2008年7月25日金曜日

理科再興(6)支援員活躍、実験面白く

(読売 7月15日)

学校外の人材が、小学校の理科授業を手助けしている。
「ジャガイモの葉から、緑色を抜く方法を説明します」
担任教諭の発言の後、東京理科大大学院修士課程2年の
松本安純さん(26)が、子供たちを教壇の周りに集めた。
「色を抜くアルコールは、80度より低い温度で使ってね。
沸騰したアルコールを吸うと、気分が悪くなることがあるから、注意して」

東京都北区の滝野川小学校で、6年生が取り組んだのは、
植物の葉がデンプンを作る働きを調べる実験。

松本さんは、担任と手分けして理科室を回り、児童に実験を指導。
「お湯に気をつけて、温度計を倒さないように」などと細かく助言。
松本さんは、4月から北区の理科支援員として、同小で週1回働いている。
中学か高校の教員を志望しているが、
「理科嫌いになる前の小学生の現場を見たかった。勉強になります」。

小学校は、実験・観察などの理科の授業力の低下が問題に。
林四郎校長(60)は、「理科が苦手な教員のサポートだけでなく、
準備や後片づけも引き受けてくれるので、
教員が空いた時間を他の教務に振り向けられる。
支援員の姿勢が、教員の成長を促し、子供の理科への興味も増す」。
準備室に死蔵されていた備品を使えるようにした支援員も。

理科が苦手な先生が委縮してしまう例や、雑用ばかりを任せる学校も。
そこで鍵を握るのが、支援員と教育委員会、学校の橋渡し役となる
「コーディネーター」の調整力
支援員を選んだり、学校の配置を決めたりするほか、
学校と支援員のトラブルを仲裁し、支援員を支える役割も。

北区でコーディネーターを務めるお茶の水女子大
サイエンス&エデュケーションセンター講師の宮本康司さん(32)は、
学校の要望と、支援員の希望や能力をよく考慮することが大事。
全国で支援員の質に差があることも課題で、
どこの学校でも機能するような制度を考えることも必要」。

学生などを確保しやすい都会に比べると、
地方では科学や学校教育に詳しい人が支援員になるとは限らない。
同センターは、社会人向けに理科支援員養成プログラムの授業を開講し、
科学技術振興機構と協力して、東京以外での研修も計画。

新潟大で理科教員の養成に取り組み、この事業に詳しい
小林昭三同大名誉教授(65)は、
「教員志望の学生にとって、学校現場の実態を学ぶいい機会。
ぜひ挑戦してほしい」。
自治体には、「取り組み方や熱意に差がある。
コーディネーターの役割や支援員の活用法などの情報を交換し、
制度を工夫してほしい」。

始まって2年目。
支援員は、理科に強い学校を作るとともに、
外部に開かれた学校を作る試金石にもなりそう。

◆理科支援員

小学校5~6年の理科の授業で、観察や実験の手伝い、準備や後片づけ、
実験や授業計画の立案などを行う人材で、
教育委員会が公募で選ぶケースが大半。
教育学部や理系学部の学生、退職教員、主婦が多い。
科学技術振興機構が2007年度に事業化し、2762校3715人が選ばれた。
今年度は約4300校の見込み。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080715-OYT8T00246.htm

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