(読売 7月19日)
科学館や博物館を、授業で有効利用させる動きが広がる。
栃木県真岡市の科学教育センターのプラネタリウムに、
満天の星が映し出されると、座席の中学生から「はーっ」とため息。
プラネタリウムで授業を受けたのは、市立真岡中学校の1年生。
星が東から西へと動く日周運動の仕組みを学んだ。
職員が手元で操作する地球の模型などを
プラネタリウム上に映しながら、授業が進む。
センターには、高さ約10メートルの大気圧実験装置、
巨大な振り子や天秤など、体感型の大型装置や展示物が40点並ぶ。
各装置には、「学習単元 小6 人の体のつくりと働き」などと説明があり、
学年と学習内容がわかる。
授業で利用することを前提に設計したセンターは、
21小中学校の小3以上の全学級が、年2~3回授業を受ける。
元中学教員の福田一悦センター次長(47)は、
「小中学校14人の理科主任らによる研究会が、
センターの授業計画を作るので、現場の意向を反映した授業ができる」
プラネタリウムの授業は好評。
天体の立体的な運動は、教科書では教えにくい。
真岡中の吉住隆教諭(40)は、「今の指導要領で、
小5から中2まで天体を学ぶ機会がないが、
真岡では毎年続けて体験しているので、中3になってから理解が早い」。
人件費を除いた事業費は、年間約7000万円。
顕微鏡を3クラス分120台備えるなど、
予算をセンターに集中できる利点は大きい。
「植物の茎を顕微鏡で観察する実験では、ホウセンカを600本育てた。
生きた植物を自分で輪切りにして見た生徒は、目の輝きが違う」
科学館を理科授業に利用する自治体は増えているが、数はまだ少ない。
国立科学博物館は、全国の科学館や博物館、動物園などと連携し、
科学学習施設の知識を授業に活用できる学習プログラム作りを進める。
国立科学博物館で行われた研究会では、
磐梯山噴火記念館(福島県北塩原村)の佐藤公副館長が、
火山の噴火モデルを紹介。
新指導要領では、火山の噴火による土地の変化が小6で必修に。
小麦粉に、水と食紅をまぜてビニール袋に入れ、中央に穴を開けた
板の下から手で絞り出し、きな粉の山の中心から溶岩のように噴出。
水の濃度を変えると、粘り気が変化し、“火山”の形が変わるのが、
学習のポイント。
「学校は、授業時間や準備、片づけの手間などの制約がある。
記念館のノウハウを、授業で使いやすい形にして提供する工夫が必要」
新指導要領では、科学学習施設を学習に活用することを強調。
国立科学博物館の小川義和学習課長は、
「施設側は、つい説明をたくさんしたくなるが、
指導要領に沿った形の仕組み作りが大事。
学習効果が上がる様々な方法を検討したい」
1回限りの校外学習だけでなく、ふだんの授業での活用が広がれば、
子供の科学への関心も高まるはずだ。
◆科学館学習の効果
文部科学省科学技術政策研究所が2003年、科学館と小中学校が
連携学習をする真岡市など、4市の小5~中3に、
理科学習の意識を調査。
同市は、理科の勉強が「好き」、「大切」、「役に立つ」、「わかる」と
答えた子供が、全学年で国の調査(01年度)の平均を
10ポイント以上上回った。
同市の小5と小6の9割が、「実験や観察が好き」と答えた。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080719-OYT8T00230.htm
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