(読売 7月11日)
「川妹子(チュワンメイズ)(四川娘)、またも勝つ」。
テニス・ウィンブルドン選手権女子シングルスで、
1メートル64の小柄な鄭潔が、1メートル80を超える女子選手たちを
次々と倒す快進撃に、中国人の関心が集まった。
アジア勢としては、伊達公子以来の四大大会4強という快挙。
25歳の鄭潔はすでに、ダブルスで四大大会2冠の実績があるが、
これまで以上の注目を集めたのは、
彼女が四川大地震の被災地・成都出身だったから。
「私は四川で生まれ育ち、家族も友人もいる。
被害にあった人たちが早く、新たな家を建てられますように」。
鄭潔は、今回の賞金19万5500ポンド(約4100万円)のほとんどを
震災地に寄付すると宣言。
四川省から1000キロ以上離れた、広西チワン族自治区の南寧。
地元の体育訓練基地で、レスリング・グレコローマンスタイルの
四川省代表20人が練習。
省内の練習施設は震災で大きな損害はなかったが、
各競技の四川省の選手たちは、練習に集中するため、
四川体育局の手配で、国内15都市の訓練施設に受け入れ。
55キロ級の謝洪全(22)は、壊滅的な被害を受けた茂県の出身。
震災の5月12日は、成都で練習中。
実家には、父母ら家族7人がいた。
携帯電話で連絡を取ろうとしても、全くつながらない。
現地から伝わってくるのは、悲観的な情報ばかり。焦りが募った。
それでも、練習は続けられた。
鄭拉格コーチ(36)は、「きっと大丈夫だ。今できるのは、
練習に集中することだけだ」と励まし、練習中は、
代わりに実家へ電話を入れ続けてくれた。
1週間後、ようやく連絡がついた。家は全壊したが、家族は無事。
しかし、そのまま5月25日に南寧に移り、テント生活を送る家族を
見舞うことはできずにいる。
「本当は、故郷でボランティアなど手伝いをしたい。
しかし、自分は選手で、国と省のために練習をするのが本分だから」。
謝洪全は、2006年全国2位で、北京五輪代表の有力候補。
しかし、昨冬に右腕を負傷、五輪出場は夢と消えた。
7月からは、好敵手だった代表選手のスパーリングパートナーを
務めるため、北京に赴く。
震災以来、北京五輪関連のイベントには必ず、
「四川頑張れ」のスローガンが加わるようになった。
北京五輪の中国選手団は、600人規模。
四川省の選手は、約70人が加わる見通し。
四川大地震による死者は7万人近く、行方不明者は1万8000人以上。
国民の間で複雑な思いが交錯する北京五輪は、8月8日に幕が上がる。
http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080711.htm
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