(読売 7月11日)
授業に、副教材を上手に取り込ませる工夫がある。
千葉県船橋市立飯山満中学校で5月に開かれた、
市内の中学校理科教員の研究会では、
約20人がA4判の野草カードを手に校庭を見て回った。
「オランダミミナグサはハコベと似ていますが、
全体に毛が生えています。ハコベはつるつるです」。
カードの作成者、千葉県立中央博物館の上席研究員、
斎木健一さん(46)が説明。
カードで紹介された野草は、21種類しかない。
日当たりと水はけがよく、年に数回は雑草として刈り取られてしまう
校庭の野草は、日本列島の北と南の端以外、あまり違いがなく、
種類も少ない。
カードの野草は、都会でも地方でも大半が見つかる。
教員にとって、春に多い自然観察は難題の一つ。
新クラスを受け持ってから時間がなく、子供の質問に答えられないと
恥ずかしいという思いがある。
図鑑は種類が多すぎて、植物の分類などを知らなければ
正解にたどりつけない。
斎木さんは、博物館で植物担当だが、専門は化石。
市民の自然観察に同行した際、「この花は何?」という
素朴な質問に答えられなかった苦い経験を持つ。
教員にも同じ悩みがあると知り、野草カードという副教材作りを思い立った。
カードは、県内の希望する教員に配布しているほか、
博物館のホームページで作り方や利用法を解説。
博物館では、季節や葉の形、特徴から約200種類の野草を
検索できるデータベースも作った。
新学習指導要領は、小学3年で「身近な自然の観察」を加えるなど、
観察や日常生活と関連した理科を重視。
斎木さんは、「全国の教員が、自信を持って自然観察授業が
できるようになってほしい」と願う。
地域密着型の「副教本」を独自に開発したのは、愛知県犬山市。
5年前から小3~小6の各学年で作っている「理科だいすき」。
現行の指導要領で、理科の内容が大幅に減らされたことに、
市教委や市内の理科教員らが抱いた危機感が原動力に。
「犬山の地層」、「木曽川へ行こう」など、地元の自然を学び、
市内の日本モンキーセンターでサルを観察するなど、
地域性を生かしている。
「骨格模型を作る」など、指導要領から外れていても教員が重要と
考えた内容も盛り込んでいる。
副教本作りは、中学校の理科教員も参加、中学の学習内容との連続も意識。
掲載写真の大半は、教員の撮影。
毎年6月ごろから、翌年の副教本作りが始まる。
前年の副教本について、授業で使いやすかった点や悪かった点を評価、
原則として毎年改訂。
「編集担当の教員は、常に最新情報の調査や資料集めをする。
こうしたことが、教員の力量を高めることに」と、
昨年の副教本の編集に当たった市立東小学校の相沢陽一校長(60)。
◆副教材
副読本、地図、資料集、実験器具など教科書を補助する教材。
検定を受ける教科書と違い、教材・教科書会社、教育委員会、
学校などが独自に作る。
犬山市では、算数と理科の教材を準教科書的な意味で、副教本と呼ぶ。
国は、新学習指導要領への移行に伴って、
新たに指導が必要な内容の教材を制作中で、これは補助教材。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080711-OYT8T00239.htm
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