2008年9月5日金曜日

釜石SWに応援パン ローソンと白石食品工業

(岩手日報 9月2日)

「ラガーパン」いかが。
ラグビー社会人地域リーグ・イースト11の釜石シーウェイブスRFCを
応援しようと、チームのスポンサー企業ローソンと白石食品工業は、
共同企画のパンを発表
5日から県内で限定販売。
ラグビーボールをかたどった楕円形のパンは、
紫波町産小麦の「ゆきちから」を使用。
あんマーガリンとチョコチップの2種類で、
パッケージには釜石のロゴマークを印刷。価格は135円(税込み)。
ローソンの県内165店舗で、リーグが終わる12月まで販売予定。

県庁でローソン、白石食品工業、釜石シーウェイブスの三者が
そろって商品をお披露目。
釜石の増田久士事務局長によると、試食した選手にも好評で、
店頭でのPR活動を展開するという。

2008年9月4日木曜日

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 黒田玲子氏インタビュー

(日経 8月24日)

黒田玲子・東京大学教授

―将来、どんな技術が有望か?

幹細胞技術や遺伝子技術のさらなる発展が挙げられる。
肝臓などの臓器や、これまで不可能と思われていた
神経や歯などの再生につながり、病気の克服に役立つ。
発生がある程度進んだ段階の胚では、アクチビンといった
化学物質の濃度を調節することで、皮膚になったり、肺になったり、
心筋のように拍動する細胞に分化することが動物細胞で明らかに。

臓器のそのものの再生は難しいとしても、発生生物学、分子生物学、
細胞生物学などの融合分野で、臓器の役割をする様々な細胞群が出てきて
治療に使われることはそんなに遠い将来ではない。
医学と工学の融合領域でも、特に脳の働きに関しては目覚しい進展が予想。

―米国女性が韓国企業に依頼し、愛犬の体細胞クローンを作ったことが話題に。

体細胞クローニング技術は、一般市民に対するビジネスになりつつある。
体細胞クローニングの技術は、生命に対する考え方を大きく変えてしまった。
大切なのは、負の面への配慮。
科学の進歩は、必ずプラス面とマイナス面があり、
進歩するほどグレーゾーンが広がる。
生命科学は、ITや物作りとは異なり、内なる自分を研究する。
怖さを認識して、社会に応用していくことが大切。

生命の世界は、DNA(デオキシリボ核酸)やたんぱく質など
右型と左型のどちらか一方の分子でできており、
私の研究では分子や分子の集合体の右と左を測ることができる
分光装置を作ってきた。
普通の分光器は溶液でしか測れないが、固体でも測れたり、
時間変化を追えるようにしたりするなど、世界で唯一の機能を持っている。
科学技術のフロンティアとなる研究は、装置や新型万能細胞(iPS細胞)
作製技術などの“ツール”作りから始める必要。
誰かが作ったツールで研究していては、2番せんじになる場合が多い。

―科学技術研究の課題は?

フロンティアを開拓するには、時間も必要。
最近は、3年や5年で成果がでる研究を求められるようになっているが、
それでは先端の科学技術が生まれにくい。
国や企業も一歩引いて、世界の研究がどうなっていくのか、
見つめ直す時期にきているのではないか。

<黒田玲子氏 略歴>
1970年お茶の水女子大卒、英ロンドン大助教授などを経て、
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系教授。
専門は、分子の世界の右と左の研究。
国の科学政策の方向性を議論する総合科学技術会議議員を務めた。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2002022082008

数学克服の重い宿題 全国学力テスト結果

(岩手日報 8月30日)

全国学力テストで、本県の中学3年生の数学平均正答率は
知識に関するA問題が45番目、応用力を調べるB問題が44番目と、
最下位クラスに低迷。

数学は、「日々の積み重ねが大事」とされるが、
本県中学生の授業以外の学習時間は「1時間未満」の割合が半数近い。
自宅学習が定着していないのも一因。

2005年度から3年間、文科省の学力向上事業の指定校となった
盛岡市の乙部中(今野庄校長、生徒275人)。
校区の手代森小、都南東小と連携し、学力向上へ実践を続ける。
算数・数学の学力分析は、「応用する力」の不足が浮き彫りに。

同校研究主任の大越千晶教諭は、
「教科書をかみ砕いて、『考える授業』を目指す」と改善に取り組む。
一方で、「中学生は、自習の定着が大事。
目に見える形の成果には、相当な時間がかかる」と本音ものぞかせる。

昨年のテストで、本県の中学生は数学Aが44番目、Bが42番目。
県教委は、調査分析委員会を設置。
報告書を全小中学校に配布して、授業の改善策を提示した。
「分からない」子どもを減らす努力もした。
しかし、結果は昨年より後退した。

数学の低迷は、長年の課題とされる。
「首都圏のような高校受験の競争が少ない」、
「教科免許のない教諭が授業する小規模校が多い」という関係者の見方も。

隣県・秋田は、同様の状況でも今年も全国トップ級の正答率。
盛岡市・巻堀中の伊藤好男校長は、
「学校、家庭、地域が一体となり、30年かけて地道に取り組んだ
秋田の姿勢は見習わなければならない」

中学校教諭でつくる県教育研究会数学部会の
富谷行雄会長(盛岡市・河南中校長)は、
「数学は毎日の積み重ねが大切」と、自宅学習の習慣付けを課題。
今回の調査で、「授業以外の1日の学習時間」は1時間未満が46・3%、
30分未満の割合は小学校6年生より中学校3年生が多かった。

県教委の小岩和彦義務教育担当課長は、
「英語、数学では指導主事が全校を巡回指導するなど支援。
授業と結びつけた家庭学習の一層の強化に取り組みたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080830_12

合併協設置議案提案へ 大船渡市と陸前高田市

(岩手日報 8月30日)

大船渡市と陸前高田市との合併協議会について、
甘竹勝郎大船渡市長は、中里長門陸前高田市長に、
議会提案する意向を伝え、
両市議会への合併協設置議案の提案が決まった。

住民の直接請求による同議案の提案は、合併新法下では県内初。
焦点となる陸前高田市議会の全議員に対し、
現時点で過半数が反対。今後の動向が注目。

甘竹市長が陸前高田市役所を訪れ、中里市長に対し
「議会に提案させていただきたい」と伝えた。
中里市長は、「法の定めに従って対応したい」。

甘竹市長は、「懇談会などを通じて、提案すべきとの声が圧倒的」。
陸前高田市への回答書に、「住田を含めたまちづくりの検討」を
盛り込んだことに触れ、「合併協の中で住田を含めた議論もしたい」。

中里市長は、「合併そのものは否定しないが、(2010年3月末の)
新法期限内に合併をする世論になっていない」と、
あらためて「当面単独」の考えを示した。
両市は今後、事務レベルで合併協設置議案の提案時期や内容を詰める。

合併協設置について、大船渡市議会(26人)の佐藤丈夫議長は、
「大半は賛成だが、相手のある問題。陸前高田市議会の出方を見たい」。

陸前高田市議会議員に行った調査では、採決に参加しない議長を除く
19人のうち、反対は過半数の10人。賛成は6人。3人が態度を保留。

現時点で、合併協設置議案は否決の可能性が高いが、
同市議会の西條広議長は、「重要な案件であり、議論を深めたい」

住田町の多田欣一町長は、「両市の問題なので、言及する立場にない。
当面自立の方針は変わらない」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080830_8

教師力08(2)地域から「ゲスト教師」

(読売 8月27日)

地域の力を学校に生かしたいと、大学院で学ぶ教師がいる。

東京都目黒区の商店街にある米店「愛米家本舗」を、
区立不動小学校の上田享志教諭(35)が訪れた。
店主の高柳良三さん(57)が、
「先生のおかげで、今もあちこちで授業してますよ」と笑顔で迎える。
上田教諭は、昨年春から兵庫教育大の大学院で学んでおり、
店を訪ねたのは1年半ぶり。

2人の出会いは、1999年春。
店に入ってくるなり、「一番うまい米と、一番まずい米を下さい」と言われて、
高柳さんは仰天した。
「社会の授業で農業について学ぶのに、
米の品種による味の違いを実感させたい」。
上田教諭が理由を説明すると、高柳さんは思わず
「おれが教室に行って話をしようか」と申し出ていた。

水田の益虫・カブトエビの話、休耕田で育てたそばの実を使ったそばうち体験……。
高柳さんは、何度も不動小に足を運ぶようになり、
話を伝え聞いた近隣小学校からも、お呼びがかかるようになった。

上田教諭の大学院での研究テーマは、「地域の声をどう学校運営に生かすか」。
「地域と協力すれば、もっと学校は良くなる」との思いからだ。
学校評価などを通して学校に寄せられた地域の要望を、
次年度の運営に生かしているかを検証。
積極的な管理職や教員がいる時だけでなく、地域の人に、
変わらずに学校にかかわって協力してもらうには、何が必要かを探る。

その原点は、伊豆諸島の青ヶ島村にある。
上田教諭は、東京から358キロも離れた人口200人足らずの
小さな島で教員生活を始め、地域の力を実感した。

「畑があったら、面白い授業ができるのになぁ」。
きっかけは、島の飲み屋での何気ない発言だった。
翌日には、学校の隣の空き地に重機が持ち込まれ、
住民が荒れ地を掘り起こし、あっという間に畑を作り上げた。
運動会や文化祭でも、畑の作物の育て方でも、
何かにつけて村人が協力してくれた。

転勤先の目黒でも、地域に溶け込むことを第一に考えた。
買い物は、とにかく地元の商店街で。
放課後や土日に学校を利用する地元サークルにも、できる限り顔を出す。
地域の行事にも必ず参加。知り合いは、あっという間に増えた。

仲良くなった人に「こんな授業がしたい」と話すと、
必ずといってよいほど協力してくれる。
地域で俳句を教えているおばあさんが、子供の俳句を批評しに来校するなど、
次々とゲストが教壇に立った。
「地域の人は学校に協力したいと思っている。
その思いをシャットアウトしているのは、学校ではないか」
との思いは強くなるばかりだった。

「教員は異動するし、児童もいつかは卒業する。
ずっと学校を守っていけるのは地域の人なんです」。
学校が「地域の宝物」として輝くよう、
これからも努力を惜しまないことは言うまでもない。

◆学校評価

教育活動や学校運営の達成度を評価する制度。
教職員による自己評価、保護者や地域住民らによる学校関係者評価、
専門家による第三者評価がある。
学校教育法施行規則の改正で、2007年から、
自己評価の実施と結果の公表が全国の小中高校に義務づけ。
学校関係者評価の実施と結果の公表も努力義務となったが、
実施率は06年度調査で49.1%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080827-OYT8T00203.htm

色づく田んぼアート 奥州・水沢

(岩手日報 9月3日)

奥州市水沢区佐倉河字北田の水田約30アールで、
地域住民が取り組んでいる「田んぼアート」の稲が色づき始めた。

同市ゆかりのアテルイの顔や「平泉の文化遺産」の一つ、
中尊寺金色堂の図柄が浮かび上がり、
関係者は今月中旬の完成を楽しみにしている。

田んぼアートは、水田をキャンバスに見立て、稲で図柄を表現。
地元の農家を中心に実行委を組織し、今年初めて実施。
稲は、「朝紫」、「黄稲」、「ひとめぼれ」の3品種。
今後、アテルイの髪や金色堂の建物部分の色合いが深まる。
完成後の10月中旬に稲刈りを予定。

実行委の森岡誠会長(56)は、
「成長を見守ってくれる人が多く、励みになっている。収穫が楽しみだ」。
場所は、東水沢中の約500メートル北側。
水田近くに物見やぐらがある。

2008年9月3日水曜日

北京の大気汚染に住民抗議 五輪後、処理場再稼働で

(日経 8月31日)

香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターは、
北京市朝陽区で、北京五輪後に再稼働した大型ごみ処理施設による
大気汚染が健康被害をもたらしているとして、
住民ら約500人が、環境部門の責任者の辞任を求める抗議デモ。

中国語ニュースサイト「博訊」もデモを報じ、
こぶしを突き上げているマスク姿の多数の住民や、
警察車両を取り囲む住民などの写真を掲載。

五輪期間中は、大気汚染対策で同区のごみは河北省などに運ばれ、
区内の多くの処理施設は稼働を停止。
再稼働で、急激に大気汚染が始まったことに住民が抗議。

デモでは、警察との衝突で2人が負傷。
ネット上でデモを呼び掛けたとみられる住民1人が、
30日夜から行方不明になっており、警察に拘束された可能性が高い。

http://eco.nikkei.co.jp/news/today/article.aspx?id=NN000Y738%2031082008

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 高西淳夫氏インタビュー

(日経 8月24日)

高西淳夫・早稲田大学教授

―ロボット技術で今、何が起こっているか?

石油価格が上昇する弊害が、ロボット分野にも出ている。
約10社と共同研究しているが、中小企業では原材料価格の上昇が
経営を圧迫し、研究開発費を出す余力がなくなってきた。

韓国では、ロボット産業を育成する法律が9月に施行。
自国にないロボット技術を海外から買ってきなさいという戦略で、
韓国企業は技術を買い取るために、
日本のロボットメーカーを買収しようと動いている。
欧州でもロボット産業の育成に動き出した。
日本は、景気減速で経営環境が厳しくなっており、
経営者はいっそ海外に売ってしまえという心理に傾いている。
アカデミックな世界に国境はないが、海外の国家戦略として
日本の最高技術が流出するとなれば話は別。

―ロボット技術は日本をけん引できますか?

今後の日本の産業を支える要となる技術。
鉄腕アトムのような形態ばかりでなく、自動車の自動運転が実現すれば、
広い意味で自動車がロボット化した。
外科医に代わって、脳や心臓など微細な場所にメスを入れるロボットなど、
用途は数多い。

―ロボット普及のカギは?

トヨタ自動車がパートナーロボット市場に本格参入する方針を示し、心強い。
大企業が、息の長い開発をしていくことが普及のカギ。
ただ、1社ですべてやろうとすると、限界があるかもしれない。
パソコンやゲーム機は仕様を公開して、
応用ソフト部分は創造的な人たちの参加を促して普及した。
ロボットも、プラットフォームとなる基本部分の仕様を公開し、
ほかの人たちの参加を呼び込む方が広がるのではないか。
マイクロソフトは、ロボティクススタジオというロボットプラグラムの
開発環境を整え、布石を打っている。

―日本のロボット技術の強みは何か?

軍事用に技術開発が進む米国と異なり、民生用技術が主導。
被災者救助ロボットは典型。
格安な通信費用で、携帯電話を使ってロボットを遠隔操作する技術も実現。
画面を見ながら、地球の裏側のロボットを操作することも実現しつつある。

―課題は?

国は、ロボット産業の支援に加え、ロボット普及の妨げとなる
法制面への目配りが必要。
例えば医療。
難しい部分だけをロボットで手術したとすると、混合診療となり、
医療費がすべて自己負担になってしまう。
被災者救助ロボットを無線操作で動かそうとしても、
総務省の無線許可が必要。
技術がある日本が、「制度の壁」でロボット普及に手間取っている間に、
海外勢に市場を奪われかねない。

<高西淳夫氏 略歴>
1956年生まれ。早稲田大学理工学術院創造理工学部総合機械工学科・
ヒューマノイド研究所教授。2足歩行ロボットのほか、
顎関節症の人の口の開閉訓練用のロボットなども開発。
東京女子医科大学と共同で、ロボットの医療福祉分野への応用研究も進める。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2001022082008

遺伝子入れインスリン細胞 体内で、糖尿病治療に期待 米ハーバード大が動物実験

(共同通信社 2008年8月28日)

膵臓に豊富に含まれる細胞にわずか3種類の遺伝子を組み込んで、
血糖を下げるインスリンを分泌する細胞へと体内でつくり変えることに、
米ハーバード大チームがマウス実験で成功、英科学誌ネイチャーに発表。
インスリンをつくれない糖尿病の再生医療に、応用が期待される成果。

再生医療の分野では、山中伸弥京都大教授が、
皮膚などの体細胞を未分化な状態に戻した新型万能細胞
「iPS細胞」が注目を集めている。

今回は、体細胞を未分化な状態にせず、直接別の細胞に転換できることを
初めて示した。万能細胞より、必要な細胞を早く得られる可能性がある。

チームは、膵臓の形成にかかわる約200種類の遺伝子の機能を調べ、
膵臓でインスリン分泌を担う「ベータ細胞」づくりに重要とみられる
遺伝子を絞り込んだ。

そのうち3種類を、膵臓の約95%を占める「外分泌細胞」と呼ばれる細胞に
特殊なウイルスで組み込むと、膵臓に1%程度しか含まれないベータ細胞と
そっくりな細胞に変えられることを突き止めた。

できた細胞は、3日後にインスリン分泌を開始。
10日後には、本物並みの分泌量に達した。
人為的に糖尿病の状態にしたマウスで実験すると、
遺伝子導入から1週間ほどで血糖が下がることも確認。
ただしこの細胞は、塊を形成しないなど、本物とは違う点もあった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=79170

教師力08(1)無給で大学院 「実践」学び直す

(読売 8月26日)

休職し、自費で教職大学院に通う教師がいる。

「先生、ちゃんと勉強してる?」、
「私たちも頑張るから、先生も頑張ってね」
久しぶりに北海道に帰ってきた太田恵子教諭(45)に、
札幌市立米里小学校の児童が次々と抱きついた。

太田教諭は4月から上京、玉川大学教職大学院で学んでいる。
3月まで担任していた児童が、札幌市内で開かれる
YOSAKOIソーラン祭りに出演するため、練習会場の体育館に駆けつけた。

練習の途中、騒ぎ出した児童に、
太田教諭は「この緑の線の上に乗って」と体育館の床を指さした。
児童はさっと一列に並ぶ。
居合わせた保護者から、「さすが太田先生」。
太田教諭は、「子供の感覚と大人の感覚は全然違う。
子供に分かりやすく指示すれば、大声を出さなくても1回で済むんですよ」

太田教諭が、改めて大学院での「学び直し」を決意したのは、
特別支援教育についてじっくり勉強するため。
教師の指示にうまく反応できない児童や集中力がない児童に対し、
障害を疑わずにしかってばかりいたことが、心に引っかかっていた。

学習障害(LD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの
存在を知って合点がいった。
専門書を読み、毎月、精神科医との勉強会に参加、
臨床心理士らが集まる学会にも顔を出すようになった。

現職の再教育を大きな目的に掲げ、実習重視で実践的な内容を
幅広く学ぶ教職大学院ができることを知った。
最新の教育論や指導法が勉強できるだけでなく、
玉川大には、付属の脳科学研究所があり、障害に対する最新の
脳科学的な知見を交えて学べると思った。

大学院修学休業制度を利用することにした。
進学を希望する現職教員に、1~3年の休職を認める制度。
この制度が2001年に出来るまでは、都道府県教委からの
派遣命令がないと、現職のまま進学することはできなかった。
08年4月までに、1230人がこの制度を利用したが、休業期間中は無給。
教職大学院に進んだ現職教員の多くも、
有給で学べる派遣命令を得た人が多数派。

太田教諭も、在学中は給料がもらえない。
入学が決まると、大学院の近くに小さなワンルームマンションを借りた。
運良く日本学生支援機構から奨学金を受けられたが、
家賃、学費、年金や介護保険料など、かさむ出費をやりくりする。
後悔はないが、「これでは(大学院に)来たくても、
来られない先生が大勢いるのも、無理はない」

以前から、全国各地で開かれる学習会や研修会に参加してきた。
学校に保管されている研修申請簿には、太田教諭の名前が延々と続く。
ことわざや俳句の暗唱、辞書を使った授業など、
新しい指導法は手当たり次第に試した。
効果が高いと聞けば、電子黒板でもプロジェクターでも自費で購入。
「少しでも良い指導ができるのなら、お金も時間も惜しくない」

そんな努力家だけに、都内の小学校を視察したり、ほかの学生を相手に
模擬授業を行ったり、といった日常のほか、
空いた時間には教育学部の講義を聴講する。
「この1年は、高価な買い物だから、一瞬でも無駄にしたくない」と、
街を歩いている時は、東京の小学生の様子の観察。
「電車の中で本を読む子が多い。さすが東京。
札幌の子供たちと、こんなに違うとは思わなかった」

「教師が学び続けなければ、子供が伸びるはずがない」が持論。
自分に続く教師が、どんどん現れてほしいと願っている。

◆人材育成の動き広がる

意欲の高い教員に、大学院などで学ぶ機会を与え、
プロの教師を育てようとする動きが広がっている。
いじめや不登校問題、子供たちの学ぶ意欲の低下などで、
指導が複雑化する中、教員の大量退職時代が始まり、
指導的役割を担う次世代の人材育成が必要とされている。

大学院の修士課程まで学ぶ専修免許状は、1980年代に出来ている。
教員養成系大学には、それ以前から、研究中心の大学院はあったが、
今春には、教職大学院が全国に19大学(国立15、私立4)に開校、
364人の現職教員が入学。
教職大学院は、現職教員の「再教育」を大きな目的の一つに掲げている。
各地の教育委員会も、ここ数年、授業力向上を狙いとした
教師向けの塾を相次いで開設。

共通するのは実践重視。
教職大学院は、2年間で取得する単位のうち、10単位以上を実習に充て、
専任教員の4割以上を校長経験者などの実務家で占める。
教育委員会主催の塾も、ベテラン教員が指導者を務める例がほとんど。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080826-OYT8T00195.htm

2008年9月2日火曜日

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 坂村健氏インタビュー

(日経 8月24日)

坂村健・東京大学教授

―ユビキタスという言葉を理解している人はまだ少ない。どんな研究か?

私が所長を務めるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所では、
どこでもコンピューターの情報処理能力が使える社会を実現すべく研究。
食品や薬品から会社の備品、道路や建物にいたるまで、
ICタグを付けることで、あらゆるモノや場所の情報が
ネットワークの世界に結びつけられ、最適なサービスが受けられる。

―ユビキタス関連で活躍する企業は?

モノに、ICタグを張り付ける技術が必要。
高度な特殊印刷技術と電子設計の技術も持つ大日本印刷や凸版印刷は、
世界でもあまり例のない企業で活躍の可能性がある。

ICタグのチップそのものは、半導体メーカーが作っている。
日立製作所が作る高性能チップは、大規模なDRAMの生産設備を
持ちながら、アンテナのテクノロジーも持つ総合電機メーカーだからこそできる。
韓国や中国の企業は、簡単にまねできない。

企業にとって気の毒なのは、高度なタグでも将来は、
5円、10円くらいでの販売を求められること。
タグ単体ではもうからない。
もうけるには、応用システムまで手掛ける必要があるが、
まだ汎用的な基盤が確立されていないため、
その基盤研究をしているのが当研究所。

―日本を見回したとき、有望と感じる技術分野は?

自動車やICT(情報や通信に関する技術)は、これからも強い。
フィンランドのノキアの携帯電話端末の販売台数は、
日本メーカーをすべて束ねてもかなわないが、
日本から端末構成部品をたくさん買っている。
村田製作所やミツミ、ロームなどが作る日本の部品がなければ、
何も作れないともいえる。
日本は完成品になると、法律や制度を巻き込んで
世界標準にしていく力が弱いので、苦戦する。

携帯電話の場合、海外と比べ日本では通信会社の力が強い仕組みで、
端末メーカーは通信会社のプランに合わせた端末しか作れない。
一方で、プランに従っていれば、国内市場で端末が売れるので、
端末メーカーも世界で激しい競争をしなくてもよかった。
国内だけで、通信会社と端末メーカーが一緒になって機能競争をした結果、
気がつけば日本は世界で最も高機能な携帯端末があふれかえっている。
一方、新興国では日本のような高機能端末は必要とされず、
販売は伸びない。

―日本のハイテク企業の魅力は乏しいということか?

日本企業は、技術力はまだ劣っていないが、
企業がこのまま日本市場だけにしがみついていては成長は難しい。
日本から出る勇気を持って、グローバルに展開していく企業が
一歩抜け出るのではないか。
毎日のように企業の人と接触していると、
水面下で芽は出始めていると感じる。
投資家の視点で言えば、いち早く世界市場に打って出た企業に、
投資の魅力があると言える。

<坂村健氏 略歴>
1951年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。
国産基本ソフト「TRON(トロン)」の提唱者で、
リーダーとして世界中にTRONを普及させた。
現在は、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長、
日本発のユビキタス技術を世界に広めようとしている。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2000022082008

キャンパス探訪(10)細やか指導 実績アップ

(読売 8月23日)

地方の小規模私大は、きめ細かい教育の成果を示す。
約200人の高校生や保護者が並ぶ説明会会場に突然、
トランペットの音色が響き渡った。
共愛学園前橋国際大学のオープンキャンパス。
楽器はどこにも見えない。
司会役の同大4年、手塚達哉さん(21)の口まね。
曲は、自分の道を示してくれた神への感謝を歌う黒人霊歌
「アメージンググレース」。

説明会では、国際社会学部の英語、国際、情報・経営、心理・人間文化、
児童教育の5コースの学生たちが授業や教員、学生生活の魅力を発表。
そろって口にするのは、「大変だけど、力がついた」。

手塚さん自身も、自らの学生生活を振り返った。
何となく入った英語コースで、教員に励まされ、多くの課題と向き合ううち、
英語が面白くなっていった。
「素晴らしい4年間でした」。
就職活動の真っ最中だが、オープンキャンパスには出ると決めていた。
“トランペット演奏”は、感謝の気持ちを込めた即興。

来場者の大きな拍手に、「目の前の学生の姿こそが成果だ」と
大森昭生学部長(39)は笑顔を浮かべた。

共愛学園は120年前、新島襄らの出資で創設、女学校を開いた。
20年前に開設した短大を、4年制に改組したのは9年前。
学部は一つだけで、収容定員は840人。
大学としての歴史は浅く、知名度も低い。交通の便も良くない。

入学した一期生に、「入学してよかったか」を尋ねると、
「そう思う」は35%。
しかし、卒業時は60%に。今春の卒業生では、86%まで上昇。
「入学して力がついたか」にも今春は、80%が「そう思う」。

高い満足度を支えるのは、個々の学生へのきめ細かい教育。
06年には、群馬県の大学で、いち早く大学基準協会の適合認定
受けたのも、決め手はそこ。

377ある授業のうち、50人以下のクラスが9割を占め、
100人超は1クラスだけ。
全授業で出欠を取り、2回続けて欠席すると、
大学から出席を促す手紙が自宅に届く。
教員の研究室棟には、質問に来る学生の姿が絶えない。

長年の厳しい経営のもと、定員を上回る志願者がありながら、
入学者選抜で学生の質を守ってきた。
「自分たちの教育力を超えた学生を受け入れたら、責任が果たせない」
(大森さん)と心配したため。
こうした姿勢への評価が浸透し、06年度に開学以来初めて学部の定員を満たした。

こうした現状や課題は、オープンキャンパスでも、学生や教員から説明。
福島県から両親と参加した高校生は、
「ホームページではわからない大学の姿を見せてもらった。真剣に考えたい」。

同大のモットーは、「大変だけど実力のつく大学」。
今は学生の8割弱が県内出身者だが、
他県から多くの学生が集まる日は、そう遠くないもしれない。

◆大学基準協会

大学評価・学位授与機構、日本高等教育評価機構とともに、
4年制大学の認証評価機関の一つ。
学校教育法は、国公私立の全大学に対し、
7年以内ごとに評価を受けることを義務づけ。
評価機関は、現地視察も踏まえて、学生が安心して大学生活を送れるか、
学費に見合った結果が得られるかを審査。
「適合」、「不適合」、「保留」判定を出す。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080823-OYT8T00218.htm

褐色脂肪細胞形成とエネルギー消費における骨形成タンパク質7の新しい役割

(nature 2008年8月21日号Vol.454 No7207 / P.1000-1004)

褐色脂肪細胞形成とエネルギー消費における骨形成タンパク質7の新しい役割

脂肪組織は、エネルギー収支の調節に中心的役割を果たしている。
哺乳類では、機能の異なる2種類の脂肪が存在。
1つは、トリグリセリドの主要な貯蔵場所である白色脂肪組織、
もう1つは、エネルギー消費を専門とする褐色脂肪組織で、
肥満を抑える働きがある。

白色脂肪組織、褐色脂肪組織の発生運命や機能を指定する
因子類については、ほとんど解明されていない。

今回我々は、骨形成タンパク質(BMP)ファミリーに属する一部のBMPは
白色脂肪細胞の分化を助けるが、
BMP7は単独で褐色脂肪細胞前駆体の分化を促進することを明らかにする。
この分化促進は、通常必要な誘導ホルモン混合物がなくても起こる。

BMP7は、褐色脂肪細胞形成の全過程を活性化する。
褐色脂肪への運命を決める初期調節因子
PRDM16(PR-domain-containing 16)やPGC-1α
(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-γ(PPARγ)コアクチベーター-1α)
の誘導、褐色脂肪識別マーカーである脱共役タンパク質1(UCP1)、
脂肪形成転写因子PPARγ、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)
の発現増加、p38マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ
(Mapk14)とPGC-1に依存した経路を介したミトコンドリア生合成誘導
などが含まれる。

BMP7は、間葉系前駆細胞の褐色脂肪細胞系列への拘束の引き金となり、
これらの細胞をヌードマウスに移植すると、褐色脂肪細胞を主に含む
脂肪組織が発生する。

Bmp7ノックアウト胚は、褐色脂肪が著しく少なくなり、UCP1はほぼ完全に欠失。
アデノウイルスの媒介によってマウスでBMP7を発現させると、
白色脂肪の量は増えないが、褐色脂肪の量が大幅に増加し、
エネルギー消費が増えて、体重増加が抑えられる。

これらのデータから、BMP7が褐色脂肪細胞の分化と熱産生の促進に
重要な役割を担っていることが、in vivo、in vitroで明らかに。
これは、肥満の新しい治療方法につながる可能性がある。

[原文]New role of bone morphogenetic protein 7 in brown adipogenesis and energy expenditure

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200808/nature/7207/02.html

PRDM16は褐色脂肪/骨格筋のスイッチを調節する

(nature 2008年8月21日号Vol.454 No7207 / P.961-967)

PRDM16は褐色脂肪/骨格筋のスイッチを調節する

褐色脂肪には、呼吸を脱共役させる特殊なプログラムによって、
エネルギー消費を増大させ、肥満を予防する働きがある。

本論文では、in vivoでの発生運命地図を作製し、
褐色脂肪細胞は、白色脂肪細胞とは異なり、これまで筋細胞系列でのみ
発現されると考えられていた遺伝子Myf5を発現する前駆細胞から
分化することを示す。

転写調節因子PRDM16(PRD1-BF1-RIZ1 homologous domain containing 16)
が、骨格筋芽細胞と褐色脂肪細胞との間で細胞の運命を決める
二方向性のスイッチを制御することを明らかにする。

褐色脂肪前駆細胞からPRDM16を欠失させると、
褐色脂肪細胞の特徴を失い、筋細胞への分化が促される。

逆に、筋芽細胞にPRDM16を異所性発現させると、
褐色脂肪細胞への分化が誘導。
PRDM16は、PPAR-γ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)に結合し、
転写機能を活性化して褐色脂肪生成を誘導する。

Prdm16を欠失する褐色脂肪は、異常な形態を示し、
産熱遺伝子の発現が低下して、筋特異的な遺伝子の発現が上昇。

今回の結果は、PRDM16は筋芽細胞マーカーを発現する前駆細胞を
指定して褐色脂肪系列へと分化させるが、
白色脂肪の発生には関与しないことを示す。

[原文]PRDM16 controls a brown fat/skeletal muscle switch

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200808/nature/7207/01.html?Mg=4b68322d03cf1ae3f0be17c7ae0f2623&Eml=12b55b931cb52b4152963c77864c5aec&F=h&portalId=mailmag

汚水処理普及率、全国36位 県、整備進まず

(岩手日報 8月29日)

下水道や浄化槽などの整備状況を人口の割合で表す
2007年度末の汚水処理人口普及状況を発表。
本県の普及率は68・6%(前年度比1・3ポイント増)で、
全国平均の83・7%を大きく下回り全国36位
市町村の財政難などが整備の進まない要因。

県は、04年に策定した「いわて汚水適正処理ビジョン2004」で、
10年度までに普及率を80%に引き上げる目標を掲げるが、
計画に対して浄化槽の整備が遅れている。

浄化槽の07年度普及率は、13・2%の計画値に対し、10・1%。
浄化槽は、個人か市町村が設置するが、
5人家族の場合で約100万円の本体設置費がかかるほか、
維持管理費も必要。

県は、民間資金活用による社会資本整備(PFI)方式の導入を促し、
既に紫波町、奥州市、宮古市で導入。
一方、地域格差の解消も課題。
汚染処理の人口普及率を地域別にみると、
県央84・5%、県南65・4%、沿岸56・9%、県北43・5%。
県央と県北で41ポイントもの開きがある。

県下水環境課の紺野岳夫計画担当課長は、
「PFIの導入などを積極的に進め、浄化槽普及に努める」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080829_9

2008年9月1日月曜日

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 西岡秀三氏インタビュー

(日経 8月24日)

西岡秀三・国立環境研究所特別客員研究員

―環境面からみた今後の技術開発の方向性は。

政府の環境エネルギー技術の革新計画では、
核融合や宇宙太陽光発電を革新的技術として掲げている。
本当に新しい技術が実現するには長い時間がかかる。
こうした技術を追求するのはもちろん大切で、
二酸化炭素(CO2)の排出量削減など目の前に迫るテーマを考えると、
現存する技術をうまく組み合わせ、システム構成を変える発想が重要。

例えば、自動車ならすでに三菱自動車などの電気自動車が動き出している。
高機能電池の開発に伴い、ガソリンと電気によるハイブリッド車が
主力となる期間は短くなりそう。
CO2削減の観点では、レンタカーやカーシェアリングといった
システムの普及も大切。

モノだけでなく、サービスの開発にも取り組む企業が
事業を伸ばす可能性がある。

既存のIT(情報技術)とバス運行を組み合わせ、乗客がいる路線や
停留所に迅速にバスを配車する「オンデマンドバス」サービスなども、
IT・運輸事業者ともにビジネスチャンス。

―エネルギー消費量を減らす発想こそが、利益につながるのか?

エネルギーをいくらでも使ってよい、という考え方は変えざるを得ない。
そのために使える技術は既にある。
例えば、価格はまだ高いが、自然エネルギーを生かす住宅建設が
動き出している。
電力需要は減少するが、電力会社も家庭用給湯機「エコキュート」のような
高効率機器を製品化するなど、新事業に乗り出している。
社会が変わる方向へ、早く動き出した企業にカネは流れる。

燃料価格の高騰も、結果として「低炭素社会」の流れを後押し。
欧州では、フランスが原子力、ドイツが自然エネルギーへと構造転換が進む。
日本は、国全体としての方向はいまだないが、世界競争に直面している
自動車や電機産業など民間レベルでは既に動いている。
エネルギー効率の高い電気自動車や電気機器で、
世界に通用する標準化を目指す。
内需が中心の紙・パルプやセメント、鉄鋼などは
取り組みが遅れているように感じる。

<西岡秀三氏 略歴>
1939年生まれ。東京大学大学院数物系研究科博士課程修了後、
旭化成に勤務。国立環境研究所に移り、東京工業大学、慶応大学で
それぞれ教授を務める。専門は環境システム学。
現在、環境省の「脱温暖化2050プロジェクト」で研究リーダーを務める。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MS3Z2100U%2022082008

都心でポンポコ…東京23区にタヌキ1000匹

(読売 8月27日)

この夏、都心のタヌキに注目が集まっている。
都会のタヌキを10年間、調査してきた研究家によると、
23区内には約1000匹のタヌキがいるらしい。

今年6月には、天皇陛下が「皇居のタヌキ」の生態について
研究者らと共同執筆された論文も発表され、論文を基にした企画展も好評。

研究家は、NPO「都市動物研究会」の宮本拓海さん(41)。
編集者をしていた10年前、都市に住む野生動物の取材で
タヌキを目撃したのがきっかけで、生態調査を始めた。
その成果を、「タヌキたちのびっくり東京生活」(技術評論社)にまとめ、出版。

宮本さんがインターネットで目撃情報を募ったところ、
出没地は23区で191地点に上った。
タヌキがよく目撃されるのは、豊島区目白、新宿御苑など緑の多いスポット。
井の頭線や西武池袋線では、人が近づきにくい線路脇の茂みによく姿を現す。
天敵の野犬が少ないのも、都会でタヌキが生き残る理由。

宮本さんは、現地に足を運んで観察を続け、目撃地点のうち
約100か所が「定住エリア」と結論付けた。
各地点に、10匹前後が生息していると推定して、
23区内のタヌキは約1000匹と目星をつけている。

近年は、都心の緑が急激に減り、タヌキの数も少なくなってきた。
1981年に計約2400ヘクタールあった農用地、森林、原野は年々減少。
昨年は、約半分の約1300ヘクタール減。
再開発に次ぐ再開発のためで、
「タヌキはいまこの時も、街を追い出されようとしている」(宮本さん)。

都心のど真ん中には、とっておきの「楽園」が残されている。
千代田区の皇居。その広さ約115ヘクタール。
東京ドームの25倍に相当する広大な敷地の周辺では、
「タヌキを見かけた」との目撃情報が以前から相次いでいた。

天皇陛下と研究者が調査したところ、タヌキがふんをする「ためふん場」が
30か所もあることが判明。
論文では、これを基に皇居に生息するタヌキは最大14匹と推定。

上野の国立科学博物館では、論文を基にした企画展
「皇居のタヌキ その生態」を開催。
研究内容の説明やタヌキのはく製の展示のほか、お堀の中州に取り残された
子ダヌキを救出する様子を撮ったビデオも上映。

宮本さんは、「タヌキは里山の象徴。タヌキが住めるような自然を
都心に残していくことにつながれば」。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20080827-OYT1T00445.htm

光熱フィルター:窓に施し、CO2排出を削減 従業員3人、小さな会社が世界を目指す

(毎日 8月25日)

福島市にある従業員3人の小さな環境資材メーカー
「フミン」(八木澤勝夫社長)が開発した「光熱フィルター」が注目。

窓ガラスに、酸化物をコーティングして、冷暖房費を節約する技術。
二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながることから、
環境省の環境技術実証事業の認定も受け、国内外に利用が広がっている。

「さあ、どちらが熱いか体感してみてください」。
新エネルギーの普及と省エネ拡大を目指す産学官連携会議。
約100人を前に、八木澤社長が光熱フィルターを披露。
八木澤社長が、2枚のガラスにライトを当て、透過光に手をかざして
比較するよう参加者に促した。

一方のガラスには光熱フィルターが施され、光の熱をほとんど感じず、
体験した男性は「こんなに温度が違うものか」と驚いていた。

光熱フィルターは、紫外線と赤外線を吸収する特殊コーティング剤
「伝導性金属酸化物」。
窓ガラスに吹き付けると、赤外線を約50%カットするため、
夏は室温を2~5度下げる効果。
冬は、暖房熱の遠赤外線を吸収してガラス自体が温まり、
室内の暖かさを逃さない。
冷暖房費が節約され、二酸化炭素(CO2)の削減。
均一に透明に塗布できるのが、同社の特許技術。

八木澤社長は02年、電話ボックスのガラスに、
この酸化物を塗ってボックス内の温度を下げていることを知り、
「窓ガラスに応用できる」とひらめいた。

最初は、スポンジで酸化物を塗っていたが、むらができる。
スプレーを使うと、霧状になって曇りが出てしまう。
そこで、スプレーの口径を1・5ミリと大きめにして、
温風を当てながら塗布する工夫をしたところ、
均一で透明に仕上がり、昨年、この方法で特許を取得。

同社と提携して工事を請け負う代理店は、
建設業者を中心に全国で65事業所に上る。
1平方メートル当たりの施工価格は、環境管理の国際規格
「ISO14001」にちなみ、1万4001円。
全国から注文が相次ぎ、これまでに窓ガラスを光熱フィルターで塗布した
施設は、学校や銀行など280施設。

シンガポールでも使われ、今後は海外展開も図る。
2月に、福島県の「第2回うつくしまものづくり大賞」を受賞。
6月、先進的な環境技術を第三者が実証する環境技術実証事業の認定。
光熱フィルターの普及を目指す新会社も、6月に誕生。

元地元紙記者の小林富久壽さんが、同市で起業した「プロジェクト・えこ」。
小林さんは、要望があれば自ら足を運んでスプレーする。
「未来から託された我々がやるべきことは、光熱フィルターを広めること。
高度成長の果実を享受し、自然を破壊してきた人間の義務」。

八木澤社長は現在、光熱フィルターの太陽電池への応用を検討。
太陽電池は、太陽光を利用して発電するが、
高熱に弱く、電力需要が増す夏場に発電力が低下。

「高熱に強い太陽電池を開発するのではなく、
あらかじめ熱をカットするという発想の転換。
クーラーの使用で、電力需要が伸びる夏に太陽電池で
たくさん電力を供給できれば、CO2排出量は確実に減るはず」。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/08/25/20080825ddm016040009000c.html

キャンパス探訪(9)福祉の心 実直に説く

(読売 8月22日)

人気が低迷するなか、福祉の大切さを地道にアピールする大学。
丸めた細長いアクリル板に穴が開いた道具を手に、
男子高校生が頭をひねっている。
「コップの縁をはさみ、ストローが動かないよう固定するホルダー。
障害を持つ人が豊かに生活するために考え出された道具で、
自助具と呼びます」。
職員の説明を聞き、その表情が一際引き締まった。

「福祉の総合大学」を掲げ、55年の歴史を持つ日本福祉大学での
オープンキャンパス。
プログラムは、ストローホルダーの工作に取り組むようなコーナーを除くと、
模擬講義や入試ガイダンスなど、「地味な内容」(福島一政常務理事)が中心。

福祉系大学への志望者が減っている。
6月に約37万人が受けた進研模試では、社会福祉系の志望者数は
前年に比べて1割以上減。
訪問介護大手「コムスン」が不正行為で、
介護事業から撤退させられた問題が大きいようだ。

「介護の仕事への需要が高まっていくにもかかわらず、
きつくて汚いというイメージも先行しており、危機的状況。
福祉系大学のリーダーとしてもっとずうずうしく、本気で福祉の大切さを
アピールしなければ」と福島さんは強調。

同大では、受験生の親も巻き込んだプログラムに力を入れる。
保護者向けの説明会を開き、模擬講義も親子がいっしょに受けることを前提。

社会福祉学科の模擬講義のテーマは、「福祉って何だろう?」。
教室を埋めた約70人の親子に、教育心理学者ダイアン・シスクの
「愛する我が子へ あなたは本当に大切なんだよ」と題した文章が配られた。
「あなたは、大切だよ。あなたが、あなただからこそ、大切なんだよ」など、
愛情あふれる文を、伊藤文人講師(37)が逆の意味にするよう指示。

「あなたは、必要ないんだよ……」。
自ら発表した言葉の残酷さに気づき、沈痛な面持ちになる親子。
「言葉の力を通して、反福祉の世界を想像することにより、
我々は支え合って生きているという福祉の意味を、
現実感を持って追体験してほしい」と伊藤講師は狙いを明かす。

「明るい仕事ではないかもしれないけれども、介護福祉士になりたい。
大学のイメージがつかめた」と長野市から参加した
高校3年、反川綾菜さん(17)。
父親の司さん(48)も、「大学が考える福祉の意味が伝わってきた。
娘がこれからの社会に微力ながら役立ってくれれば」と言葉を継いだ。

保護者にも、福祉の重要性を丁寧に説く。
その実直な取り組みが、淘汰の時代を迎える福祉系大学の
生き残りの鍵を握るのかもしれない。

◆小冊子贈呈します

「PTA再考」や「特別支援」のシリーズを中心に、
24回分の記事を収録した小冊子「教育ルネサンス5」が出来ました。
希望者は〒住所、氏名を書いた紙片と送料180円(1冊)分の切手を同封、
〒100・8055読売新聞東京本社宣伝部「教育ルネサンス5」係へ。
ホームページ(http://www.yomiuri.co.jp/education)からも申し込めます。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080822-OYT8T00189.htm

万能細胞 iPSの奇跡 日本発 再生医療に光

(読売 8月18日)

京都大学の山中伸弥教授が作製に成功した新型万能細胞(iPS細胞)。
再生医療の切り札と期待を集め、「ノーベル賞級の研究成果」と評価。
iPS細胞が、なぜこれほど注目されるのか、
将来的にどんな医療を切り開くのか、研究の現状を探った。
Q1 なぜ世界が注目

人間は、約60兆個の細胞からなる。
元々は1個の受精卵が分裂を繰り返し、神経や筋肉、皮膚など体を
構成する約200種類の細胞に変化。
受精卵は、様々な細胞に変化する「万能性」を持つが、
いったん神経などに変化すると、もう別の細胞に後戻りできない。
この生物学の常識を覆したのが、iPS細胞。
皮膚細胞に数種類の遺伝子を入れるだけで、万能性を獲得。
時計の針を巻き戻す現象は、初期化(リプログラミング)と呼ばれ、
iPS細胞の開発は「タイムマシンの開発」と称賛。

iPS細胞の正式名は、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)。
iが小文字なのは、人気音楽プレーヤー「iPod」にちなんだ。
iPS細胞の登場で期待が高まっているのは、病気やけがで失った機能を
回復させる再生医療の実現。

心臓の細胞(心筋細胞)の一部が壊死している心筋梗塞の場合、
iPS細胞から変化させた心筋細胞を、患者の心臓の壊死した部分に
移植すれば、心機能の回復が期待。

インスリンというホルモンの不足で起きる糖尿病も、
iPS細胞からインスリンを分泌する、膵臓のβ細胞を作って
患者に移植すれば、治療できる。
現在はまだ技術的に難しいが、iPS細胞を使い、心臓や肝臓など
臓器を丸ごと作って取り換えることも、将来できるかもしれない。
iPS細胞の登場で再生医療の夢が広がったが、
安全性の確認など実用化までには10年以上かかると予想。
すぐにでも活用できると見られているのは、
iPS細胞を使った病気の原因解明や新薬開発への応用。
それぞれ神経や筋肉の難病であるパーキンソン病や筋ジストロフィーなどの
患者から、iPS細胞を作製して、神経や筋肉に変化させる過程で、
どんな異常が起きているかをつぶさに観察することで、
病気発症の仕組みが解明できると期待。

新薬の効果や毒性も、シャーレ上で確認できる。
国内外の製薬業界も注目し、研究が加速。

Q2 ES細胞に対する利点は?

iPS細胞の利点は二つ。
一つは、倫理的な問題が少ない点。
同様に万能細胞として注目されている胚性幹細胞(ES細胞)は、
人の生命の萌芽である受精卵を壊して作るため、実用化に向けた障壁に。
米ブッシュ大統領は、人のES細胞を作製する研究に
連邦予算を付けることに強く反対。
日本でも、人のES細胞研究が、国の指針で厳しく制限。
iPS細胞は、皮膚細胞などから作製できるため倫理問題は少ない。
「受精の瞬間」を、人の誕生ととらえるカトリックの影響が強いイタリアなどでも、
万能細胞の研究を推進できるようになった。
もう一つの利点は、患者本人の細胞から作製できるため、
拒絶反応の心配がない。
患者本人の遺伝情報を持たないES細胞では、拒絶反応が避けられない。
これを回避するには、クローン技術を使って、卵子に、
患者の皮膚細胞などの細胞核を入れた「クローン胚」を作製、
そこから患者本人の遺伝情報を持つES細胞を作る必要。
クローンES細胞は、人ではまだ作製に成功していないが、
クローン人間作りにつながる恐れなどから、多くの国が作製を厳しく制限。
iPS細胞を利用すれば、クローン技術を使う必要がなくなる。
世界初のクローン羊ドリーを誕生させた、英エディンバラ大学の
イアン・ウィルムット教授も、すでにiPS細胞の研究に着手。

Q3 作り方は?
iPS細胞の作製は簡単。
「基本的なバイオテクノロジー技術があれば、誰でもできる」(山中教授)。

取り出した皮膚や胃の細胞などに、2~4種類の遺伝子を
ウイルスを使って入れ込むだけ。
遺伝子は、山中教授が、ES細胞の万能性にかかわる
遺伝子の中から探り当てた。
最初にマウスのiPS細胞を作った際には、
「Oct3/4」、「Sox2」、「Klf4」、「c―Myc」の4遺伝子を使用。
米ウィスコンシン大のジェームズ・トムソン教授らは、
山中教授が使った「Oct3/4」「Sox2」の2遺伝子に、
別の2遺伝子を組み合わせた方法で成功。

これらの遺伝子は、細胞のDNAの狙った部位に入れることができず、
細胞ががん化する恐れもある。
使う遺伝子は少ないほどよく、山中教授は、4遺伝子のうち、
がん遺伝子の「c―Myc」を抜いた3遺伝子でもiPS細胞を作製。

作製法は、これだけではない。
米スクリプス研究所のシェン・ディン准教授は、安全性の高い化合物と
2遺伝子を組み合わせた方法でも成功。
安全で効率の良い作製法を巡って、世界が激しい競争を繰り広げている。
Q4 研究の現状は?
2006年8月に、山中教授がマウスのiPS細胞の作製を発表して以来、
世界中で研究に火がついた。
昨年暮れには、米マサチューセッツ工科大(MIT)などのチームが、
iPS細胞由来の造血幹細胞(血液のもととなる細胞)で、
重症貧血マウスの症状改善に成功。
人間には、赤血球が変形して、酸素の運搬能力が低下する
「鎌状赤血球貧血」という遺伝病があるが、こうした病気の治療につながる。
米ハーバード大などのグループは8月7日、パーキンソン病や糖尿病など
10種類の病気の患者の皮膚などから、iPS細胞の作製に成功。
抜本的な治療法のない難治性疾患で、原因を解明することで
新薬の開発につながると期待。
激しい国際競争に対抗するため、日本でも研究拠点の整備が進む。
慶応大は、iPS細胞から作った神経細胞を、脊髄損傷マウスの患部に
移植する実験で、マヒをある程度回復させる効果を上げている。
交通事故など不慮の事故で、脊髄を損傷した患者に希望を与える成果。

国立病院機構大阪医療センターと共同で、
200種類以上のiPS細胞を作るバンクの設立も目指している。
京大は、マウスiPS細胞から、心筋梗塞などの治療に役立つ心筋細胞や
毛細血管の作製に成功。
マウスiPS細胞からは、輸血治療につながる血小板(東京大)や、
視力の回復に必要な網膜の細胞(理化学研究所)などができており、
国内の研究も着実に進展。
世界各地の研究成果を、医療や創薬開発につなげるには、
標準的な作製法や評価法が必要だとの意見が出始めており、
研究者間で協調する動きもある。

日本発の革新的な技術であるiPS細胞。
「再生医療の発展に大きな可能性を切りひらく画期的な成果」(福田首相)
として、政府も過去に例のないスピードで支援策を打ち出した。
文部科学省は、人のiPS細胞作製の公表からわずか1か月で、
今後5年間で総額100億円の研究費を投入する計画を策定。
今年4月には、京大iPS細胞研究センターを中心に、
約20の大学などでつくる研究ネットワークを発足。
政府の科学技術政策を決める総合科学技術会議は6月、
iPS細胞の実用化に向けた工程表を策定し、世界に先駆けて
iPS細胞を使った再生医療の実現を目指す。
こうした一連の動きは、国のバックアップなしに研究の結実はない
との判断が働いたからだ。
米国は有望な研究には、個人の寄付や企業などの潤沢な資金が投資。
世界トップレベルの大学や研究機関が集まるカリフォルニア州や
マサチューセッツ州は、数百億円単位の研究費を投じ、幹細胞研究を推進。
iPS細胞の登場により、細胞や分析機器などの幹細胞市場は活性化。
米国の幹細胞市場は、年率30%で成長し、
2012年には約460億円に達する。
幹細胞市場の発展で重要になってくるのが、知的財産の確保。
外国の企業に特許を押さえられると、iPS細胞を利用した再生医療が実現しても、
医療費の高騰を招く恐れがある。
京都大は6月、三井住友銀行など金融3社の出資をもとに、
iPS細胞の関連特許を管理・活用する会社を設立。
他大学や研究機関の知財も管理し、
知財の面でもオールジャパン体制を目指す。
松本紘・京大次期学長は、「日本全体のiPS細胞研究を発展させたい」。

2008年8月31日日曜日

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 生駒俊明氏インタビュー

(日経 8月24日)

生駒俊明・JST研究開発戦略センター長

―科学技術の開発で、これから重視すべきテーマは。

物質を対象とした科学は、20世紀に基盤研究がほとんど終わった。
これからは新しい発見を求めるより、社会のための科学技術として
社会のニーズが強い分野が伸びる

環境やエネルギーが重要な切り口となるだろう。
その際、全体を見渡した「構想設計」が大切になる。

例えば、街づくりで考えれば、個別の交通機関のエネルギー効率を
改善するだけでなく、都市交通システムをどう描くかという
全体を包含したデザインが重要。

技術は従属的になり、既存技術を使って全く新しいものを作る。
これが構想設計だ。
米アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod」がよい例。

一般的に、日本企業はこうした考え方が得意ではない。
日本では例外的に、任天堂が技術至上主義に陥らずうまい。

―構想設計が弱い日本企業が生き残るには、どんな方法があるか?

逆説的だが、多くの日本企業は構想設計に依存しない、
目の前の需要に向かって改良を重ねる分野が強い。
その点で、素材や部品は手堅い。

高効率が求められる電源も、素材が絡みチャンスが大きい。
工作機械も産業としてしっかりしている。
希少金属を使わなかったり、環境を考慮したりといった制約を
どううまく生かすかが重要。

―どんな分野なら新発見が期待できるか?

ライフサイエンスは、研究が始まったばかり。
何が起きるか分からない。
医療や食料の効率生産など、実現までは時間がかかるが
大きな分野が控えている。

例えば農業では、求められる味に応じて製品を作り、
土壌や味をセンサーで管理する手法が広がる。
新薬開発は、日本では難しい。
国の仕組みで治験に時間がかかりすぎ、望みが薄い。

全地球測位システム(GPS)やPOS(販売時点情報管理)といった
IT(情報技術)により、サービス業の生産性向上も進む。
技術を裏付けにしたアイデアにより、サービス業では
新規市場が生まれる機会が多い。

<生駒俊明氏 略歴>
1941年生まれ。東京大学教授として半導体を研究。
産学連携の実践として、94年に日本テキサス・インスツルメンツに移り、
97年に社長。
退任後、現在は日立金属の社外取締役やキヤノンの顧問を務める。
企業経営や技術革新についての発言も多い。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MS3Z2100W%2022082008

ヤマハ発動機が注目するアスタキサンチンの可能性

(日経ヘルス 2008/08/18)

脳の認知機能の改善やメタボリックシンドロームに対する効果で、
最近注目されている「アスタキサンチン」。

アスタキサンチンを、工業的に安全かつ安定的に製造するヤマハ発動機は、
世界でもっとも高齢化社会が進行する日本の現状および将来を見据え、
ライフサイエンス事業を展開。

キーワードは,“アンチエイジング”。
ライフサイエンス事業推進部研究開発グループの
石倉正治グループリーダーに、研究の経緯や今後の開発の展望を聞いた。

◆はじまりは、地球環境問題への取り組みから

アスタキサンチンは、サケやイクラ、エビ、オキアミに多く含まれる
天然の色素成分で、海洋性のカロテノイドの一種。
強力な抗酸化作用を持つ。
自然界では、サケなどのエサとなる藻類に多く含まれている。

バイクやボートなどの製造を行うメーカーであるヤマハ発動機が、
畑違いの健康食品素材「アスタキサンチン」の製造を始めたのは、
地球環境問題への取り組みの一環。

「バイクやボートを動かすと、二酸化炭素(CO2)を排出。
企業は、地球温暖化対策としてのCO2削減が求められる。
排出するCO2を固定する方法として、植樹などがあるが、
ヤマハ発動機が持っている技術を生かしながら、
植物の光合成を活用する方法がないかと模索したのが、
培養した微細藻類の光合成によるCO2の固定。
微細藻類を使えば、植樹の十数倍のCO2を固定できると試算」

研究の結果、藻類を大量培養することに成功。
エビやカニの幼生時のエサとなる微細藻類「キートセラス藻」を供給。
その後、藻類が持つ機能性成分の活用に研究のテーマを拡大。
最初の素材が、アスタキサンチン。

◆“植物”を使って工業的に生産純度高く、安定供給

「アスタキサンチンを作り出すのは、“ヘマトコッカス藻”という藻。
通常は緑色だが、生息の条件によってアスタキサンチンを生成して赤くなる。
ヘマトコッカス藻が、より多くのアスタキサンチンを
作り出す環境条件を研究。
藻の培養装置の中のCO2濃度や光の照射量、
培養液中のミネラル量やpHなどをコントロールすることで、
アスタキサンチンをより多く含むヘマトコッカス藻の大量培養に成功」

その結果、生産量が天候に左右されがちだった“植物”を、
工業的に安定生産することができる。
同社で生成されたアスタキサンチンは、純度を高くすることができる。
純度は、97%以上。
屋内のクリーンルームに設置された培養装置で作り出され、
カビやバクテリアなどの混入による汚染(コンタミネーション)を防げる。

◆アンチエイジング素材として機能性を追究

「研究は、大量生産技術から素材の健康に対する研究開発へ」。
アスタキサンチンは、強力な抗酸化物質。
目や肌、生活習慣病への効果が研究されていた。
同社では、「脳への作用」と「メタボリックシンドロームへの作用」に
関する研究に力を入れた。

「アスタキサンチンは、炎症や酸化を抑える成分として、
老化や疾患の発生プロセスの上流で働く。
その特性を生かせば、エイジングによる症状や不調を改善する素材として
機能すると考え、アンチエイジング分野での機能性研究に力を入れている。
高齢化社会の進展に伴い、生活習慣病の予防や脳機能の維持・改善に
対するニーズは、急速に高まることが予測。

特に、脳の認知機能に関する研究は、バイクなどの製造メーカーとして、
安全な運転をしてもらうかという観点からも社会的意義が大きい。
最新の研究では、アスタキサンチンがパーキンソン病の改善効果を
期待できるというデータも。
“脳のアンチエイジング”と呼べる分野において研究を進め、
アスタキサンチンのアンチエイジングパワーをさらに追究していきたい」

逼迫する医療保険財政、現実に起こりつつある労働力不足、
いつまでも健康で美しくありたいという
人間本来が持つ高いQOLや若さへの憧憬。
これら社会環境および消費者のニーズに応えるテーマとして、
アンチエイジングは最重要テーマ。

本格的に立ち上がることが予想されるアンチエイジング市場。
その最右翼の健康成分として、アスタキサンチンに期待。

http://sangyo.jp/foodhealth/article/20080818.html

記憶の仕組みにアスパラガスのアミノ酸 岡山大が解明

(朝日 2008年8月20日)

アスパラガスに含まれるアミノ酸の一種「アスパラギン酸」が、
神経細胞で情報伝達にかかわる仕組みを、
岡山大大学院医歯薬学総合研究科の森山芳則教授らが突き止め、
米科学アカデミー紀要電子版に発表。

この仕組みの異常で、発達障害などが起こる難病になる可能性も示され、
記憶・学習の仕組み解明につながりそう。

記憶にかかわる脳の海馬で、アスパラギン酸が神経伝達物質の
グルタミン酸とともに存在することなどは知られていた。
大学院生の宮地孝明さんらは、細胞内でアスパラギン酸を運ぶ
たんぱく質を特定し、小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT)と命名。

VEATは、神経細胞のつなぎ目にある神経伝達物質を蓄える袋に、
アスパラギン酸を運びこむ。
蓄積されたアスパラギン酸は、この袋から分泌されて神経伝達物質になる。

これまでVEATは別の働きで知られており、
その異常で、幼児期から精神発達や運動障害が起こる「サラ病」
なることがわかっていた。
サラ病は、神経細胞の情報伝達の異常で起こる可能性が示された。

森山教授は、「グルタミン酸だけでは説明が難しい情報伝達の仕組みが、
アスパラギン酸の働きを調べることでわかるかも知れない。
認知症などの薬の開発につながる可能性もある」

http://www.asahi.com/science/update/0818/OSK200808180040.html

白血病を乗り越え金メダル、オランダの水泳選手

(CNN 8月21日)

白血病を乗り越えたオランダの選手が、
北京五輪水泳の新種目オープンウォーター男子10キロで
金メダルを獲得。

白血病にかかったことで、一歩一歩、着実に積み重ねることの
大切さを学んだ、と話している。

同種目で初代の金メダリストとなったのは、
マーテン・ファン・デル・バイデン選手。
1時間51分51秒6で優勝し、2位のデイビッド・デイビス選手(英国)に
約2秒の差をつけた。

ファン・デル・バイデン選手は2001年に白血病にかかり、
2003年に復帰。
白血病克服後のタイムは、病気になる前より早くなった。

白血病の治療では、幹細胞移植手術を受けた。
「幸運にも、移植手術を受けて治ることができた。
世界中で続けられている研究成果の手術で、
研究に資金援助してくれている人々、過去に援助してくれた人々に感謝。
この移植手術なかったら、この場所には立てなかった」

http://www.cnn.co.jp/sports/CNN200808210026.html

キャンパス探訪(8)説明会場 互いに間借り

(読売 8月21日)

東西の大学が、互いのキャンパスで自分の大学をアピール。
早稲田大学の早稲田キャンパスが、オープンキャンパスで、
大学のシンボル・大隈講堂と目と鼻の先にある26号館だけは
別の空気が流れていた。
「笑いを科学する~笑い測定機の冒険」と模擬講義を披露したのは、
関西大学社会学部の木村洋二教授(60)。

「たいていのことが学べる早稲田も、この分野はないだろうという判断」と
関大入試センターアドミッションオフィスの藪田和広課長。
ほお、腹筋、横隔膜の振動で笑いの度合いを測定するという研究は
確かにユニークで、関西ならでは、のテーマ。
関大は2010年、堺市に開設予定の健康文化学部に
「ユーモア科学専攻」も設ける計画。
日本笑い学会副会長も務める木村教授に、白羽の矢が立った。

関西では、「関関同立」と並び称される有力私大とは言え、
東京での催しには、大学も集客に不安。
しかし、講義の聴講者は午前と午後の2回で計50人を超え、
藪田さんは「上出来です」と胸をなで下ろした。

中には、関大が第1志望という東京都内の高校3年生の女子生徒の姿も。
授業での測定機の実演にも、進んでモデルに。
親せきを頼り、8月下旬の関大でのオープンキャンパスにも足を運ぶ。

同じ日、関大の千里山キャンパスでは、
早大のオープンキャンパスが開かれ、約700人が訪れた。
早大は3室を借り、学部説明会や模擬講義を3回ずつ開いたほか、
4人程度の英語の少人数レッスン「チュートリアルイングリッシュ」も披露、
計6回の授業を約30人が体験。

米国人講師が、「お互いに自己紹介して、好きなスポーツや音楽を
尋ねてみよう」と語りかけると、高校生らは時々もたつきながらも、
会話を始めた。
「質問に答える時、別の話題をつけ加える。
その話題について質問を返すと会話が続くよ」と、
講師がコツを伝授しながら授業が進んだ。

早大商学部が第1志望で、兵庫県加古川市の1浪生の男性(19)は、
「話したり聴いたりする力がつきそう。早く大学に入って授業を受けたい。
夏休みは、勉強の大切な時期なので、東京を往復するのは難しい。
近くでやってもらえて助かります」。

田中愛治・教務部長(政治経済学部教授)は、
「予想以上の参加者」と手応えを感じた様子。
チュートリアルイングリッシュについて、「早稲田は、英語を道具として
使いこなすことを重視。その点も、受験生に大いにアピールできた」。

互いのキャンパスを間借りした実験的なイベントは、
両校が5月に教育研究協力の協定を結んだことで実現。
形を変えた入試説明会と言えなくもないが、ともに一定の成果は挙げたよう。

◆早大生と関大生の出身地

早大の今春の一般入試合格者(約1万4000人)では、
関東の高校出身者が70%、中部が11%。近畿は6%強。
関大の学部生(約2万6000人)の出身地は、
近畿(福井含む、三重除く)が78%。
中国、東海、四国、九州・沖縄と続き、関東は1%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080821-OYT8T00220.htm

2008年8月30日土曜日

地熱力(下)「ポスト石油」へ開発競争

(読売 8月28日)

「途上国では、『エネルギーが欲しい』という熱い期待を感じます」と、
福岡市に本社を置く建設コンサルタント会社「西日本技術開発」で、
地熱部を率いる田籠功一部長(53)。

同社は、九州電力の子会社だが、世界の地熱発電関係者の間では
知らない者はいない存在。

日本最大の発電規模を持つ八丁原発電所(大分県九重町)の運営も
担当する同社の強みは、資源探査から発電所建設、管理までを、
総合的に担える技術力。

国内の地熱開発が停滞する中、「このままでは技術力が持ち腐れになる」と
世界に活路を求め、米国やニュージーランドの企業と、
途上国の国家プロジェクト受注競争にしのぎを削る。
活躍の場は、アジア、中南米に広がり、最近ではアフリカからの引き合いも。

地熱開発にかける熱意は、先進国も例外ではない。
発電量世界一の座を争うのは、国策で開発を推進する米国とフィリピン。
火山や地熱資源に恵まれていない豪州、欧州連合(EU)諸国も熱心。

豪州のクーパー盆地では、地下約4キロ・メートルまで掘削。
高温の岩盤に水を注入し、できた蒸気でタービンを回す次世代発電をめざす。
ドイツでも、高価格で電力を買い取る優遇制度が推進力となり、
昨年、わずか4年で二つの発電所が完成、世界を驚かせた。

「産油国も、石油の枯渇を見据えて地熱の可能性を真剣に模索している」。
九州大学の江原幸雄教授(60)の研究室では、
博士課程5人中4人が、アジアや中東からの留学生。

国立インドネシア大講師のヤヤン・ソフヤンさん(33)もその一人。
地熱開発の探査技術を学ぼうと、昨年来日。
インドネシアは、経済発展に伴うエネルギー需要の急増で、
2002年に原油輸入国に転じ、世界有数を誇る自国の地熱資源への関心が高い。
ソフヤンさんは、「大統領令で掲げられたのは、
発電量を05年から20年間で10倍以上にする国家目標。
地球温暖化の観点からも、二酸化炭素を出さない地熱発電はさらに注目」。

産油国・イランのエネルギー省から留学中のフセイン・ユセフィさん(37)も、
ポスト石油時代を見越す。
「現在、国内初となる出力5万キロ・ワットの地熱発電所を北西部に建設。
我が国は、石油が安く手に入るが、将来の様相は違うはず」。
世界では、日本とは別次元の資源戦略が進んでいる。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20080828-OYT8T00279.htm

キャンパス探訪(7)地元生徒は「未来博士」

(読売 8月20日)

地域の人も対象に、オープンキャンパス(見学会)を開く大学院がある。

ビーカーからスポイト状のピペットで水を吸い取り、慎重な手つきで
メスシリンダーに移す中学生たち。
5~6人の班に一つずつ、シャーレに入った黒い液体が手渡されると、
生徒の好奇心に満ちた視線が一斉に注がれた。

北陸先端科学技術大学院大学のオープンキャンパスで、
一際目を引いたのは、地元の中高生らに模擬授業と実験実習を
経験させる「一日大学院」。
先端科学技術の一端にふれてもらい、理科への興味を広げてもらう狙いで、
今年は169人が集まった。

マテリアルサイエンス研究科の前之園信也准教授(38)が企画した
実習のテーマは、「謎の液体磁石」。
正体は、油の中に細かい磁石の粒子を分散させた液体「磁性流体」で、
NASA(米航空宇宙局)が宇宙服のつなぎ目をふさぐシール材として開発。

磁石を近づけると、液体が瞬時にウニのとげのような形に姿を変える。
圧巻は、強力な磁石を使った実験。
ふたをとったシャーレを逆さにしても、とがった液体は落下せず、
生徒が発する感嘆のため息が小さな実験室に広がった。

実験後、「未来博士」の修了証を受け取った市立辰口中学校1年の
田畑孝憲君(13)は、「固体の磁石しか知らなかったから、とてもおもしろかった。
高校進学の手がかりになった」。

同大は、地域との密着をオープンキャンパスの柱の一つに掲げている。
先端的な研究内容のパネル展示も、一般の人でも分かるように
かみ砕いて書かれている。
地元住民による郷土料理の販売ブースまであり、
さながら地域のお祭りといった雰囲気。

「大学院大学は学部がないから、知名度を上げて全国から優秀な学生を
集める必要がある。そのためにはまず、先進的な研究内容を公開し、
地域に愛される大学になることが不可欠」と片山卓也学長(69)。
この日の参加者約970人のうち、8割余りは地元住民が占めた。

一日大学院は、学生を受け入れ始めて間もない1993年に始めた。
今年は、カメラが人の顔を見つけて焦点を合わせる画像認識技術の実習、
赤外線を実体験するプログラムなど6講座が準備。

「職場体験や総合的な学習の時間でも協力してもらっており、
とてもありがたい。一日大学院で生徒たちが理科により興味を持ってくれれば」
と生徒を引率した辰口中の西田充宏教諭(43)。

「ピペットで水を測るだけでも『おもしろい』という生徒がいたのは、
理科の授業からいかに実験の機会が失われているかの証しだ」と
前之園准教授。
「理科離れと言われるが、一日大学院を受けた生徒が一人でも多く
科学の道へ進んでほしい」と期待。

「未来博士」の言葉には、将来、同大の研究を担う本物の博士が
生まれてほしいという願いも込められている。

◆大学院大学

学部を持たない大学院だけの大学。
学部教育に重点が置かれていた従来の大学を改革し、
先導性を持った教育・研究者を養成するため、
文部省(当時)の大学設置審議会が1974年に提言、
76年に学校教育法が改正。
82年開学の私立国際大学(新潟)が第1号で、
現在国立4、公立2、私立20の計26校。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080820-OYT8T00183.htm

2008年8月29日金曜日

地熱力(中)温泉地 発電計画に反発

(読売 8月27日)

群馬・草津町の草津温泉で、スローガン入りのうちわが翻った。
「地熱発電で草津温泉は枯れる」、「守ろう日本の温泉文化」。
町民約1100人が、湯が自然湧出する町のシンボル「湯畑」で、
地熱発電への反対集会を繰り広げた。

問題の発端は、全国一のキャベツ生産地として知られる
隣の嬬恋村が公表した調査報告書。

地熱発電を活用した「エコ村」構想を抱く熊川栄村長(61)の肝いりで、
草津温泉の主要源泉から約3・5キロ・メートルの場所を含む
村内の2地点を候補地とし、開発を目指す内容。

草津は、町民の9割以上が温泉観光で生きる町。
昔に比べ、湯量が減少傾向にある不安感もあって、
町民にとって地熱発電は「資源を奪う脅威」に映る。

町議会も計画を知るやいなや、東北や九州の地熱発電所を視察。
黒岩信忠議長(61)は、「温泉枯渇や地滑りなど、地熱発電の影響と思われる
事例が各地にあった。調査だけでもと認めてしまえば、取り返しがつかない」。

嬬恋村の計画策定にかかわった芦田譲・京大名誉教授(64)は、
「日本では、発電に使った蒸気も水に戻し、地下に還元している。
地熱発電の温泉への影響が、科学的に裏づけられた例はない」として、
冷静な対話を訴えたが、草津町の不信感は根強く、
両者は同じ場で一度も話し合うことはなかった。
調査計画も、国の補助金枠に漏れ、事実上凍結。

「なんとか温泉と地熱の対立構造を崩す突破口にしたい」。
産業技術総合研究所の村岡洋文・地熱資源研究グループ長(56)と
「地熱技術開発」は、既存の温泉に影響を与えず設置できる小型の
「温泉発電」システムを開発。実用化に向けた準備を進めている。

浴用より高温の温泉が出る場合、草津温泉のように成分を薄めずに
「いい湯加減」にする〈湯もみ〉が欠かせない。
温泉発電は、本来は捨てているこの熱を発電に利用。
沸点が低いアンモニアを入れた管を熱水の中に通し、
沸騰させてタービンを回す仕組み。

第1号機の設置候補地は、長野県小谷村。
静岡県や北海道など、複数の温泉地も導入に向け検討を始めた。
村岡さんの推定では、温泉発電が可能な温泉は全国に1591か所。
未利用の熱だけで、現在の地熱発電の発電量(約55万キロ・ワット)を
上回る72・3万キロ・ワットの発電ができる計算。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20080827-OYT8T00362.htm

岩手大、中国へ技術移転 県内企業進出に光

(岩手日報 8月27日)

岩手大は、同大工学部が開発した高強度鋳鉄製造技術を、
中国・大連市の鋳造メーカー大連四達鋳造有限公司に
「技術移転」する方向で、同社と大筋合意。

日本では、既に企業で取り入れられ、自動車用エンジン部品製造に
使われている技術だが、同社は建設用工作機械製造などに応用する。

中国との経済交流は、国情の違いもあって、
地方企業が中国企業とビジネス契約を結ぶのは難しく、
同大が懸け橋となり、県内企業のビジネスチャンスを広げる。

日本の大学が、中国の企業に技術移転するのは先駆的な試み。
技術移転を進めているのは、岩手大工学部の堀江皓客員教授が開発した
高強度、軽量化の鋳鉄製造技術。

岩手大は今年3月、大連理工大、大連四達鋳造有限公司と
技術移転に向けた協定書を締結。
8月上旬、堀江教授らが訪中した際、同社が製品化に向け技術を
買い受ける方向で合意。金額については調整中。

今回の技術移転が正式決定し、中国で実用化に成功すれば、
「岩手発」の技術に信用が高まり、本県の鋳物企業などが
中国進出する可能性も高まる。
堀江教授は、「協定締結後、第1号の大きな成果だ」。

岩手大は2003年、大学と大学、地域と地域が産学官連携を深め、
国境を越えたビジネスチャンスを創出する「UURRプロジェクト」を開始。
05年に、大連理工大と学術交流協定を締結。
今年3月の協定締結は、同理工大が橋渡し役。

岩手大の国際連携・技術移転室長の小野寺純治教授は、
「大学間の交流から企業を巻き込み、技術移転で海外企業の信頼を
得ることで、県内企業の中国展開、地域産業振興にもつながる。
双方にとってメリットは大きい」と意義を強調。

◆高強度鋳鉄製造技術

鋳鉄のうち、振動吸収や切削、熱伝導、耐摩耗などに優れている
片状黒鉛鋳鉄の高強度化、軽量化を図る技術。
岩手大の堀江皓教授が開発、このノウハウを今回、中国の企業に移転。

片状黒鉛鋳鉄は、国内で年間300万トン程度生産され、
自動車エンジンのシリンダーブロックやピストンリング、ブレーキディスク、
工作機械などに使われている。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080827_3

「親知らず」からiPS細胞作製 バンク構想に弾み

(朝日 2008年8月22日)

抜歯した「親知らず」から万能細胞(iPS細胞)をつくることに、
産業技術総合研究所の大串始・主幹研究員らのグループが成功。
歯科医院などで抜いた歯を使えば、iPS細胞づくりで
患者に余計な負担をかけずにすむ。
将来のiPS細胞バンクの構築などに役立ちそう。

10歳の女児が、歯の矯正治療の際に抜いた「親知らず」から、
歯や骨のもとになる間葉系細胞を取り出し、
京都大の山中伸弥教授がiPS細胞づくりで使った3種類の遺伝子を
導入したところ、iPS細胞ができた。
山中教授は、皮膚の細胞を使っていた。

iPS細胞は、さまざまな細胞や組織になる能力があり、
患者の細胞からつくれば、拒絶反応がない細胞移植が可能になると期待。
しかし、個別の患者ごとにつくるとなると、
現実には手間や費用がかかる。
多くの人のiPS細胞を、あらかじめ集めたiPS細胞バンクづくりが構想。

大串さんは、「細胞バンクの構築には、多くの細胞源が必要。
抜歯された歯は、もともと廃棄されるもので、
患者に新たな負担がない点でも有望。
今後は、大人の歯や乳歯でも試したい」

http://www.asahi.com/science/update/0822/TKY200808220042.html

キャンパス探訪(6)経営学 マックで身近に

(読売 8月19日)

ハンバーガー店の<経営>を、高校生に考えさせる取り組みがある。

昼食時の教室は、ハンバーガーのにおいでいっぱいになった。
専修大学経営学部が、オープンキャンパスで用意した公開講座
「高校生のための経営学実践講座」は、
「思わず入りたくなるハンバーガーショップ」を提案するのが課題。
事前に申し込んだ高校生約60人が10組に分かれ、
指導役の大学生とともに丸一日知恵を絞った。

司会者は、日本マクドナルドの社員。
昼食にハンバーガーが振る舞われ、最後の発表時には、感想を話す
生徒向けにフライドポテトのサービス券も用意されたが、あくまでおまけ。
大学側の企画の狙いは、「高校生にもっと経営学を知ってほしいから」。
講座の進め方は、事前に社員と大学で念入りに詰めている。

「経営学は、高校の授業で触れられることもほとんどなく、
高校生に身近ではない。
高校の先生も、進路指導で経済学部と経営学部を区別していない」。
企画の責任者、福原康司准教授(37)が、経営学を取り巻く事情を説明。

この講座が始まったのは2年前。
広石忠司学部長と、専修大の卒業生でもあるマクドナルド社の社員が
知り合ったのがきっかけで、大学側は「高校生にも、身近な会社を対象に
経営学を考えさせてみよう」と考えた。

しかし、オープンキャンパスと日程が別だった初回の参加者は10人足らず。
「特定企業が絡んだ授業に、生徒を派遣させるのはちょっと……」と
戸惑う高校も少なくなかった。
首都圏の高校に熱心に説明して回った結果が今回だけに、
1、2年目の責任者だった馬場杉夫教授(42)も
「ようやく認知されたという思いだ」。

オープンキャンパス参加者の高校生らが顔をのぞかせる中、
講座は午後から、チームごとの発表になった。
「カラオケが歌える個室があるといい」、
「食べ放題や、もっと小さなサイズのハンバーガーがあるといい」、
「高校生専用のカードを作ってはどうか」と
利用頻度の高い高校生ならではの提案が続いた。

最後に、福原准教授が、「ビジネスの基本はウィン・ウィン(互いに得をすること)。
提案の中でも、高校生だけでなく、マックの側もこれはいいと思える提案が大切」
とミニ講義。優秀なチームを、大学とマクドナルド社双方で選んで表彰。

千葉県立八千代高校から生徒を引率した吉野純一教諭(45)は、
高校生を話し合わせる技に感心した様子。
「何かを企画することに興味がある」と話していた高校2年の金子あんずさんは、
「経営学部がより身近になりました」。

高校生に、大学が学問の面白さを伝える取り組みは、
ひと昔前とは比較にならないほど重要。
オープンキャンパスにこそ、そんな企画がもっとあっていい。

◆高校の経済学習と経営学

現行の学習指導要領によると、高校の公民の科目「現代社会」には、
「現代の経済社会と経済活動の在り方」の項がある。
「政治・経済」では「現代の経済」の項で、
「経済社会の変容と現代経済の仕組み」や「国民経済と国際経済」を学ぶ。
それぞれ企業の働きや役割にも触れることになっているが、
経営学に直結するような項目はない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080819-OYT8T00228.htm

2008年8月28日木曜日

2016年の五輪でメダル量産へ…文科省が国家プロジェクト

(読売 8月26日)

文部科学省は、東京が開催都市に立候補している
2016年五輪でのメダル量産を目指し、国として強化を後押しする
新たな体制をスタートさせる方針を固めた。

「競技力向上ナショナルプロジェクト」という名目で、
開催地五輪での躍進へ向け、09年度の概算要求で約12億5000万円を計上。

プロジェクトでは、柔道やレスリングなどメダル獲得が有望な競技を対象に、
競技全体を統括する「ナショナルコーチ」制度を創設
ライバル選手の視察、ルール改正を巡る情報収集や分析などを専門に行い、
メダル獲得をサポートする。
16年五輪で主力となるジュニア世代をターゲットに、
重点的な育成
にも取り組む方針。

北京五輪は、国家主導の強化策で躍進する国々が目立った。
中国は、金メダル数が前回の32個から51個へ急増し、
米国を抜いて初の1位に。
外国人指導者を招へいするなどの強化策が実った。
12年にロンドン五輪を迎える英国も、金9個の10位から19個の4位に躍進。
強化費増加などの施策が効果を発揮。

これに対し、日本の金メダル9個は全体の8位。
今年1月にナショナルトレーニングセンターが完成して初の五輪となったが、
過去最多タイだったアテネ五輪の16個を大きく下回り、
日本オリンピック委員会(JOC)が目標に掲げた「二けた」に届かなかった。

不振の主な要因は、世代交代と対応の遅れ。
金9個のうち7個が、2大会連続の金メダル。
柔道は、一本を狙う日本のスタイルから、世界の潮流である
ポイント制への対応が遅れ、前回のメダル10個から7個に減少。
競技団体などから、国が本腰を入れて、
トップアスリートの強化に乗り出すよう求める声が上がっていた。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/news/topic/news/20080826-OYT1T00244.htm

地熱力(上)治療施設の全電力発電へ

(読売 8月26日)

地球内部の熱水を蒸気に変えてタービンを回す「地熱発電」。
火山国でありながら、国内での開発はここ10年、停滞気味だったが、
最近は風向きが変わってきた。
海外では、地球温暖化防止策としても熱い視線を浴びる。
貴重な純国産エネルギーの現状を追った。

桜島を望む鹿児島県指宿市の高台に立つ「メディポリス指宿」。
この地にかつてあったのは、旧年金福祉事業団が約200億円を投じた
保養施設「グリーンピア指宿」。
赤字経営で2002年に閉鎖後、鹿児島から成長した医薬品開発企業
「新日本科学」が約6億円で購入、06年に滞在型の健康医療施設として再生。

施設の目玉は、特殊な放射線をがん組織に集中させ、
高い治療効果を発揮している「粒子線治療センター」。
各自治体が誘致合戦を繰り広げる期待の新治療施設だが、
保険適用外のため、治療費が1人約300万円かかる。

「粒子線には、大量の電力が必要。
電気代を下げて、治療費を安くできないか?」。
永田良一・同社社長(50)の命を受けた田中清仁・施設企画室長(46)は、
「風力なども検討したが、台風が多く適地はない。
宿泊施設では、掘り当てた温泉水を床暖房や岩盤浴にも使い始め、
燃料代が年間4、5千万円も節約。
これを社長に報告すると、『地熱発電はいけるじゃないか』とGOサイン」

敷地の一角には今、地熱発電用の井戸を掘るやぐらが立つ。
「粒子線施設の全電力をまかなえそうだ」。
田中さんは、調査結果に確かな手応えを感じている。

日本は、世界有数の地熱資源大国。
全電力をまかなえるのに、なぜ活用しないのか」。
環境問題で発言が注目される米アースポリシー研究所の
レスター・ブラウン氏は、日本での講演でこんな疑問を投げかけた。

国内での地熱発電の新設は、00年以降ゼロ。
全国に18か所ある地熱発電所が発電できる総量は、電力全体の0・2%。
新設には様々な規制をクリアしなくてはならず、
完成まで通常15~25年かかって、開発コストに跳ね返るため。

中国やインドなどの旺盛な消費で、石油や天然ガスなどの需給構造は
不透明感を増すばかり。
経済産業省は、低温の熱水(100度程度)を利用する新型の
地熱発電導入を促進する支援策を打ち出した。
少しずつだが、潮目は変わりつつある。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20080826-OYT8T00359.htm

回腸パイエル板の復帰増強作用

(元気びと)

日本食品免疫学会2006年度大会 発表要旨 2006年10月24日(昭和女子大学)

トウモロコシ由来水溶性アラビノキシランの免疫調節作用とその機構の解析
○木本裕1,高田正保1,小川浩一1,山本幹男1 岡持晋治2,松本一朗2,阿部啓子2 (1日食化エ㈱研究所,2東大院・農)

【目的】 アラビノキシランは、アラビノース、および、キシロースを主構成糖とし、
β-1,4結合を主鎖に持つ水溶性の難消化性多糖で、
トウモロコシ種皮に含まれるヘミセルロースの主成分。

アラビノキシラン標品(Corn Husk Arabinoxylan:CHAX)は、
マウスヘの経口投与により、種々の免疫調節作用を持つことが確認、
35~60歳の健常なヒトを対象としたプラセボ対照二重盲験試験により、
被験者のQOL向上、免疫系への作用が示唆。

本研究では、CHAXの免疫調節作用機序の解明を目指し、
マウス脾臓、腸管パイエル板における遺伝子発現変化について、
マイクロアレイ解析による検討を行った。

【方法】5週齢のC3H/Hej系雌マウスを1週間予備飼育後、
6匹ずつ3群に分けた。
21日間の試験中、摂餌、飲水は自由、
試験群ⅠはCHAX摂取量が50mg/kg-wt、試験群Ⅱは150mg/kg-wt
となるように、毎日強制経口投与。
対照群には、水のみを同様に投与。

試験後、脾臓、腸管パイエル板を摘出し、一部はマイクロアレイ解析に供する
サンプルとして保存。
脾臓は、常法に従って浮遊細胞を調製し、
ConA刺激後のIL-2、IL-4、IL-12、IFN-γ産生量について測定。
十二指腸、空腸、回腸で観察された腸管パイエル板の数をカウント。
脾臓細胞におけるサイトカイン産生量を指標とし、
平均的な値を示した各群2個体を選択、脾臓、腸管パイエル板より
総RNAを抽出して、マイクロアレイ解析に供した。

【結果】 脾臓細胞でのサイトカイン産生量は、IL-2、IL-4、IFN-γにおいて、
CHAX摂取量依存的な産生量の増加が見られ、
IL-2とIL-4では有意差が認められた。
腸管パイエル板数も、対照群と比較して有意な増加。

CHAX摂取により発現変化が認められた転写産物数は、
脾臓では69個、腸管パイエル板では307個、
腸管パイエル板でリンパ球の増殖・分化を示唆する遺伝子群の
発現亢進が認められた。

以上から、CHAX摂取は免疫系を賦活化し、腸管パイエル板を
介するプロセスであることが示唆。

http://genkibito.com/aract/a007.html

消費者向け電子商取引22%増

(サイエンスポータル 2008年8月20日)

昨年の消費者向けの電子商取引市場規模は、5兆3千億円と
前年に比べ21.7%増加したことが、経済産業省の調査で明らか。
企業間の電子商取引も、162兆円と前年に比べ9.3%の増加。

消費者の販売促進行動支援や検索行動支援、コミュニケーション支援など
消費者を起点とするインターネット関連ビジネス市場も2兆円。

米国も、2007年の企業間電子商取引市場が、104兆円(前年比8.7%増)、
消費者向けが22.7兆円(同17.6%増)、日本同様、着実な拡大。

中国、韓国、台湾の消費者向けの電子商取引市場規模も、拡大傾向。
中国のインターネット利用者数は、2億1千万人(普及率16.0%)、
携帯電話利用者数は約4億人、携帯電話からの
インターネットアクセス経験者は5,040万人。
消費者向けの電子商取引市場規模は、82億人民元(約1,200億円)。

韓国は、インターネット利用率は75.5% 、
市場規模は10兆2千億ウォン(約1兆3千億円)。
台湾は、インターネット利用者1千万人(普及率、44.0%)、
消費者向けの電子商取引市場規模は1億800万台湾ドル(約3億8千万円)
と前年比30%台の伸び。

マレーシアの消費者向けの電子商取引市場規模は、非常に小さく、
本格的な市場を形成していないレベル。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0808/0808201.html

キャンパス探訪(5)業者の手法 学生に刺激

(読売 8月16日)

オープンキャンパスの業者委託が、在校生を刺激した。

初日、午前9時の気温が30度超。
中央大学には、最高の来場者数となる約7400人が詰めかけた。
その熱気の中で、法学部4年の飯島綾佳さん(22)が
「キャンパス、広いでしょ。勉強と遊びの両方を楽しめますよ」と
明るい声で大学自慢を始めた。

中大のオープンキャンパスは、前から学生が主役。
大学職員と一緒に計画を立て、サークル紹介までしている。
今年は、3日間で140人の学生が参加。
飯島さんは、2年続けて学生リーダーを務めるベテラン。

高校生が、「学生のガイドは親近感があり、わかりやすかった」。
飯島さんは、「こんなに大勢の来場者に感激」と笑顔でこたえる。
その表情に、昨年の屈託はなかった。

中大がオープンキャンパスの原型となる進学相談会を始めたのは、1984年。
広報担当の職員と学生数人だけで、切り盛りするこぢんまりした会。
担当職員も卒業生が多く、部屋は自然と学生のたまり場に。

そのうち、「自分たちで大学を紹介しよう」と話が盛り上がり、
高校生の申し込みを受けて学内を案内する「ツアーコンダクター」が始まった。
相談会も、キャンパス全体を使った大がかりな催しへと模様替え。

来場者の急増で、大学側は安全対策に頭を悩ませ、
昨年から誘導などをイベント業者に委託。
他大学では、企画から運営まで一括して請け負った実績を持つ業者だが、
中大では限定的な委託にとどめた。

しかし、学生スタッフには寝耳に水。
当日、受付係の学生と業者が、立つ場所を巡って険悪なやりとりをする場面も。
夜の反省会では、学生から「オープンキャンパスはだれのもの?」、
「何で私たちが企業に使われるの」と不満が噴き出した。

同時に、学生たちは思い知らされていた。
食堂でいつもの混乱がなかったのは、イベント業者が混雑状況や売店の場所を
的確に把握して放送したため。
特設案内所を、目立つ場所に置いたのも好評。
道に迷う来場者にいち早く声をかけていたのは、学生ではなく業者。

「主役は、来てくれる高校生。学べるところは学んで、協力していこうよ」。
飯島さんの一言で、ようやく学生たちに笑顔が戻った。

今年は、事前研修が3回開かれ、業者も同席。
席上、大学の広報担当者が「みんなで力を合わせなければ、うまくいかない」。
「『大学生になったらこんな人になりたい、ここで学生生活を過ごしたい』と
高校生に夢を持ってもらえる1日にしたい」と飯島さんは意欲を燃やす。
夏の大イベントは、学生の成長を促す場ともなっている。

◆進路選択まず「何を学ぶか」

全国高等学校進路指導協議会では、
〈1〉得意教科や将来の仕事などから志望校を検討
〈2〉情報を集めて比較
〈3〉入試制度を整理
〈4〉費用や保護者との話し合いなど、進学条件の整理
の4段階を踏まえた進学先選びを勧める。
オープンキャンパスは情報収集の機会だが、
同協議会の千葉吉裕事務局長は、「何を学びたいか、どんな夢を持っているか、
自分自身を把握していることが大切」と助言。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080816-OYT8T00197.htm

2008年8月27日水曜日

エコナビ:温暖化防止で注目、水素利用 どう作るの?

(毎日 8月25日)

地球温暖化防止で、日本を含め各国が注目しているのが水素利用
水素はどのようにして作るのか?

水素を燃やしてエネルギーを得ても、排出されるのは水だけ。
水を電気分解すれば、水素が得られる。
水は、地球上に無尽蔵にある。
水素は、無限で環境影響の少ないエネルギー源。

しかし、水素は大抵、酸素や炭素など他の元素と結合。
水素だけを取り出すには、エネルギーが必要。
工業界では、天然ガスと水を数百度で反応させる方法を用いるが、
化石燃料を消費するので二酸化炭素が発生。
そこで、風力や太陽光などによる電力を用いた水の電気分解、
光で化学反応を駆動させる化学物質(光触媒)の利用などが注目。

工藤昭彦・東京理科大教授(応用化学)は、
バナジン酸ビスマスなど2種類の光触媒を用いた。
太陽光を使った実験で、触媒が可視光に反応し、
約150ミリリットルの水から2時間で9ミリリットルの水素と
4・5ミリリットルの酸素を生成。
10~20年後には、太陽光利用で水から大量製造することが期待。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/08/25/20080825ddm016040012000c.html

甘い?辛い?いや「カルシウム味」 米で第6の味発見か

(朝日 2008年8月25日)

米ペンシルベニア州にあるモネル化学感覚センターのチームが、
カルシウムを味わうための遺伝子をマウスで確かめ、米化学会で発表。
「カルシウム味」が、第6の基本味である可能性も。

遺伝的に系統が異なる40種類のマウスに、
カルシウムを含む溶液を飲ませたところ、多くが飲むのを嫌うなか、
がぶ飲みする系統が見つかった。
遺伝子を比較した結果、カルシウムを味わうのに使う
二つの遺伝子が特定。

人間の舌は、甘み、塩味、酸味、苦み、うまみという五つの基本味を感知。
マウスの遺伝子に似たものは、人間にもあることから、
研究チームは「カルシウム味」が基本味の一つである可能性もある。

研究チームのマイケル・トルドフ博士は、
「カルシウム味は、苦みに酸味が少し加わったようなもの。
適切に表現する言葉はなく、『カルシウムっぽい』としかいいようがない」。

http://www.asahi.com/science/update/0825/TKY200808250043.html

キャンパス探訪(4)自信があるから素の姿

(読売 8月15日)

志望者やその保護者に、ありのままの姿を見せようとする大学がある。

「うちの大学は忙しい。実験や実習が多くて、夏休みは1、2週間しかないが、
その分将来への不安はない」
「おしゃれしてブランド品を持って、というような女子大のイメージは全くない」

埼玉県坂戸市で、女子栄養大学のオープンキャンパスが行われ、
オレンジ色のTシャツを着た学生2人がマイクを握った。
3年の高瀬麻梨香さん(20)と2年の秋山加奈さん(20)。
教室には、志望者の保護者ばかり約200人が集まった。

司会役の染谷忠彦常任理事(65)が、
「駄目なところを言っていいんだよ」と促すと、
2人とも「学費が高いところですね」と苦笑い。
保護者からは、「1週間の時間割は?」、「生活費はどうしているか」
といった質問が飛んだ。

保護者対象の説明会で、学生が大学生活について話す取り組みは
昨年から始まった。
キャンパスに来て、保護者は何を見て真実と感じるか。
学生にありのままに話させるのが一番いい。
業者が入る形態が増えているが、それは着飾った姿。
手作りでそのまま見せればいい」と染谷さん。
2人とは、話す中身について事前に打ち合わせもしなかった。

2007年の管理栄養士の国家試験合格者は、223人で全国トップ、
臨床検査技師も52人が合格。
養護教諭や家庭科教諭の採用試験対策を実施するなど、
様々な資格が取得できるカリキュラムを備え、学生の目的意識は高い。

入学定員約600人の小さな大学のオープンキャンパスに、
昨年度は8日間で計約5500人が訪れた。
今年は9日間に増やしたが、取得できる資格の説明や、
職員や教授、学生による個別相談が中心で、派手な催しはない。
料理と皿のコーディネートなど、体験セミナーはごくわずか。
予算は、学生へのアルバイト代、配布資料代など約500万円だけ。
7月26日には授業も行われ、教室が数百人の学生で埋め尽くされていた。

ありのままを見せると同時に、大学側が重視するのが保護者へのアドバイス
保護者説明会では、染谷常任理事が
「過保護になりすぎないで。
少子化時代の今は、学校の先生でなくて、最後は親の助言が重要。
過去の経験にプラスして今の大学がどうなっているかを知り、
子供に助言して下さい」と語りかけ、
オープンキャンパスを親子別々で見ることや、
普段の大学の様子を見学することを勧めた。

訪れた親子に好評だったのが、大学が独自に運営し、
健康管理を重視する食堂でのランチ。
もちろんメニューは普段と変わらない。
この日の人気メニューは、サバのから揚げサルサソース、
きんぴらごぼう、胚芽米ごはん。
素朴なオープンキャンパスの裏に、大学側の自信がうかがえた。

◆管理栄養士

大学・短大の学科や専攻など、厚生労働相指定の養成施設を卒業すると、
都道府県知事から免許が交付される栄養士に対し、
管理栄養士は国家試験に合格する必要。
病院の献立作りは栄養士も出来るが、保険診療での栄養食事指導は、
管理栄養士が行う。
養成施設は、中村学園大(福岡)、武庫川女子大(兵庫)など112校。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080815-OYT8T00201.htm

2008年8月26日火曜日

キャンパス探訪(3)獣医・畜産の現場公開

(読売 8月14日)

国立の単科大学が、全国から集まる志望者に畜産学の現実を見せる。

約47万頭の乳牛や肉牛が飼育される北海道の十勝平野。
帯広市に、全国唯一の畜産学部を持つ帯広畜産大学がある。
広大なキャンパスには、牧草地や農地が広がり、
牛や馬などの飼育動物のほか、モモンガやエゾリスも顔を出す。

オープンキャンパスで、人気が高いのが、獣医学課程の志望者が
同大家畜病院の診療の一端を見る「産業動物見学コース」。
同院には、道内の畜産農家から、病気になった牛や馬などの大型動物が
毎日のように送られ、診療を受けている。

「馬も、ストレスや食べ物で胃かいようになります」。
佐々木直樹准教授(41)は馬を使い、胃かいようを診断する内視鏡検査を実演。
鼻から直径8ミリ、長さ3メートルの内視鏡を入れ、モニターで胃の映像を映す。
「この馬の胃は健康ですね。
大学の5、6年生になると、内視鏡が使えるようになります」と説明すると、
約20人の参加者は感心したようにうなずいた。

佐々木教授は、「大学の獣医学教室は、ペットなど小動物向けが人気になり、
牛や馬を診療できる大学は少なくなった。
ここでは産業動物で、豊富な実践を通じた勉強ができる」

同大では、昨年度の入学者252人の約7割が、北海道以外の高校出身。
今年のオープンキャンパスも、受験予定者190人と家族ら160人が参加、
受験予定者のうち約100人が道外。
長沢秀行学長(53)は、「大学の環境や研究内容、北海道の生活などを、
家族を含めて知ってもらう絶好の機会」

講義棟では、獣医学や生命科学といった研究科目ごとに、
パネルや標本、実験器具などが展示。
食品科学のブースでは、学内の加工工場で作った
豚の腸詰めソーセージが振る舞われた。

島田謙一郎准教授(40)が、「1年生で必修の農畜産実習では、
豚の世話を1~2か月した後で解体し、ソーセージを作ります」、
舌鼓を打っていた女子高校生は、少し驚いた表情。
畜産大で学ぶ学生は、動物の貴重な生命から食品ができることを
実感してほしい」と島田准教授が強調。

親元を離れる新入生の多くは、獣医学や畜産、
食品や環境の研究への意欲が高い。
広大な自然を持つ北海道での生活や獣医、農業への漠然としたあこがれで
大学を選んでしまい、畜産業や獣医学の現場を見て、興味を失う入学者も。

学力だけで選ぶのではなく、帯広畜産大で何をやりたいかの目的意識を、
できるだけ明確に持って入学してほしい。
情報提供の努力は惜しまない」

遠方からの参加者も多いオープンキャンパスは、
学生の抱く理想と現実のミスマッチを防ぐ貴重な機会に。

◆大学の畜産研究

牛や馬など産業動物を扱う研究は、飼育や繁殖、治療など
動物に直接かかわるものだけでなく、飼料作物の栽培、
食品の加工や製造、流通、農業経営、環境など多岐に。
帯広畜産大は、獣医学(6年制)と畜産科学(4年制)の2課程。
他大学では、農学部や獣医学部が多いが、
酪農学園大学(北海道江別市)は、全国唯一の酪農学部を置く。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080814-OYT8T00198.htm

太陽光発電導入の家庭に証書、普及後押しで来月から実験

(読売 8月17日)

経済産業省は、太陽光発電システムの一般家庭への普及を
後押しするため、導入した家庭向けの「グリーン電力証書」の
発行実験を9月中にも始める。

証書は、環境問題に関心のある企業などに販売できるため、
導入費用の一部を補てんできる。
実験を踏まえ、2009年度には発行体制を整備したい。

グリーン電力証書は、太陽光や風力などの自然エネルギーを
利用して発電した電気が、通常の発電に比べてどの程度
二酸化炭素(CO2)を削減できたかを証明する文書。

風力発電やバイオマス発電では発行が進んでいるが、
家庭に多く設置されている太陽光発電では活用が遅れている。
家庭の太陽光発電は規模が小さく、1件当たりの証書発行にかかる
費用が割高になってしまうため。

実験では、住宅メーカーと太陽光発電機のメーカーが参加し、
メーカーが家庭からまとめてCO2削減分の価値を買い取って
証書を発行できるようにする。
家庭に発電量を測るメーターを取り付けて、
ネットを通じてデータを集約し、メーカーなどが新設する
証書発行会社が証書を発行。

グリーン電力証書代金は、1家庭あたり年2万~2万5000円程度と
なる見込みで、認証費用などを差し引いた金額が家庭に支払われる。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20080817-OYT1T00086.htm

5つの生活習慣で脳卒中のリスクが低下

(WebMD 8月12日)

健康的な5つの生活習慣の因子が、最も一般的な種類の
脳卒中のリスクを80%低下させるのに役立つことが明らかに。

『Circulation』で報告された研究では、
43,685例の男性と71,243例の女性の追跡調査を行った。
研究開始時の平均年齢は男性54歳、女性50歳。
研究開始時に、心臓血管疾患または癌であった被験者はいない。
被験者らは、1986 - 2002年の生活習慣と医学的状態を報告。

女性においては1,559例の脳卒中、男性においては994例の脳卒中が発生。
研究者らは、低リスクの生活習慣を次のように定義:
1)現在、喫煙していない。
2)適正体重を維持する。
体格指数(BMI)が25未満を意味。
BMIが25 - 29.9を体重超過、30以上を肥満。
3)毎日30分以上、強度が中から強の身体活動を行う。
4)「悪玉の」脂肪が少なく、野菜や果物、トリ肉や魚のような低脂肪蛋白質、
食物繊維、木の実、豆類を多く含む食事を含んだ最上の食事スコア
5)中程度のアルコール摂取。
女性の場合、1日に約1杯まで、男性の場合、1日に2杯までの飲酒。

5つの健康的な生活習慣のすべてを守った女性は、
健康的な習慣を全く守らなかった女性と比較し、
すべての脳卒中のリスクが79%低く、虚血性脳卒中が81%低い。
虚血性脳卒中は、最も一般的な脳卒中で、脳動脈が閉塞したときに発生。

5つの生活習慣因子のすべてを守る生活をしていた男性は、
5つの生活習慣因子をひとつも守らなかった男性と比較し、
すべての脳卒中のリスクが69%、虚血性脳卒中が80%低い。

ハーバード公衆衛生大学院のStephanie E. Chiuveは、
「虚血性脳卒中の半数以上、男性の52%および女性の54%は、
健康的な生活習慣を守ることによって予防できた」。
「すべての脳卒中に関して、女性の症例の47%および
男性の症例の35%は予防できた可能性があった」。

「この研究は、冠動脈性心疾患のリスクの最大80%の低下および
糖尿病のリスクの90%の低下との関連が認められている
健康的な生活習慣を守ることによって、
同じく半数以上の虚血性脳卒中を予防できる可能性を示す」

脳卒中は、米国における死因の第3位。
非致死的脳卒中は、「永続的な障害および経済的損失」の原因として最も多い。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=78655

野菜、果物で食道がんの危険半減 飲酒、喫煙習慣あっても効果

(毎日新聞社 2008年8月14日)

野菜と果物を多く食べる男性は、あまり食べない男性に比べ、
食道がんになる危険性がほぼ半減することが、
厚生労働省研究班(山地太樹・国立がんセンター予防研究部研究員)の
調査で分かった。がんに関する国際誌電子版に掲載。

研究班は95年と98年、8県の45-74歳の男性約3万9000人を対象に、
食事に関するアンケートを実施し、野菜と果物の1日あたりの摂取量を推計。
04年までに、116人が、食道がんのうち日本人の大半を占める
「扁平上皮がん」と診断。
国内の食道がんの患者は、男性が8割以上。

分析の結果、野菜と果物の合計摂取量が1日平均544グラムと
最も多いグループが食道がんになる危険性は、
最も少ない同170グラムのグループの52%。
摂取量が1日100グラム増えると、危険性は約10%減。

種類別では、キャベツや大根などのアブラナ科の野菜の摂取と、
危険性の低下に関連が認められた。

喫煙、飲酒習慣がある人でも、野菜と果物を多く食べると危険性が減った。
喫煙習慣があり、日本酒を1日2合以上飲む人では、
多く摂取する人の危険性が、少ない人より6割以上も低かった。

山地研究員は、「食道がんの予防には、禁煙、禁酒が第一だが、
野菜と果物の摂取にも予防効果が期待できる。
アブラナ科の野菜は、がんを抑制するとされる成分
『イソチオシアネート』を多く含むため、効果があるのでは」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=78607

2008年8月25日月曜日

キャンパス探訪(2)1泊2日で体験授業

(読売 8月13日)

1泊2日で、観光学の一端に触れる取り組みがある。

夏休みに入ったばかりの観光地・神戸ハーバーランドを、
高校生4人が、神戸夙川学院大学の学生や教員と歩いていた。
同大のオープンキャンパスの参加者たち。
17人が4グループに分かれ、それぞれ神戸の街に繰り出した。

各グループには課題が与えられていた。
ハーバーランド組の4人は、「神戸は外国人旅行者にとって歩きやすいか」。
「お店の案内が日本語だけって、不親切だよね」。
参加者の一人、相馬寿美さん(18)が案内板を指さすと、
傍らにいた友好崇暢君(18)が、大学から貸し出されたカメラで写真を撮る。
「日本語のほかに、何か国語ぐらい表示してあればいいと思う?」。
すかさず指導役の大学生が質問を投げかけた。

同大は、観光文化学部だけの単科大学として2007年に開学。
1、2年次では、観光都市・神戸の街の魅力と課題を見極め、
観光学的視点から提言をする「調査研究」が必修科目。
オープンキャンパスで授業を疑似体験させるこの企画は、
開学前年の06年から、1泊2日で行われている。

大学に戻ると、高校生らは引率教員の研究室で議論を深め、
翌日の発表のための資料を作る。
夕食を挟んで、さらに作業を続け、ホテルに着くのは午後9時過ぎ。
翌日も午前11時からの発表会に備えて、
朝から打ち合わせをするハードなスケジュール。

発表会には、教授陣のほか、学外から観光関係者も見学に訪れる。
指導役の大学生も高校生も、少しでも良い発表をしようと、
模造紙にイラストを描き込むなど、発表の手法にも工夫を凝らす。
友好君は、「小中高とは、勉強の仕方が全然違う」

入試広報担当の植松幹雄課長(38)は、
「学生にとっても、日ごろの勉強の意味を再認識できるし、
指導する側に回ることで、より理解が深められる」

1泊2日型オープンキャンパスの今年の参加希望者は、約120人。
7~9月の週末に計4回開催。
7月19、20日の初回は島根県から、8月2、3日の2回目には
福岡県や愛知県からの参加者も。

この2年間で、説明会や学内見学を組み合わせた通常のオープンキャンパス
参加者の出願率が5割未満なのに対し、
1泊2日のオープンキャンパス参加者の出願率は7割超。
入学後も、勉学意欲がかなり高い。

観光系に焦点を絞り、いくつかの大学のオープンキャンパスに
参加しているという相馬さんは、「良いところばかりを強調したり、
遊びのような内容だったりの大学にはがっかりしていた。
入学後の勉強がイメージできてよかった」

バラ色のキャンパスライフだけを見せていても、高校生の心はつかめない。

◆観光系の学部

4年制大学では、立教大が観光学科を1998年に観光学部に
改組したのが第1号。
政府が2003年に、日本を訪れる外国人旅行者を倍増させる方針を
打ち出したこともあり、城西国際大(06年)、和歌山大(08年)など、
観光学部を設ける大学が増加。
現在、観光関連の学部や学科を持つのは37大学。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080813-OYT8T00236.htm

糖尿病体質示す遺伝子特定 日本の2グループ同時発表

(共同通信社 2008年8月18日)

成人が発症し、糖尿病患者の約95%を占める2型糖尿病の
なりやすさに強くかかわる遺伝子を、国立国際医療センターと
理化学研究所が中心となった2つのグループが、
日本人を対象にした別々の研究で突き止め、
米科学誌ネイチャージェネティクス電子版に同時発表。

特定した遺伝子は「KCNQ1」。
従来、心臓の筋肉の動きに重要であることが知られていた。
この遺伝子の塩基配列にわずかな違いがあると、
2型糖尿病を発症する危険性が1・3-1・4倍に高まる。

2型糖尿病に関連する遺伝子は、欧米人対象の解析で数種類
見つかっていたが、アジア人で特定されるのは初めて。
予防のための体質診断や、新しい治療法の開発につながると期待。

両グループは、患者と一般人で、遺伝子の塩基配列が1カ所だけ異なる
「1塩基多型(SNP)」があるかどうかを調べ、
発症との関連を統計学的に分析。

国際医療センターの春日雅人研究所長らは、日本人の患者と
一般人計約8800人分を解析。
この遺伝子に特定のSNPがあると、血糖を下げるインスリンの
膵臓からの分泌を低下させる可能性があることが分かった。

理研の前田士郎チームリーダーらも計約9300人分を調べ、
この遺伝子が日本人患者の約2割の発症にかかわっていると試算。

両グループは、中国人、韓国人、シンガポール人、フィンランド人、
デンマーク人でもそれぞれ数千人規模で調査。
人種によらず発症に強く関連することを確認。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=78659

高齢者の疲労は病気に直結する

(WebMD 2008年8月14日)

高齢者が極度の疲労を訴えてきたら、深刻に受け止めるべきだ、
とコロンビア大学の研究者らが研究の結果、医師に求めた。

1989~1995年まで行われた研究に、2,130人が参加。
平均年齢は74歳、参加者の20%は80歳以上。大多数が女性。
参加者はすべて65歳以上、マンハッタン150丁目の北に位置する
「ターゲット地区」の住人。
コロンビア大学のHuai Chengらは、
「ターゲット地区は貧困・犯罪・失業率が高い」。

参加者のうち、33%がアフリカ系、47%がラテン系アメリカ人、20%が白人。
参加者らは、1989年の研究開始時に評価を受け、
1995年まで18ヵ月ごとに検査を繰り返した。

◆高齢者の疲労

1)元気が出なくて、ぼんやり座っていることがありますか?
肉体的衰えを先月感じましたか?
2)最近十分な元気がでませんか?
起床時に疲れたと感じたり、1日2時間以上昼寝をすることがありますか?

研究者らは身体的、精神的健康の特徴を評価。
どのくらい医療施設を利用したかも尋ねた。

◆結果

1)エネルギー不足(エネルギー欠乏症)は、男性より女性に多い。
女性の22%がエネルギー不足、男性は12%。

2)エネルギー不足の人は、エネルギー欠乏でない人より
研究期間中に死亡する率が高い。

3)既婚者より未婚者に、エネルギー不足の人が多く(13%対21%)、しかも高齢。
エネルギー不足は、休み休みでないと数ブロックも歩けない、
以前より日常生活動作を行う能力に支障があるなど、
体調の悪さ(参加者の報告による)と身体機能の低下に直結。
関節障害、鎮痛薬の服用、尿失禁、難聴、うつ、社会的隔離にも
つながる可能性が高かった。

4)エネルギー不足の人は、救急治療室、外来診療、訪問医療サービスを含め、
激しく疲れていない人よりも病院にかかる回数が多い。

Mathew Maurerは、疲労の訴え以上に患者の話をよく聞く必要がある。
「高齢の患者が疲れていると訴えると、ほとんどの医者は
『そうでしょう、高齢ですからね』と言う。
だるい感じは、老化で予測される現象のひとつだと医者は言うが、
疲労の原因はあるはずで、それを調べる必要がある。

我々の研究が臨床医の皆さんに託すメッセージは、
エネルギー不足は高齢者に多いけれども正常な状態ではない、ということ」。
エネルギー不足は、記憶障害や転倒といった「老人症候群」の1要素。
心臓疾患、腎・肺障害、うつ、関節炎、貧血とも関連。

Barry Gurlandは、年を取るとどうなるか探ることは重要。
「エネルギー欠乏症の原因を解明することによって、
老人の治療介入範囲が広がり、高齢者が生活の質を維持できるようになる」。
『Journal of Gerontology』に発表。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=78605

記憶力向上させる化合物を発見 ターメリックから合成

(共同通信社 2008年8月19日)

武蔵野大学薬学部の阿部和穂教授らは、
カレーの香辛料として使われているターメリックの含有成分から
合成した化合物「CNB-001」が、記憶力を向上させる効果があることを
マウスを使った実験で発見。

ターメリックに含まれるクルクミンという化合物には、
アルツハイマー病の原因物質と目されている
「アミロイドベータタンパク」の蓄積を防ぐ効果があることが知られているが、
阿部教授は米ソーク研究所のデビッド・シューベルト博士と共同で、
クルクミンと誘導化合物の脳に対する作用を研究。

クルクミンの化学構造を少し変えて、「CNB-001」を合成させることに成功。
「CNB-001」は、新しい認知症治療薬候補になると期待、
研究結果は米老年医学専門誌最新号に掲載。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=78724

2008年8月24日日曜日

アルツハイマー病治療に光 記憶障害改善に成功 理研チーム

(毎日新聞社 2008年8月21日)

アルツハイマー病によって起きる記憶障害の仕組みを明らかにし、
改善させることに、理化学研究所などの研究チームが
マウスを使った動物実験で成功。
アルツハイマー病の新たな治療法の開発につながる可能性。
米科学誌プロス・ワンに発表。

アルツハイマー病では、神経細胞にベータアミロイドと呼ばれる
異常たんぱく質が蓄積。
研究チームは、このたんぱく質をたまりやすく遺伝子操作した
マウスの脳内を詳しく調べた。

その結果、記憶をつかさどる海馬で、刺激の伝達を抑制する
神経伝達物質「GABA」の働きが通常のマウスより約3倍も活発

このマウスに、GABAの働きを阻害する薬剤を注射したところ、
迷路を使った実験で記憶力が改善することが確認。

吉池裕二・理化学研究所研究員(神経生理学)は、
「脳が正常に働くには、抑制と興奮のバランスが保たれることが重要。
GABAによる異常な抑制を改善することが、記憶力を取り戻すことに
役立つ可能性が示された」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=78882

キャンパス探訪(1)「美術離れ防げ」ライバル連携

(読売 8月12日)

美術離れへの危機感が、ライバルの手を結ばせた。
武蔵野美術大は、高校生やその保護者らを案内する
赤や黄色のTシャツ姿の学生であふれていた。
タワシやスポンジに絵の具を含ませ、来場者と一緒に
校舎の壁面いっぱいの紙に絵を描く学生たちも。

オープンキャンパスが開かれている同大の一室のスクリーンに、
「ムサビVSタマビ」、「ムサビ&タマビ」の文字が点滅。
スクリーンを背に、「多彩な才能が集まるムサビ」、「タマビは原石の魅力!」
と2人の男性が大学自慢をし合う。
武蔵野美術大企画広報課(現法人企画室)の千羽一郎さん(37)と、
多摩美術大企画課の米山建一さん(35)だ。

話題は、美術の魅力や大学の歴史からキャンパスの変人自慢にまで及んだ。
「全裸の男子学生が走り回るのを見た女子学生が、
静かに『春だね~』って……」、
「炎天下で突然、特設噴水を造った学生たちがいた。すぐに撤去されたけど」

オープンキャンパスの裏方による異色の「バトルトーク」。
帝国美術学校を母体とし、戦前にたもとを分かった両校が
初めて取り組んだ試みは、来場者約140人の笑顔に受け入れられた。
「偏差値教育の中で、美術は軽視されてきた。
深い思考を必要とする美術の重要性を訴えたい。
受験生の争奪戦に血道を上げている場合ではない」
甲田洋二・武蔵野美術大学長(69)が意義を強調。

武蔵野美術大のオープンキャンパスは2001年スタート。
最初は8月だったが、翌年には6月に移した。
夏休みは構内が整然としているが、美大の魅力は学生のエネルギー。
雑然としていても、制作で活気がある時期に日常を見せる方が意味がある。

オープンキャンパスの定番である学食の無料体験や、
最寄り駅とのバスによる無料送迎はない。
特別のサービスは、日常にはそぐわないから。
試行錯誤しながら、千羽さんには物足りなさが残った。
広報担当として、年間約100の高校を訪れる日々で、強い違和感。

偏差値で受験大学を絞り、最後に「絵がうまいから」と
美大を薦める進路指導の教師。
専門学校で美大受験の技術を磨いているのに、
「何を描きたいか」を語れない高校生。
「誤解されている。作品から何を伝えたいかを深く考え、
学ぶ場が美大ではないか」。
それを早い時期に伝えないと、美大ひいては美術離れを加速させてしまう。
その懸念が企画の出発点。

以前、1枚しかパンを焼けないトースターが雑誌などで話題に。
武蔵野美術大教員が開発した商品だった。
デザインの面白さだけではない。
2枚焼けない不便さよりも、焼き上がった1枚を「お先に」と譲り合うか
半分に切るか、少しのゆとりと思いやりを持ってほしいというメッセージが受けた。

大切なのは、小手先の技術ではない。
ふだん何気なく見過ごしている日常風景を体全体でつかみ、
表現する力を養うため、同大の一部学科では、入学後まもない時期に、
目隠しをして素足で構内を伝い歩きする授業がある。

千羽さんは、こうした授業などを通し、大学で培った物事への洞察力を
深めてもらいたいと考え、こんなエピソードを幅広く知らせることで、
高校生に美大を選ぶ本当の意味を伝えられないかと思うように。
その思いにいち早く反応したのが、広報担当としてつきあいのあった米山さん。
「美術には夢と未来がある。それをわかってもらおう」と快諾。

2人が向き合うテーブルの上には、女子美術大や名古屋造形大の
広報担当者から送られた花かごも。企画への共感は広がっている。

大学のオープンキャンパスが最盛期。
週末ともなると、全国各地で、工夫を凝らした受験生確保の“夏の陣”が展開。

原型は、入試傾向や大学の概要を説明する「進学相談会」。
1970年代に始まり、80年代には「オープンキャンパス」という名称で、
首都圏を中心に広がった。
現在では開催しない大学の方が珍しく、
受験生が大学選びの判断材料を探す場に。

学食体験、模擬授業、教員や上級生による進学・受験相談会のほか、
ケーキバイキングやオリジナル文具配布といった集客に工夫を凝らす大学も。
観光学部の学生に、近隣の観光案内をさせるなど、
大学生自身の学びに活用する大学も。

◆芸術系細分化で受験生分散

今年6月に約37万人が受けたベネッセコーポレーションの進研模試で、
芸術系の志望者総数は、前年並みの約5万5000人。
ここ数年横ばい状態。
工学部や生活科学部などにデザインやインテリアを学べる学科を
設ける大学が増えるなど、芸術系が細分化されており、
限られた受験生を取り合う状態に。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080812-OYT8T00235.htm

地球温暖化でアレルギーと喘息が増加

(WebMD 2008年8月14日)

地球温暖化が喘息患者とアレルギー患者の脅威となる。
『Journal of Allergy and Clinical Immunology』9月号に掲載された
レビューでは、次のような予測。

1)アレルギーの流行期の状況が悪化。
気候が温暖になるということは、春の開花が早まり、
ブタクサやヨモギといった秋のアレルゲンの飛散期が長くなる。
温暖化とは、植物や花粉が増えること。

2)喘息の主要条件。
大気汚染が進み、オゾンが増え、山火事が多くなると、
大気質が低下して喘息が悪化する。
アレルギーや喘息のある患者では、「病気が悪化するリスクが高まり、
症状を訴える日が増え、QOL(生活の質)が低下する」、
温暖化によりアレルギーや喘息の発症が増える可能性があると、
ノースカロライナ大学公衆衛生学部のKatherine Sheaらは述べている。

米環境保護庁の報告では、地球温暖化により生じる可能性のある
健康リスクの一覧に喘息が掲載。
Shea博士らは、日々の大気質報告と花粉数の調べ方や解釈の仕方を、
医師が患者に教えることを提言。
「気候変動課題を検討する中枢施設で、ヒトの健康を守るために活動する
支持者(champion)を、世界中から集める必要がある」

自転車の使用、徒歩での移動、公共輸送機関の使用、
地元で取れた青果物の摂取や肉食の制限が、
ヒトの健康だけでなく気候にも良いことを指摘。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=78606

脳細胞がロボット制御 英チーム、ラットで成功

(共同通信社 2008年8月14日)

培養したラットの脳細胞が出す電気信号で、
小型ロボットを障害物にぶつからないように動かす実験に成功したと、
英レディング大の研究チームが発表。

人間やコンピューターからの指示は一切なかった。
脳の発達や記憶の仕組みの解明に役立つほか、
生体の脳で機械を直接制御する技術として注目。

チームによると、ラットの胎児から脳細胞を採取して、
酵素でばらばらにし、約60の電極が付いた小さな容器に入れて培養。
脳細胞が成長して出すようになった電気信号を、
円筒形の二輪走行ロボットに無線で送り、ロボットを動かした。

ロボットには、超音波センサーを搭載。
障害物に近づくと、特別な刺激が脳細胞側に送られるようにした。
ロボットは、最初は障害物に衝突を繰り返したが、
そのうち"学習"して衝突を回避。

「培養した脳で、ロボットを動かした最初の例」。
さまざまな刺激を与えて、特定の動きをさせるよう訓練する。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=78597

2008年8月23日土曜日

半数超が「心の病増加」 余裕ない職場ほど傾向強く

(共同通信社 2008年8月13日)

財団法人社会経済生産性本部のアンケートに回答した
上場企業のうち、半数以上が社員の心の病が増える傾向に。
「人を育て、仕事の意味を考える余裕がない」会社ほど、
心の病の増加を訴える傾向が強い。

同財団は、2002年から2年ごとに同じ調査を実施。
今年は、2368社を対象にし、269社が回答。

最近3年間で、従業員の心の病が「増加傾向」と回答したのは56%、
2年前の61%から微減し「横ばい」は32%、「減少傾向」は4%。
職場で、「人を育てる余裕がなくなってきている」という企業の60%が
心の病が増加傾向と答える一方、
「そうではない」という企業で増加傾向と答えたのは35%。

「職場でのつながりを感じにくい」、
「仕事の全体像や意味を考える余裕が職場になくなってきている」
とする企業は、60%以上が心の病が増加傾向と回答。
「そうではない」とする企業で増加傾向としたのは、40%台前半。

従業員の健康づくりのうち、メンタルヘルス対策を重視する企業は63%、
6年前の調査の33%からほぼ倍増、
この問題に対する企業の危機感の高まりが読み取れる。

同財団は、「心の病については不調者の早期発見に加え、
組織風土の改善に目を向ける必要がある」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=78568

糖尿病リスク低減のための食事に関する注意事項

(WebMD 7月28日)

糖尿病は米国で増加しつつあり、3件の新規研究では、
食事が2型糖尿病発現の可能性に影響を及ぼすかが浮き彫りに。

各研究では、食事の異なる面を取り上げている。
糖尿病のリスクは、炭酸飲料や加糖フルーツ飲料を多く飲み過ぎると高まり、
果物や野菜の摂取量を増やせば低下し、
脂肪の摂取量には影響されない。

カロリーの問題は、避けて通れない。
カロリー収支を誤れば、体重が増えて2型糖尿病に罹りやすくなる。

デューク大学医療センターのMark Feinglos、Susan Tottenは、
「カロリーが他の何よりも重要であるということを前提とすべきで、
糖尿病のリスクの高い若年者においては、
2型糖尿病の新規症例を減らすための1番の目標は、
高エネルギーで利益の少ない食物の摂取を減らすこと」

◆甘味飲料によるリスクの上昇

最初の研究では、甘味炭酸飲料およびフルーツ飲料は
アフリカ系米国人女性における2型糖尿病のリスク上昇につながる。

アフリカ系米国人女性約44,000名を対象、1995-2005年に追跡調査。
研究の開始時および2001年に、食事調査に記入。
研究の開始時点では、糖尿病のある者は1名もなかった。
10年後、2型糖尿病の新規症例2,713名が報告。

普通の清涼飲料水を、1日に2本以上飲んだ女性は、
飲んだ清涼飲料水が1カ月に1本未満であった女性に比べ、
2型糖尿病と診断される確率が24%高い。
炭酸飲料を飲んだ人におけるリスク増加の一部は、
体重増加によって説明される。
1日に加糖フルーツ飲料を2本以上飲んだ女性は、
1本未満の女性に比べ、2型糖尿病と診断される確率が31%高い。

ボストン大学のJulie Palmerらは、加糖フルーツ飲料は
「清涼飲料水に代わる、より健康的な飲み物として市販されている」が、
そのカロリーは少なくとも普通の炭酸飲料と同程度。

ダイエット炭酸飲料、オレンジジュース、グレープフルーツジュースは
糖尿病のリスク上昇にはつながらない。
オレンジジュースやグレープフルーツジュースに含まれる天然糖は、
普通の炭酸飲料やほとんどの甘味飲料に添加される異性化糖とは
代謝効果が異なる可能性がある。

◆飲料業界の反応

米国における非アルコール飲料の製造・流通を行う業界団体である
米国飲料協会(American Beverage Association)の
科学政策担当上級副社長Maureen Storeyは、
「2型糖尿病は、特にアフリカ系米国人女性において重要な
公衆衛生上の問題という点には同意するが、
飲料の消費が同疾患のリスク因子として確定されているわけではない

この研究は、体重を減らそうとしている女性は、
普通の炭酸飲料からダイエット炭酸飲料に切り替えれば、
減量が容易になることを推奨。
Storey博士は、フルーツ飲料の消費と2型糖尿病との関連が
「非常に弱いか、または存在しなかった」ことから、
「これらの飲料を避ければ、糖尿病のリスクには影響がない」。

この研究では、全エネルギー摂取、被験者があらゆる摂取源から
摂取した全カロリー数について管理したかどうかは明らかではない。
エネルギー摂取量(消費したカロリー)とエネルギー消費量(燃焼したカロリー)
との間の不均衡は、体重増加につながる可能性があり、
「家族歴を除けば、2型糖尿病発現の最も重要な因子」

◆果物と野菜は糖尿病のリスクを低下させる可能性がある

別の研究では、果物と野菜の摂取量を増やせば、
糖尿病のリスクが低下する可能性がある。

この研究は、ノーフォーク州(英国)の成人約22,000名を対象。
研究開始時に、診察を受け、血液検体を採取、食事と生活習慣の調査票に記入。
その後の12年間に、735名が糖尿病を発現。

ビタミンサプリメント摂取といった他の生活習慣因子について調整し、
糖尿病の診断は、ビタミンC血中濃度最高群では62%少なく、
果物・野菜摂取量最高群では22%少ない。
ビタミンC濃度最高群は、果物および野菜を1日に5-6皿食べていた。

Addenbrooke's病院(英国、ケンブリッジ)のAnne-Helen Hardingは、
「果物と野菜は、ビタミンCの主要な摂取源で、
果物と野菜を少量でも摂れば有益な可能性があり、
糖尿病に対する保護効果は果物と野菜の消費量とともに徐々に増大」

◆低脂肪食には影響力がないか?

3番目の研究は、低脂肪食が閉経後女性の糖尿病リスクを低下させるか?
しかし、それは無理であることが明らかに。

米国の閉経後女性約46,000名を対象。
フレッド・ハッチンソン癌研究センター
(Fred Hutchinson Cancer Research Center、シアトル)の
Lesley Tinkerらは、これらの女性を2群に分けた。

1群には、1日のカロリーに占める食事中脂肪の割合を、
研究開始時点の約38%から20%まで減少。
集中的な栄養・行動カウンセリングを受け、
定期的なグループミーティングに参加し、低脂肪食の目的を達成する助けに。

他群の女性には、食事中の脂肪を減らすように指示をしなかった。
連邦政府の栄養ガイドラインを記したパンフレットを配布、
カウンセリングやグループミーティングは行わなかった。
いずれの群の女性にも、減量や運動量の増加を要求しなかった。

この研究は約8年間継続され、糖尿病と診断された率は両群とも等しかった。
Tinker博士のチームは、運動や減量をせずに食事中の脂肪量を減らしても、
糖尿病リスクの抑制には不十分。

低脂肪群の女性は、脂肪量を減らしたが、指示された量には達していない。
食事調査から、研究開始1年後に、低脂肪群の女性は1日のカロリーの
約24%を脂肪(ほとんどが飽和脂肪)から摂っており、
研究6年目までに目標の20%を超えて約29%まで上昇。
体重の傾向は両群とも同様で、低脂肪群の女性は
当初平均5.3ポンド(約2.4kg)の減量を示したが、
研究の終了時点までに減量体重のほとんどを取り戻した。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=78530

ガッツポーズは生まれつき 米・カナダ、五輪柔道を分析

(朝日 2008年8月14日)

五輪などスポーツの大きな試合では、勝った選手が両手を上げて
ガッツポーズし、負けた選手が肩を落とす光景がよく見られる。
ボディーランゲージは、誰かのまねではなく、
人間が生まれつき持つ癖らしいことが、カナダと米国の研究でわかった。

カナダ・ブリティッシュコロンビア大などのチームは、
米科学アカデミー紀要(電子版)に論文を発表。
04年夏のアテネ五輪とパラリンピックで撮影された
柔道の写真数千枚を吟味。
30以上の国・地域から集まった選手計140人について、
試合終了後の選手の頭、腕、体の姿勢を分析。

その結果、勝者は両手を上げ、上を向き、胸を張る傾向が見られた。
一方、敗者は肩を落とし、胸を狭める傾向。

このような傾向は、文化的背景によらず、
生まれつき視覚障害を持っている選手にも見られた。
チームは、「勝利や敗北のポーズは、学習で身につけたものというより、
人間にもともと備わっている癖である可能性が大きい」

http://www.asahi.com/science/update/0812/TKY200808120056.html

走る人は若い?ランニングは老化を防ぐ、米の大学が調査

(読売 8月16日)

ランニングの習慣に、老化を遅らせる顕著な効果があることを
米スタンフォード大の研究チームが突き止めた。

20年以上にわたる追跡調査の結論。
調査期間は、1984~2005年。
チームは、ランニングクラブに所属し、週4回程度走る男女538人
(84年当時の平均年齢58歳)に毎年質問票を送り、
歩行や着替えといった日常の行動能力や健康状態などを調査。
走る習慣がない健康な男女423人(同62歳)も、同様の方法で調べた。

その結果、走る習慣のないグループは、2003年までに34%が死亡、
習慣的に走るグループの死者は15%。
走るグループは、走る習慣のないグループに比べ、
日常の行動能力が衰え始める時期が16年ほど遅い。

チームは、「年齢を重ねても、健康的に過ごすために何かひとつ
選ぶとすれば、(ランニングのような)有酸素運動が最も適している」

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080816-OYT1T00416.htm

2008年8月22日金曜日

大学発ベンチャー地方が都市圏上回る

(サイエンスポータル 2008年8月19日)

大学発ベンチャーの数で、地方が都市圏を上回ったことが、
経済産業省の調査で明らかに。
この6年間の設立数伸び率でも、地方が約3.5倍と
都市圏(約2.6倍)を上回っている。

「大学発ベンチャー基礎調査」によると、昨年度末時点で活動中の
大学発ベンチャーは、前年より94社増え、1,773社。
地方が909社を占め、都市圏の864社を上回っている。
大学発ベンチャーの1社あたり平均売上高は1億5,700万円、
全業種とも前年度と比較して増加しているが、
営業利益は依然赤字が続き、赤字幅は前年度に比べやや増加。

経済効果は、直接効果(市場規模)で約2,800億円、
雇用者数で約23,000人と試算。
事業分野をみると、大学の持つ研究成果を活用しやすいバイオ分野が
38.6%と最も高いが、昨年度の新規設立数で31.9%とシェアを落とした。

次に多いのはITソフト分野で、30.3%。
昨年度の新規設立数では、33.0%とシェアを伸ばした。
ベンチャー設立数の多い大学は、東京大学、大阪大学、早稲田大学、
京都大学、筑波大学以下、上位10位まで順位もほとんど変わりがない。

昨年度だけで見ると、岡山大学、東京工業大学、早稲田大学、筑波大学、
東北大学の順で、大学ベンチャーの所在する都道府県別でも
東京都、岡山県、神奈川県、北海道、茨城県となり、
地方の健闘ぶりが目を引く。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0808/0808191.html

ホッケーの町全国V80 岩手町の住民、歓喜に沸く

(岩手日報 8月20日)

「ホッケーの町」にうれしいニュースが届いた。
岩手町の一方井中女子が、全日本中学生選手権で
27年ぶり2度目の優勝
を果たし、地元は歓喜に沸いた。
同町チームのホッケー日本一は、通算80回目。
地元開催の2011年インターハイで主力となる学年の活躍は
今後の強化に弾みをつけそう。

一方井中には、優勝が決まった直後にメンバーの千葉咲野さん(2年)の
父・一幸さんから一報が入った。「決勝で圧勝した」。
感激あふれる言葉に、外岡立之介校長の手が震えた。

外岡校長は、「夏休みすべてをホッケーに注ぎ、五輪や甲子園に
負けないくらい取り組んできた選手たちを誇りに思う」

同町からは、2000年の川口中女子以来、
8年ぶりの全日本中学生選手権優勝。
70年の岩手国体を契機に、ホッケーの町を掲げてきた同町の各世代が
重ねた「日本一」が80回目の大台に乗った。

一方井スポ少で、優勝メンバーの多くを指導した町ホッケー協会の
田村政雄会長は、「町出身の小沢みさきさん(富士大大学院)が
五輪出場を果たした記念すべき年に、後輩の活躍が続きホッとしている。
小沢効果だ」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080820_4

大画面、熱い声援 県内スポーツバーにぎわう

(岩手日報 8月20日)

北京五輪を観戦する若者らで、県内のスポーツバーもにぎわっている。
大画面で競技を楽しみながら、中国にちなんだ料理やドリンクを味わい、
特別サービスも多彩。
だが、日本選手の不振や経済低迷を挙げ、
「例年よりも、盛り上がりはいまひとつ」と見る向きもある。

複数のスポーツバーが点在する盛岡市の大通。
「北京五輪放映中」などの看板を掲げ、PRに余念がない。

18日夜の女子サッカー準決勝日本-米国戦を、
友人6人で観戦した盛岡市上堂の会社員小笠原侑子さん(22)は、
「自宅で観戦するよりも盛り上がる」と五輪ムードを満喫。

特別サービスもめじろ押し。
同市大通2丁目のエスニック居酒屋MOON SOON CAFEは、
ゲームで勝てば、飲み放題時間を30分間延長できるサービスを提供。
同市大通3丁目のGraZieでは、記念ドリンクや5種類の果物の
盛り合わせなど日替わりメニューを設けている。

各店とも、「前回のアテネ五輪ほど客の入り、盛り上がりはいまひとつ」。
GraZieの渡辺英紀店長(30)は、「注目のカードは人気が高いのだが…」。
同市大通2丁目のCROSS HEATの柘植友貴店長(30)も、
「(客入りは)五輪だからというほど大きな変わりはない」。

原因について、「日本人選手の低迷」、「人気競技のスター選手不在」
を指摘する声も。
同市大通1丁目の青胡椒の立花実店長(29)は、
「事前の盛り上がりも欠けていたような気がする」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080820_14

2008年8月21日木曜日

米国のおかげで生きている 心臓病を克服、五輪舞台

(共同通信社 2008年8月20日)

「打倒米国」に燃えるソフトボールの日本代表。
遊撃手の西山麗選手(24)は、米国の臓器提供バンクを通じて
心臓手術を受け、選手生命をつないだ。
「ソフトボールでは憎い敵だが、娘は米国のおかげで生きている」と
父・義信さん(66)。20日の準決勝はその米国が相手。

生後1カ月で、心臓に先天性の異常が見つかった。
「大動脈弁狭窄・閉鎖不全症」。
心臓の弁に不具合があり、激しい運動で死に至ることも。
日常生活に支障はないが、持久走や吹奏楽は禁じられ、
成長すれば手術が必要だと言われた。

しかし、運動が何より好きな西山選手は、医者が止めるのも聞かず、
中学でソフトボール部に入った。
攻守交代があり、体への負担が比較的軽いと考えた。

中2の時、米国の臓器提供バンクから「ドナー(臓器提供者)が現れた」と
連絡が入った。交通事故で亡くなった14歳の少女。

米国から届いた心臓弁を移植する手術は8時間に及び、
術後も1カ月間入院。
元気を回復した西山選手は、華麗な守備と俊足、巧打で活躍。
強豪の厚木商業高校を経て、実業団入り。

義信さんは、「日本代表にもなってうれしいが、
『ここまでよく体が持ったな』というのが実感だ」。

試合は欠かさず見学するという母・美千子さん(57)は、
これまで2度、相手選手と交錯して気を失うところを目の当たりにした。
「生きた心地がしなかった。わたしはプレーを見るのではなく、
何事も起こらないよう祈っている」

移植した心臓弁の耐久年数は約15年といわれ、既に10年が経過。
いずれ再手術を受ける時期が来る。
五輪に出場できた喜びを胸に、西山選手は
「元気あふれるプレーで、病気をしている子供たちに勇気と希望を与えたい」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=78776

2008年8月19日火曜日

應義塾大学医学部長・末松誠氏に聞く(下)

(医療維新 8月14日)

――若手医師の待遇面でどんな改革を実施しているのか?

若手医師の待遇改善のため、教授会が相当努力をしている点。
私が、医学部長に就任してまず取り組んだのは、医学部の財務改革。
大学全体のバジェット(予算)は限られ、私学助成も年1%ずつ減らされ、
資金が潤沢にあるわけではない。
可能な限り無駄を省いたり、毎年割り当てられてきた「経常費」の見直しで、
ねん出した原資を、若手医師の振興策に回すように努力。
家にお金がなくて、子供が泣いている。
そんな時に、親が飯を食べ、子供にご飯を食べさせないなんてあり得ない。
自分もいわゆる「無給医」の一人。

――「親が飯を食べ、子供にご飯を食べさせないなんてあり得ない」というは
興味深いたとえ。

一番立場の弱い人たちに、どうがんばってもらうかが大事。
教授会構成員が理解を示してくれたおかげで、
「既得権」として経常的経費で保有していた原資を回し、
若手振興策の資金に充当することを、教授会の意思として決定。
これは非常に大胆な改革。
一方で、積極的に人材育成プログラムなどの競争的補助金を
獲得することにも力を入れ、今年度は相当の成果を挙げることができた。
向こう5年程度の中期的資金計画に基づいた人材育成プログラムを
考えながら、制度の整備を進めることが可能に。

――「経常費」の改革はいつから実施?

昨年秋から検討に入り、2008年度予算から実施。
削減・節約した経常費の一部は、大学院生の奨学金に。
大学院の学費は年間約120万円、1人の奨学金は年60万円。
1、2年生には、ミッション・ステートメントとして、
「今年何をやるか」をまとめ、書類審査を実施した上で奨学金を支給。
修了後にも、リポートを提出。
3年生以上は、1~2年の研究成果で判断。
3年で修了し、3年間奨学金を得て研究を終える医師も出てくる。

――大学院生は一学年何人?

今年度から、60人から68人に定員を増やしましたが、ほぼ充足。
昨年までは6~7割だが、応募者数自体が非常に増加した。
制度改革を進めていけば、大学院にレベルの高い医師が集まる。
二つの領域で、グローバルCOEプログラムを実施。
大学院生の研究活動に対して、給与が支払われる。
2年間の研究専念期間は、臨床はできませんが、
グローバルCOEプログラムがサポートする。
月5万円の給与があれば、年間60万円、
奨学金と合わせれば実質上の学費はゼロに。
今年の7月から、女性医師の職場復帰制度も始めた。

――それはどんな仕組みか?

朝10時に来て、午後4時に帰宅するなど、短時間勤務を可能にする制度。
非常勤の助教のポジションで、時給は安いが、
職場に復帰するチャンスを与えるという発想。
学生教育、臨床、臨床研究など、ミッションを明確することが前提。
勤務の日数や業務の内容により、常勤扱いとし、研究歴として認める場合も。
専門医の認定に必要な臨床経験を積む時間にも使うという選択肢。
30人程度の枠を作り、6月から募集を開始、ほぼ埋まりつつある。

――地域医療への慶應大学のかかわりについて?

慶應義塾大学には、首都圏を中心にとした104の病院からなる
関連病院長会議がある。
埼玉、千葉、茨城、栃木などの医師不足に悩む地域にある病院も少なくない。
関連病院の会議の中で、「教育中核病院」の認定基準の作成を進めている。
この基準は、「クリティカルパスの導入の有無」、「救急車の搬送受け入れ件数」、
「インターネットで電子ジャーナルを読むことができる環境」など
若手医師が専門医資格を取得するために必要な環境の指標となり得る
チェック項目を設け、「連携協議会」という大学側と地域の病院の
代表者から成る会議体で毎年評価をしていく仕組み。

初期研修修了後に教室に所属する医師は、ほとんどの場合、
その後の4~5年間のうち、2年間は地域の教育中核病院で
サブスペシャリティーを磨くための修練。
教育環境がしっかりしているかを評価するため、
大学だけでなく、地域の病院の先生方とともに基準を構築している。
専門研修病院の質の担保をしなければ、若手医師は集まらない。

認定基準を作り、来年度から本格実施する予定。
医療は、時代とともに変化するから、認定基準も毎年見直す。
教育中核病院にとっては厳しいが、
「大学側も努力しているので、病院側も努力してください」という発想。

――大学が中心となり、地域の病院とネットワークを組むという発想?

大学側が一方的に決めたのでは何もできない。
認定基準も、連携協議会で決める。
医師の派遣人事も、医局単位ではなく、連携協議会の意思も表明して決定。

――「医師の数を増やすことは重要だが、並行して大学の
マネジメント改革を進めていかないと問題は解決しない」ということ。

その通り。

――大学にとって、役割は異なる。
慶應義塾大学は、「基礎・臨床一体型の医学」を実践する医師の養成、
地域医療の担い手の育成が役割の大学もある。

大学がそれぞれの個性を生かし、ミッションを設定して改革に取り組むべき。
われわれのシステムが100%だとは思わない。
自分たちで工夫できることをあきらめずに実施し、どこまで可能かを追求。
物品の共同電子購入などにも取り組んでいる。
若手研究者の研究費は、数百万円程度。研究は、簡単には増えない。
試薬が、共同購入で30~40%引きになれば、
研究費はその分、余裕が出ることになり、事務職員の負担軽減にも。
若手医師支援の一環。
こうした仕組みは次々に導入していきたい。
企業が取り組んでいる、いいアイデアを医学部と病院に徹底的に取り入れる。
医学部と病院が協同して財務改革を進め、
その浮いた分を若手医師の支援に充てるのが基本的な考え。

http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080814_1.html

慶應義塾大学医学部長・末松誠氏に聞く(上)

(医療維新 8月13日)

医師不足についての現状認識と一連の改革について、
末松氏に話を聞いた。

――医師の需給をめぐる現状について。

医師養成数の抑制という1997年の閣議決定が見直され、
増員の方針に転換したのは、一つの見識。
医師の仕事の量や難易度が大きく変化した。
インフォームド・コンセントや医療倫理など知っておくべき知識が
質的・量的に変わった上、サブスペシャリティー領域の知識や
技術の習得のためのトレーニングのあり方が、
時間も、また労力の面でも大きく変わった。
6年間の医学部教育、卒後研修の中で、医師がリアルタイムに
学ぶべき医学・医療の情報量が以前と比べて格段に増えている。
様々なことを勉強し、訴訟などのリスクも抱え、
専門化・多様化したニーズに応えなければならない

――こうした現状に、25年前と医師数に関する考え方が同じでいいのか?

医師の数を増やさなければいけないのは、一般論として正しい。
基礎医学を支える医師人材の慢性的不足の問題も。

――基礎医学や社会医学に従事する医師の養成も必要か。

日々の臨床に加えて研究も志すという、モチベーションやポテンシャルが
高い学生が本塾医学部にはたくさん来る。
医学部の卒業生100人のうち、数人が基礎医学を目指すのは非常に健全。
社会医学系を目指す学生も。

昔は医局に入ると、その医局に何もかも一生お世話になるのが一般的。
これからは、自分でキャリアパスを選択し、社会の要請や自身の考え方の
変化により、自分で仕事を選べる時代になるべき。
私自身も、卒後9年間は消化器内科の臨床をやっていたが、
基礎研究に転向した。
基礎と臨床の同時両立は不可能だが、
論理的な考え方を研究を通じて学んでいくことは、
基礎研究でも臨床研究でも極めて重要なこと。

患者さんの視点で物事を考え、異なる背景や経験を持つ複数の医療スタッフが
集学的に患者さんを支える「グループアプローチ」は極めて重要。
そのような考え方を、若手の医師に理解してもらうため、
若い医師のキャリアパスを考え、選択自由度と育成プログラムの柔軟性を
高める視点が求めらる。

医学部を卒業した段階で進路を選択し、一生かかってその道を
極めるのもいいが、臨床から基礎に転じるだけでなく、
同じ診療科の領域でも異なる病院を経験したり、
新しい診断技術を習得するために転科するなど、
“ヘテロ”な医療人材の存在理由を理解する医師が
そのフィールドで活躍できるようにすることが重要。
結果として、医療の質の向上につながり、患者にフィードバックできる。

――以前とは仕事の量や質が異なり、医師のキャリアパスの多様性を
担保するためには、医師の数は必要。

その通り。
しかし、単に数を増やすだけでなく、大学間の人材育成システムの競争を
健全な形で促していく必要。
日本では、クリニカル・リサーチに従事する医師やコメディカルの人材も
非常に少ない。
患者さんへの啓発活動を通じて、臨床研究への協力が医学の発展に
寄与するという考えを普及させていく責務がある。

医師の仕事への絶対的ニーズと多様性は年々拡大し、
様々な場で医師の潜在的不足がある。
医師数だけでなく、システムの問題が大きい。
システムが、旧来のままの状態で単に医師の数だけ増やしても、
抜本的な問題解決にはならない。

――ここでいう「システム」とは、何を意味しているのか?

卒前卒後一貫の医師養成のあり方、若手医師のキャリアパス選択の
柔軟性や待遇の改善など。
今は、地方で医師が足りない、だから医学部定員を増やそうという話。
医師不足の地域で、仕事をする医師の支援や「振興策」ならいいが、
医学部入学の段階で「地域枠」といった形で医師の進路を決める、
政策誘導的に特定の診療科の医師の増員をすることは本当に妥当か。
本当に地方に定着するのか、医師のモチベーションを保つことが
本当にできるのか、熟考する必要。

大学医学部・医科大学は、真剣にシステム変革を考えなければいけない。
地域中核病院と大学医学部双方が医師不足の地域は、本当に厳しい。
しかし、地域の中核病院には、ある程度医師がいるにもかかわらず、
その地域の大学医学部では医師不足に陥っている地域もある。
このような場合、大学医学部の医師の育成の制度を再検討する必要。

――どんな医師を養成し、いかなるキャリアパスを提示するかが重要だが、
大学が取り組んでこなかったのか?

時代の変化に応じたシステムの変革に、必ずしもポジティブではなかった。
医学を志す人は、ますます大学を注意深く選択する時代になっていく。
各大学が、彼らに選ばれるために精一杯の工夫をしていく必要。

――具体的には、慶應義塾大学では、どんな改革を実施されているのか?

今年度から、若手医師支援策として様々な改革を実施。
学祖である北里柴三郎博士から受け継いでいる使命は、
「Physician Scientist」を養成し、「基礎・臨床一体型の医学の実践」。
サイエンスが分かる医師、新しい技術を作る医師、自分で考え開発し、
それを実用化につなげることができる医師の養成が使命。
こうした道を選択するのは全員ではないが、
「レシピ通り作れる」医師ではなく、新しい「レシピ」を創造し、デザインし、
ブラッシュアップできる医師の養成を目指す。
その理念を貫くため、大学院における若手医師への研究支援策。
慶應の場合は、他大学とは異なり、大学院大学ではない。
医学部・医学研究科が一体となって、卒前・卒後一貫型の
教育・研修システムを構築。

臨床系大学院に所属する医師に、一定の基準で専門研修医として
兼業を認める制度や、大学院生に対する奨学金制度なども設定。
卒後に臨床の修練をしていた医師が、大学院に入学して研究を
一定年限やることになっても、努力次第で経済支援を受けられる仕組み。

――大学院改革はいつごろから開始したのか?

大学院改革は、2001年に信濃町キャンパス内に
総合医科学研究センターを設置した頃から始まった。
21世紀COEプログラムの支援もあり、再生医学、癌低侵襲医療などの
研究が奨励され、大きな成果を上げてきた。
競争的研究資金を獲得した研究者が時限付きのプロジェクトを
推進・展開する場所で、産官学共同の学際的融合研究が推進。

若手の医師が自分で取得した研究費で運営できるスペースを設け、
自立した若手研究者の育成環境も構築。
医学研究科には医学部出身者だけではなく、
薬学、理工学、情報科学、医療科学など様々なバックグラウンドの
若手研究者が集まってきた。
ここに集う医師は、非医学部出身者との共同研究、技術開発を
推進する機会も豊富で、学際的研究環境を醸成しつつある。
このような環境は、グループアプローチを旨とする医療の実現にも
よい効果を与えていくと期待。

――「グローバルCOEプログラム」はどんな領域で実施されているか?

一つは、生命科学プログラムである「In vivo ヒト代謝システム生物学拠点」。
医学研究科と理工学研究科、環境情報科学の3専攻合同で、
50人以上の大学院生をサポート。20人超が医学研究科。
対象とする疾患は、主として癌と感染症、それらの制御戦略を
代謝生物学的切り口で探索しようという試み。
もう一つは、生理学教授の岡野栄之研究科委員長・教授がリーダーである
幹細胞医学のための教育研究拠点」。
全員が医学研究科を対象。5年間のプログラム。
両者は車の両輪で、医学研究を先導する若手医師の育成には不可欠。

http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080813_1.html

2008年8月18日月曜日

東京大学医学部長・清水孝雄氏に聞く

(医療維新 8月7日)

政府は、従来の方針を180度転換、「医学部定員増」を決定、
文科省から定員増に関して各大学に通知。
ところが、「文科省の通知を見て、落胆した。
110~120人程度の増員を予定していたが、再検討を余儀なくされた」と、
東大医学部長の清水孝雄氏は問題視。

2004年度の国立大学の法人化以降、大学運営は厳しく、
「教育、研究、臨床の質を落としてはいけない。
現状では、定員を増やす余裕はあまりない」

――一連の医師養成数をめぐる議論について。

医学部の定員増を認めたのは、非常に大きいこと。
「当面、過去最大数まで増やす」という方針は、貴重な一歩。
わが国の人口当たりの医師数は、OECD諸国に比べてまだまだ少ない。
この「一歩」に期待したが、文科省の通知を見て落胆、
予定の大幅な変更を検討せざるを得ない。

――なぜ文科省の通知を見て、落胆したのか。

第一は、「(過去最大数と現在の定員の差である)約500人増やす」
となっているが、地域枠の約200人分が既に入っており、
実質的な増員分は約300人すぎない。
地域枠は10年という期間限定で、これとは別枠で500人を増やすべき。

第二は、医師不足は、地方や特定の診療科に限らない。
基礎医学に従事する医師が減っている。
東大では、多い時は1学年25人が基礎医学に進んでいたが、現在は数人。
他大学でも同様で、これは日本の医療にとって危機。
法医学や病理などの医師も不足。
しかし、地方や特定の診療科での医師不足対策としての定員増に。

第三は、医学部の定員増には、教員・職員の増員や設備の改修などが
必要で、経費もかかる。
しかし、その担保、予算的な裏付けが一切明記されていない。

本当に、東大として医学生を増やすべきなのかどうか、
どんな立場を取るべきなのかを真剣に考えていく必要がある。
東大の場合、定員増は、医学部だけではなく、
駒場(教養)の先生なども関係する問題。
様々な要素を勘案しながら、検討していく必要。

国がどれだけ経済的支援をするのか?
来年度の予算に、「特別枠」として約3000億円ある。
これを全額、医学部の定員増に充てる必要はないが、
医学部定員を増やす年に、使わないでどうするのか。
「とにかく定員を増やせ。(予算などは)何とかする」、
という話ではスタートできない。非常に危ないこと。
「落胆」したのは、東大に限らず、他大学の医学部長も同様。

――当初はどの程度を予定していたのか?

当初は、110~120人への増員を予定。
現状の体制では難しく、教員・事務職員の増員や設備の改修を前提。
10~20人増は、1~2割増やすことに相当、解剖室などの改修は必須。

教育や研究の質を落とさず、臨床も高度なことをやらなければいけない立場で、
そんなに多く増やせる状況にはない。
東大は、研究を重視する一方、東大病院の外来は1日約4000人、
約1100床の病床はほぼフル稼働。

大学院化したのは1996年、医学系研究科には現在、
以前の2.5倍の1学年約250人の大学院生。
教員のポストは、2004年の国立大学法人化以降、減少。
医学部と病院の事務系職員も、大幅な削減を強いられている。
経営的にも厳しく、運営費交付金は毎年1%、病院はそれプラス2%減。
建物を建てる際にも、国が出すのは3分の1、残りは自分たちで調達。
東大病院の建築費用の借金は、毎年70億円近く返済。
経営努力が求められ、研究や教育へのしわ寄せが、東大ですら来ている。

従来、医学部発の論文数は年々増えていたが、3年前からほぼ横ばい。
経営が重要になり、臨床に取り組まなければならず、
結果的に研究に割ける時間が減ってきている。

――「110~120人への増員」は、5年後にはまた考え方が変わるのか?

臨床実習や講義、解剖の設備は、100人の学生数を想定したサイズ。
医学部定員増を図るには、教員・事務職員の増員、
設備の大幅かつ抜本的な改修、予算上の手当、
これらすべての壁をクリアしなければ無理。

抜本的に変える政策を国が打ち出さない限り、
医学部定員増は簡単に乗れる話ではない。
何の手当もなく、医学生の数だけを増やしたのでは、教育の質の低下に。
一人でも多くの医師、基礎や臨床の研究医、社会医学に従事する医師を
育成したいと思うが、現状ではほぼ限界に近い。

東大では、来年から臨床教員の制度を導入予定。
従来の医局と関連病院との関係性を改め、
大学が関連病院と契約してネットワークを組み、
共同して教育・研修に取り組むことなども検討。
現実的な数字として、110~120人という定員を想定。

――定員増は、国が打ち出した施策であり、十分な予算を付けないのはおかしい。

文科省は、「医学部定員を増加させてあげるから、そのために努力せよ」
という形。本来、発想は逆ではないか。

――文科省への定員提出の締め切りは9月22日。

大学としても予算が分からないと、どの程度、定員を増やすかは言えない。
予算上の担保を条件に、要望を出すことになる。
「医学部定員増」は、春から議論され、正式に決定したのは6月末、
2010年度からの定員増を予定。
しかし、「500人増」の中で、実質的な増員分は300人。
2009年度分の申請で、一杯になってしまうことが予想。

急いで話を進め、2009年度から増員する必要はあるのか。
医学部定員を増やしても、その効果が出るのは早くて6年後。
次年度からの実施にし、各大学がじっくり検討、調整する形でもよかった。

http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080807_2.html

2008年8月17日日曜日

建国60年迎える韓国の苦悩

(日経 8月13日)

韓国は15日に建国60周年を迎える。
日本による植民地支配からの解放記念日の「光復節」。
苦難を乗り越え、北東アジアで存在感を増しているが、
内政・外交ともに方向感を失っているような印象。

建国当時と比べた韓国の経済発展は、目を見張る。
65ドル程度にすぎなかった1人当たり国民所得は、2万ドルを突破。
朝鮮半島の分断や朝鮮戦争を経験しながら、
「漢江の奇跡」と呼ばれる急成長を達成。
輸出主導型の経済システムを築き、造船や半導体など
世界トップのシェアを持つ企業が育った。

政治的にも、軍事独裁から民主社会への道を歩んだ。
自由主義と市場経済を選択した韓国の正しさは、独裁体制下で
国際社会から孤立する北朝鮮との差をみれば明白。

民主化の定着とともに、国民の関心は「個人の生活安定」に移った。
今年2月、実利主義を掲げた企業家出身の李明博政権が発足したのは、
いわば時代の要請。

だが、米国の金融不安や原油高の影響で、年7%の実質成長率を
目指した李政権の成長戦略は修正を迫られた。
期待を裏切られた国民の政権離れで、大胆な経済政策を
打ち出しにくくなるジレンマを抱えた。

外交もしかり。
当初は日米との連携強化を掲げたものの、
米国産牛肉の輸入再開問題で国民の反感が強まった。
米大統領の訪韓後も、韓国内で反米感情はくすぶり、
米韓自由貿易協定(FTA)が年内に批准できるか予断を許さない。

日本との間でも、竹島(韓国名は独島)の領有権を巡る対立が続く。
韓国は、9月に日本で開く日中韓首脳会談に出席するかどうか、
なお態度を留保したまま。

北東アジアの安全保障にとって、日米韓の連携は欠かせない。
特に北朝鮮の核問題の行方は流動的で、
米国はテロ支援国家の指定解除を当面見送った。
南北関係は、北朝鮮で起きた北側による韓国人観光客射殺事件で
最悪の状態に。
拉致問題を抱える日本とともに、北朝鮮に共同対処すべき時。

韓国にとって、「実利」は何か?
還暦が、日米韓連携の重要性を再認識する機会になってほしい。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080812AS1K1200212082008.html