(読売 7月10日)
環境学習に、学校外の知識や人材の活用が進む。
「排ガスから、本当に酸性雨ができるのか?」。
岐阜県池田町立池田中学校での、県先端科学技術体験センター職員
による今年最初の出張授業は、こんなテーマ。
3年生の選択理科の時間を使っている。
内田道伸教諭(44)が、「前回は酸性水溶液を勉強しました。
きょうの授業をしっかり見て、『何が起きているんだろう』と考えてください」、
同センターの宮西祐治さん(42)に教壇を譲る。
生徒は、宮西さんの指示で大きなビニール袋を持って、
学校の駐車場に行き、内田教諭の乗用車と、センターのディーゼル車から、
ガソリンとディーゼルの排ガスを集めた。
窒素酸化物(NOx)で赤くなる試薬を入れて、袋を何度も振ると、
ディーゼルの排ガスの方が、より赤く染まった。
「次は、酸性雨を作ってみよう」。
水蒸気でいっぱいになった理科室の大きな水槽に排ガスを送り込む。
水槽の底のシャーレには、酸性で黄色く染まる試薬が入っている。
やがて水蒸気が冷えて水滴になり、シャーレに落ちた。
「あっ、黄色い」。
水槽に顔をつけて見つめていた生徒が、思わず声を上げた。
「排ガスを集めた時、他に何か感じたことは?」、「熱かった」。
宮西さんは、「車で駐車場を出る時、後ろに植物があれば、
熱もかかっている。環境問題は、私たちがあまり気づかない一つ一つの
行動が積み重なっているんです」と授業を結んだ。
同中への出張授業は、年4回。
「環境は、モデル実験が難しい学習内容。
学校の設備だけでは、酸性雨を作るのも大変です」と内田教諭。
センターの協力は、2002年から続く。
過去には、周辺の水質調査なども手がけたが、ここ3年は、
生徒の関心の高い地球温暖化など、環境やエネルギー問題を中心。
環境教育は系統化された教材がなかったため、科学館や企業、NPOなどと
連携し、出張授業を試みる学校は少なくない。
見せる側の都合で用意された一過性のイベントに終わる可能性もある。
内田教諭と宮西さんは、出張授業が、年間の授業計画や前後の授業と
連続性を保つよう、事前の打ち合わせを欠かさない。
学習の狙いを明確にしてきたことが、両者の協力関係を長続き。
「短い時間で実験や講義がスムーズに進むのは、
事前の授業で生徒がよく理解しているから」と宮西さん。
今年は、菜種油からバイオディーゼルを作る実験もする予定。
新学習指導要領は、授業時間を増やしつつ環境教育を重視。
同中は、1学年が8学級と県内最大規模。
これまでは選択理科だけでよかったが、3年生全体に増やすことは難しい。
横山公一校長(57)は、「生徒全体の環境問題への関心や科学的知識の
底上げをどう図るか?学校としてのもうひと工夫が必要」。
学校外の教育資産の上手な活用がカギ。
◆中学理科の環境教育
新学習指導要領では、3年で選択して学ぶことになっていた
「科学技術と人間」、「自然と人間」を必修化し、
「自然環境の保全と科学技術の利用」を新設し、
太陽光発電など自然エネルギーの利用法も学ぶ。
地球温暖化や外来種の問題も詳しくなった。
環境問題について、実生活で何ができるかの判断能力を育てる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080710-OYT8T00189.htm
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