(サイエンスポータル 2008年7月11日)
洞爺湖サミットの成果については、いろいろな見方があるが、
温暖化問題に積極的にかかわっている研究者、評論家から、
評価する言葉が聞かれる。
「安全工学シンポジウム2008」で特別講演をした
山本良一・東京大学生産技術研究所教授は、
「6月、7月で、日本の基本政策は明確に変わった」と、
福田首相の温暖化対策への取り組み姿勢を評価し、
洞爺湖サミットでも、「大変な役割を果たした」と合格点を与えていた。
山本教授とともに、日本の進める温暖化対策に積極的にかかわっている
三村信男・茨城大学教授(地球変動適応科学研究機関長)も、
「米国を含め、2050年に温室効果ガスの50%排出削減という長期目標を、
世界で共有しようという意志を示したのは前進だ」。
番組「ラジオあさいちばん」に登場した寺島実郎・日本総合研究所会長は、
「後から今回のサミットを振り返って、日本の温暖化政策の分水嶺だったと
いわれるかもしれない」と、日本が果たした役割について、
これまた及第点を与えていた。
寺島氏は、今回のサミットを任期が残り少なくなった、
「ブッシュ米大統領のフェアウェル・サミット」と表現し、
イラク戦争で疲弊している米国の力の低下、特に対ユーロに対する
急激なドル安を、「パリのアメリカ人」と揶揄。
欧州に行くと、おみやげも買えなくなってしまっているという意味。
こうした状況の中で、議長国として日本の果たした役割は評価してもよい、
ということだろう。
ただし、地球温暖化対策の行く手が極めて厳しいという認識は、
寺島氏も含め3人とも同じ。
「地産地消」の考え方に切り替えないと、エネルギーの消費減もかなわない。
日本にとって、カロリー換算で39%しかない食糧自給率を、
まず50%位に上げる必要がある、と寺島氏は提言。
農政の大きな変更を必要とするわけで、地球温暖化対策が、
「制度、システム、哲学のイノベーション」(山本良一教授)なしには
成り立ち得ないことを示している。
山本教授は、日本の基本政策が変わったという判断の根拠として、
自民、民主を初めとする政党が低炭素社会を目指す法律の実現に
動き出したことや、福田首相が6月9日に、
「2050年までに、国内の温室効果ガス排出量を現状より60-80%削減する」
ことなどを盛り込んだ福田ビジョンを発表したこと。
反対に、産業界の対応については、
「大企業には、二酸化炭素(CO2)の排出量の報告が義務づけられ、
7,500社の合計排出量は年間6億トン。
鉄鋼、化学、電力といった22社だけでこのうちの半分、年間3億トンを排出。
経団連と経済産業省は、22社の3億トンを何とか守ろうと政策を展開、
それではあらゆることが進まない」と批判。
洞爺湖サミットが終わり、内外の厳しい視線はどこに向くのだろうか?
http://scienceportal.jp/news/review/0807/0807111.html
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