2008年7月26日土曜日

毎日の運動を考え直す:メタボリックシンドロームには、毎日は行わない高強度運動インターバルトレーニングがもっとも有効

(Medscape 7月10日)

有酸素インターバルトレーニングを含めた運動療法が、
メタボリックシンドロームの者にベネフィットがあるらしいという
小規模パイロット試験の結果が出た。

ノルウェーの研究チームが、2種類の運動療法の処方を比較、
メタボリックシンドロームのリスク因子のほとんどが高強度運動で改善。
16週間の運動プログラム終了時には、患者のほぼ半数が、
食事内容はいっさい変化していないにもかかわらず、
メタボリックシンドロームから脱していた。
定常的な中強度の運動では、これほど印象的な成果は得られなかった。
2006年アテローム性動脈硬化症国際シンポジウムで発表。

今回、1日に30分間の中強度運動を推奨する標準的推奨
(米国心臓協会[AHA]やその他の団体が支持している)が、
特定の高リスク群には不十分である可能性を示唆。
Arnt Erik Tjønna(ノルウェー科学技術大学)らの研究は、
『Circulation』2008年7月7日号オンライン版に掲載。

Ulrik Wisløff(ノルウェー科学技術大学)は、
今回の運動処方は、週に3回で総時間120分。
「この試験は、メタボリックシンドロームの心血管系に、
運動強度が及ぼす実際の効果を比較する初めてのもの。
行った運動は、それぞれ強度は異なるが、1回の運動セッションで
消費するエネルギーは同じ。」

メタボリックシンドローム32例をランダム化し、中強度の連続運動、
有酸素インターバルトレーニング、運動なしのいずれかに割り付けた。
16週間の試験期間と追跡検査を完了したものは、全部で28例。

中強度運動群の被験者は、インターバル群よりも運動時間を若干長くし、
エネルギー消費量は群間で差がないようにした。

週3回の運動を16週間行ったところ、2つの運動群の体重と胴囲は、
対照群に比べ、同じ程度に減った。
インターバル群の被験者のほうが、内皮機能、血圧降下、インスリン感受性、
空腹時血糖値、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール、
ミトコンドリア形成(活動のための燃料を細胞が産生する能力)が大きく改善。

16週間終了時に、メタボリックシンドロームの基準に該当しなくなった者は、
インターバル群では46%、中強度運動群では37%。
対照群は、全員が追跡時もメタボリックシンドロームの基準に合致。

著者らは、高強度インターバルトレーニングが一定した中強度運動よりも
優れているのは、インターバルトレーニングのほうが
高い心拍数を必要とすることに関係がある。
インターバル群は、酸素吸収能が35%向上、
中強度運動群の酸素吸収能は16%しか向上しなかった。

Wisløff博士によれば、ひとつの運動推奨で万人に合わせるのは
とうてい無理だということを示している。
「運動トレーニング/身体活動の処方は、メタボリックシンドロームの者と
非活動的な者とでは違う。
現行の推奨の効果を見てください。
たいして効いておらず、推奨される量の運動を人々にさせられていない。
むしろ、肥満してメタボリックシンドロームになる人間の数のほうが増えている」

メタボリックシンドロームの者のほとんどは、過去5年から10年以上、
日常的な運動をしておらず、現行の運動推奨を順守すること自体が大きな壁。

「トレーニングを、1週間の大半の日に行うのは困難だと多くの人は感じ、
現行の推奨はやる気を起こさせるというより、うざったいものでしかない。
そうした人々は、インターバル運動を週に2回、10~14週試してほしい。
運動強度を、運動時間数で代替することは不可能であることを、明らかにした。
健康を増進し、心血管系リスク因子を正常化(ないし予防)するには、
短めで強めのトレーニングセッションが優れた療法だ」

AHA運動ガイドラインの著者、Barry Franklin(ウィリアム・ボーモント病院)は、
運動の総エネルギー消費量を一定にした場合、より激しく強い運動の方が、
中強度の運動よりも、心血管系に対するベネフィットが大きいことを示した研究は、
今回のものが始めてではない。

「これまで身体を動かさなかった者が、中強度の運動を心地よく感じられるなら、
有害な徴候や症状なしで維持・達成できる範囲で、
もっと激しい運動を目標に据えるべき」

Wisløff博士らは、心不全患者および冠動脈疾患患者を対象に、
同様の運動試験を実施。
どちらの場合でも、心臓、血管、筋骨格機能に対する効果として、
有酸素インターバルトレーニングのほうが中強度運動よりも優れていた。
「メタボリックシンドロームを対象にした今回の結果と合わせ、
内科医は、有効な治療戦略を真剣に取り入れる必要がある」。

「SmartEX試験」という多施設試験を開始、
この運動プログラムの安全性と生存率のデータを現在調べている。
「2~4年後には価値のある情報が得られるものと期待」。

出典
Tjønna AE, Lee SJ, Rognmo O, et al. Aerobic interval training versus continuous moderate exercise as a treatment for the metabolic syndrome. A pilot study. Circulation. 2008

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=77376

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