(日経 8月24日)
西岡秀三・国立環境研究所特別客員研究員
―環境面からみた今後の技術開発の方向性は。
政府の環境エネルギー技術の革新計画では、
核融合や宇宙太陽光発電を革新的技術として掲げている。
本当に新しい技術が実現するには長い時間がかかる。
こうした技術を追求するのはもちろん大切で、
二酸化炭素(CO2)の排出量削減など目の前に迫るテーマを考えると、
現存する技術をうまく組み合わせ、システム構成を変える発想が重要。
例えば、自動車ならすでに三菱自動車などの電気自動車が動き出している。
高機能電池の開発に伴い、ガソリンと電気によるハイブリッド車が
主力となる期間は短くなりそう。
CO2削減の観点では、レンタカーやカーシェアリングといった
システムの普及も大切。
モノだけでなく、サービスの開発にも取り組む企業が
事業を伸ばす可能性がある。
既存のIT(情報技術)とバス運行を組み合わせ、乗客がいる路線や
停留所に迅速にバスを配車する「オンデマンドバス」サービスなども、
IT・運輸事業者ともにビジネスチャンス。
―エネルギー消費量を減らす発想こそが、利益につながるのか?
エネルギーをいくらでも使ってよい、という考え方は変えざるを得ない。
そのために使える技術は既にある。
例えば、価格はまだ高いが、自然エネルギーを生かす住宅建設が
動き出している。
電力需要は減少するが、電力会社も家庭用給湯機「エコキュート」のような
高効率機器を製品化するなど、新事業に乗り出している。
社会が変わる方向へ、早く動き出した企業にカネは流れる。
燃料価格の高騰も、結果として「低炭素社会」の流れを後押し。
欧州では、フランスが原子力、ドイツが自然エネルギーへと構造転換が進む。
日本は、国全体としての方向はいまだないが、世界競争に直面している
自動車や電機産業など民間レベルでは既に動いている。
エネルギー効率の高い電気自動車や電気機器で、
世界に通用する標準化を目指す。
内需が中心の紙・パルプやセメント、鉄鋼などは
取り組みが遅れているように感じる。
<西岡秀三氏 略歴>
1939年生まれ。東京大学大学院数物系研究科博士課程修了後、
旭化成に勤務。国立環境研究所に移り、東京工業大学、慶応大学で
それぞれ教授を務める。専門は環境システム学。
現在、環境省の「脱温暖化2050プロジェクト」で研究リーダーを務める。
http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MS3Z2100U%2022082008
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