい4年間でした」。
就職活動の真っ最中だが、オープンキャンパスには出ると決めていた。
“トランペット演奏”は、感謝の気持ちを込めた即興。
来場者の大きな拍手に、「目の前の学生の姿こそが成果だ」と
大森昭生学部長(39)は笑顔を浮かべた。
共愛学園は120年前、新島襄らの出資で創設、女学校を開いた。
20年前に開設した短大を、4年制に改組したのは9年前。
学部は一つだけで、収容定員は840人。
大学としての歴史は浅く、知名度も低い。交通の便も良くない。
入学した一期生に、「入学してよかったか」を尋ねると、
「そう思う」は35%。
しかし、卒業時は60%に。今春の卒業生では、86%まで上昇。
「入学して力がついたか」にも今春は、80%が「そう思う」。
高い満足度を支えるのは、個々の学生へのきめ細かい教育。
06年には、群馬県の大学で、いち早く大学基準協会の適合認定を
受けたのも、決め手はそこ。
377ある授業のうち、50人以下のクラスが9割を占め、
100人超は1クラスだけ。
全授業で出欠を取り、2回続けて欠席すると、
大学から出席を促す手紙が自宅に届く。
教員の研究室棟には、質問に来る学生の姿が絶えない。
長年の厳しい経営のもと、定員を上回る志願者がありながら、
入学者選抜で学生の質を守ってきた。
「自分たちの教育力を超えた学生を受け入れたら、責任が果たせない」
(大森さん)と心配したため。
こうした姿勢への評価が浸透し、06年度に開学以来初めて学部の定員を満たした。
こうした現状や課題は、オープンキャンパスでも、学生や教員から説明。
福島県から両親と参加した高校生は、
「ホームページではわからない大学の姿を見せてもらった。真剣に考えたい」。
同大のモットーは、「大変だけど実力のつく大学」。
今は学生の8割弱が県内出身者だが、
他県から多くの学生が集まる日は、そう遠くないもしれない。
◆大学基準協会
大学評価・学位授与機構、日本高等教育評価機構とともに、
4年制大学の認証評価機関の一つ。
学校教育法は、国公私立の全大学に対し、
7年以内ごとに評価を受けることを義務づけ。
評価機関は、現地視察も踏まえて、学生が安心して大学生活を送れるか、
学費に見合った結果が得られるかを審査。
「適合」、「不適合」、「保留」判定を出す。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080823-OYT8T00218.htm
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