(読売 7月17日)
小規模校が多い地方でも、理科への関心を高める工夫がある。
太陽電池パネルを積んだ模型の車が、電球の光を追って
理科室を勢いよく走る。
岩手県宮古市の宮古小学校に、5、6年生33人が集まった。
「自分たちで走らせてみよう」。
花巻市の県立総合教育センターから派遣された講師の指示で、
子供たちは頭をひねりながら、模型の車の配線をつなぐ。
車輪が回ると、目が一斉に輝いた。
人口減が続く宮古市では、3校の5、6年を合わせても229人で、
愛宕小の5、6年は複式学級。
市教委は2年前、子供の理科離れに歯止めをかけようと、
3校で合同実験などをする「宮古・ニュートン・スクール」事業を始めた。
講師は、岩手大や県内の理科の得意な教員らが務めるが、
市内の退職教員らがボランティアで活動を支える。
中屋定基・市教育長(69)は、
「実験を敬遠する先生が増える中、地域の人材を活用して
子供たちの理科のセンスを伸ばしたい。
不登校気味の子供でも、ニュートン・スクールには来たいという子もいる」
3年間の予定で採択された文部科学省の
「新教育システム開発プログラム」の一つだったが、
国の事業は昨年度で打ち切られた。
今年度は開催数を減らし、200万円の予算で事業を続ける。
山口小教務主任の田中真喜子教諭(49)は、
「理科の時間と内容が削られた結果、理科室から廃棄された器具もあり、
学校では発展的な実験をする余裕がない。
学校では扱えない内容を取り上げるスクールは、
子供たちにとって貴重な学習体験の場」。
新潟県糸魚川市の東端にある磯部小学校は、児童数90人。
5年生13人は、生きたメダカを顕微鏡で観察。
理科支援員である元小学校長の下越克男さん(63)が、
「顕微鏡でスケッチするとき、どっちの目で見ればいいかな?」と問いかけ。
首をかしげる子供たちを見て、「右利きなら、右側にノートを置いて、
左目で見るといいんだよ」。
担任の池田義広講師(26)は、「気づかない点も、よく指導してくれる」。
糸魚川市は、支援員4人中3人までが理科を専門に教えてきた元教員。
豊富な経験で授業を助ける。
市は、スプートニク・ショック後に理科教育センターを設置、
理科教材の研究や教員の研修に、力を注いできた伝統がある。
センターは、今も市内の理科教育研究の中心として、
学校で管理が難しい実験器具を貸し出したり、試薬を提供したりして、
実験や観察を充実させている。
昨年度は、市内の小中学校に、エタノールや気体の検知管など
約50品目をのべ200回提供。
「児童数の少ない学校は教員1人の負担が大きく、
人材や実験器具の支援、融通は助かる」
地方にも、地域ぐるみで理科授業を充実する知恵がある。
◆スプートニク・ショック
ソ連が、1957年に人工衛星スプートニク1号の打ち上げに
成功したことを契機に、米国で科学者・技術者を育成する
理科教育の近代化の機運が高まった。
日本も、68~69年告示の学習指導要領で、科学教育の強化が図られた。
後に、理科の詰め込み教育を助長したという批判も出たが、
理科学習研究施設の充実も進んだ。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080717-OYT8T00209.htm
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