2007年10月10日水曜日

ノーベル医学生理学賞、米英3氏が受賞 遺伝子操作原理を発見

(毎日新聞 2007年10月9日)

07年のノーベル医学生理学賞を、
米ユタ大のマリオ・カペッキ教授(70)と
ノースカロライナ大のオリバー・スミシーズ教授(82)、
英カーディフ大のマーチン・エバンス教授(66)の3氏に授与すると発表。

授賞理由は、「マウスの胚性幹細胞(ES細胞)を使って
特定の遺伝子を改変する原理の発見」。

その結果、マウスの特定遺伝子の働きを止めたり、
別の遺伝子で置き換える「ジーンターゲティング」が可能となり、
さまざまな遺伝子の働きが明らかに。
がんや糖尿病をはじめとする病気の解明や治療法開発に役立っている。

授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、
賞金として1000万クローナ(約1億8000万円)が贈られる。

エバンス氏は81年、さまざまな細胞に分化することができ、
万能細胞とも呼ばれるES細胞をマウスで作り出した。
哺乳類では初の成功だった。
スミシーズ氏とカペッキ氏はそれぞれ、染色体上にある遺伝子を
別の遺伝子で置き換える手法を開発。
スミシーズ氏はこの手法を使い、貧血や動脈硬化のモデルマウスを作成。

カペッキ氏は、マウスのES細胞を活用することで、特定の遺伝子を失った
「ノックアウトマウス」を効率よく作成する方法を確立。
カペッキ氏は96年に京都賞を受賞。

現在では、1万個以上のマウスの遺伝子の操作が可能になった。
その数は哺乳類の遺伝子のほぼ半数に達し、
500種類以上の病気のモデルマウスが作られている。

「ノーベル賞を受賞した研究を最初からそばで見ていたので、本当にうれしい」
スミシーズ教授の妻で共同研究者の前田信代・米ノースカロライナ大教授(58)は
「とても名誉なこと」と喜びを語った。

前田さんは、東北大で博士号を取得した後の82年に渡米、
ウィスコンシン大でスミシーズさんと知り合った。
その後、結婚し、二人三脚で研究を続けてきた。
前田さんが、特定の遺伝子を壊して病気にしたノックアウトマウスを使って
動脈硬化に関係する遺伝子の研究をした時期は、
スミシーズさんが「じゃあ僕は高血圧を調べよう」と提案、互いの研究を補った。

スミシーズさんは今も毎日、研究室で
「学生たちに刺激を与えるディスカッションをしている」という。

◇各分野の基礎に--八木健・大阪大大学院生命機能研究科教授

3人が開発した遺伝子ターゲティング技術は、
特定の遺伝子が働かないマウスを人為的に作り、
個々の遺伝子の機能を個体レベルで突き止めることを可能にした。
現在は免疫研究や、がん研究、脳研究など各分野で活用され、
研究の基礎になっている。

私は、遺伝子を働かなくした細胞を効率よく選ぶ手法を開発したが、
基本的な考え方はカペッキ氏が示しており、いわば二番せんじ。
私の研究が惜しかったとは思っていない。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=57273

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